「関わるすべての人と、生きる喜びを創造する」──デンタルタイアップが貫く支援の哲学

歯科医院支援に特化し、経営学の理論をそのまま現場で実践する独自のコンサルティングを展開する株式会社デンタルタイアップ。代表の小原啓子氏は、歯科衛生士としての現場経験と経営学の学びを掛け合わせ、18年間にわたり“地域に愛される組織づくり”を支えてきました。本記事では、理念の再構築、働き方改革、承継への備え、そして新たな情報発信の挑戦まで──その歩みと未来への想いについて伺いました。

理念と実践がつくる“歯科医院支援”のあり方

現在取り組まれている事業の特徴について教えてください。

当社は歯科医院を対象に、経営学の理論をそのまま現場で活かすコンサルティングを行っています。一般的にコンサルタントは経営者との議論が中心となることが多いのですが、私たちは先生やスタッフと共に動き、実際に仕組みを動かすところまで踏み込む点が大きな特徴です。「教科書通りにここまで忠実にやっているやり方は見たことがない」と言われるほど、学問に基づいた手法を実践しています。

他社にはない強みとはどのような点でしょうか。

大手企業やマーケティング特化型の会社が支援に入っている場合でも、私たちの支援はバッティングしません。理由は、外向きの戦略ではなく、医院内部の仕組みづくりや組織構築に深く関わるためです。いわゆる生理的欲求・安全欲求・所属欲求など、人が働くうえでの基盤となる部分を整えることを重視しています。そのため、他の支援会社とチームを組みながら、先生とスタッフの方々がより良い医院をつくれるよう、根本から整えていくことができます。

理念についても強いこだわりがあると伺いました。

起業当初、経営学の先生のサポートを受けながら初めて理念をつくりました。しかし後に、「業界名や商品名を理念に入れてはいけない」という基本に合致していないことに気づきました。そのタイミングで、大切な先生が病気で急逝される出来事があり、その地域にとってかけがえのない医院がなくなってしまう現実を目の当たりにしました。理念の重さを深く理解した瞬間でした。

そこから理念を根本から見直し、現在は「私たちは関わるすべての方々とともに、生きる喜びを創造します」と定めています。この“生きる”には、その先生の存在を強く意識していますし、“創造する”にはゼロから共につくり上げるという想いを込めました。 理念は時代や社会が変わっても揺らがない信念。だからこそ、関わる方々への責任と向き合いながら、この理念を大切にして事業を続けています。

アの転機と“歯科業界に一石を投じる”という決意

現在の事業を始められた背景を教えてください。

起業して18年になりますが、私は若い頃からずっと仕事中心の生活を送ってきました。子どもが2人おりますが、家庭には嫁姑問題があり、「家に女性が2人はいらない」という状況で、夫からも仕事を続けるよう言われ、職場でも育児休暇を取る前例がなかった時代でした。それでも仕事が好きで、歯科衛生士としての業務だけでなく、職能団体の活動や役員としての仕事、歯周病治療に取り組むための本の出版、子育てに関する本の執筆、休日の講演活動まで、常に働き続けていました。

キャリアの中で訪れた困難と、そのときの心境について教えてください。

30代後半までは職場も理解がありましたが、社会状況の変化や組織内での「自分の仕事に専念しなさい」という流れが強まり、人事異動も重なってうまくいかない時期がありました。また、歯科衛生士の教育制度も2年制から3年制もしくは4年制大学と移行し、教員にも「大学を出ること」が求められるようになりました。職場での行き詰まりから体調にも影響が出て、涙が止まらない、500円玉大の脱毛が複数できるなど、精神的に大きなダメージを受けたときもありました。ひんなことから「もう一度学び直してみよう」と思い、通信制大学で経営学を学び始めたことが転機になりました。

経営学との出会いが、現在の事業につながった経緯を教えてください。

通信制大学で学んだ経営学は、私が職場で悩んでいたことの答えが散りばめられているようでした。「もっと早く知っていたら、あんなに苦しい思いをしなくてよかったのに」と強く感じました。その後、地元の大学院でも学びを深めましたが、当時の歯科業界には経営学の視点がまったく入っていませんでした。そこで「歯科業界に経営学を持ち込み、一石を投じたい」という思いが確信に変わり、現在の事業を始める決意につながりました。

“人が育つ組織”をつくる──働き方改革と横のつながりを軸にした運営

働き方改革としてどのような取り組みを行っているのでしょうか。

歯科医院は“人で動く仕事”が基本ですので、スタッフ確保が最も重要です。私どもの支援では、診療時間を短縮し「9時〜18時・休憩1時間」という一般企業に近い勤務形態へ移行するという基本的考えがあります。かつてのように休憩を長く取り、その分夜遅くまで診療するスタイルを改めることで、スタッフが集まりやすい環境が整い、医院の成長にもつながります。最近では17時台に診療を終える医院に挑戦される例も多く見られるようになってきました。

地域に根ざす組織づくりの特徴を教えてください。

歯科医院は地域に密着して発展することが理想です。私どもが支援する医院はスタッフ数が5〜30名規模が中心ですが、患者さんに愛される医院づくりを重視しています。また、医院同士の横のつながりが強く、見学や質問の共有、研修会での交流が活発です。 オンラインの普及もあって「初めて会うのに初めてではない」関係性が築かれ、互いの成長を支え合う環境ができています。こうした取り組みが実を結び、厚生労働大臣表彰やプラチナ認定を受けた医院もあります。

社員が主体的に動ける組織づくりの工夫について教えてください。

マネジメントチームには学習費として各人に10万円を渡し、自主的な学びを促しています。また決算時に利益が出た場合はスタッフに均等分配する仕組みも設けています。また、Skype時代から遠隔地とのオンライン対応を行うなど勤務時間の柔軟性も重視しています。上司が常に近くにいるわけではありませんが、互いを尊重しながら働くことを大切にする組織です。

さらに、当社は20代で入社する方は少なく、多様な経験を積んだ人材が活躍しています。大手企業での勤務経験を持つ方はマナーや所作が洗練されており、医療現場でも大きな価値となります。医療業界では基本的な礼節が意識されていない場合もあるため、こうした人材が加わることで組織が引き締まり、良い刺激が生まれています。

次世代へつなぐ承継と、情報発信による新たな挑戦

今後の目標や実現していきたいことを教えてください。

 起業から18年が経ち、組織としても承継の時期に入っています。若いスタッフへ役割を引き継ぎながら、質を落とすことなく事業が継続できる体制づくりを進めています。また、日本経営士会では中国支部長や西日本ブロックの管轄理事も務めており、歴史ある会の中で若い世代へ良い形でバトンを渡していくことも意識しています。私達は日本の高度成長期を見てきました。しかし成長の課題を自覚しているからこそ、次の世代には同じ苦労を背負わせたくないという思いがあります。若手が活躍できる土台を整えることが、これからの発展には欠かせないと考えています。

組織として描いている未来像についてはいかがですか。

組織を必要以上に大きくすることを目指しているわけではありません。支援は深く入り込む仕事であり、スタッフの多くは家庭の理解を得ながら働いています。新人といっても40代で入社する場合もあり、入社後に大学へ通いながら働くメンバーもいます。働きながら学びを継続できる環境を整えるには、急激な拡大よりも一人ひとりを丁寧に育てる方が重要です。また、「アウェイの中に入り、組織を健全化する」という役割上、ときには反対勢力の中で揺らがない精神力や柔軟性も求められます。長く活躍できる人材を増やすことを大切にしながら、持続可能な組織づくりを進めています。

情報発信に関する取り組みも進めているそうですね。

本の出版はこれまで長く続けてきましたが、今後はSNSを含めた発信力の強化にも取り組んでいきます。Facebookは現在約1700名まで増え、これからさらに広げていきたいと考えています。加えて、趣味としてGoogleの口コミ投稿を続けており、レベル8まで到達しました。全国を訪れる機会が多いこともあり、投稿が積み重なった結果のようですが、Googleから特典の案内が届くほど継続している取り組みです。完全に趣味ではあるものの、多くの方に名前を知っていただくきっかけにもなっていると感じています。

今後も「発信・承継・育成」の3つを軸に、組織としても個人としても成長し続けていきたいと考えています。

“書くこと”が原動力──趣味と挑戦が生む新たな創造

多忙の中でのリフレッシュや趣味について教えてください。

「趣味は仕事です」と答えるほど、書くことやまとめることが好きです。文章の構成を組み立てる作業がとにかく楽しく、本づくりではラフ図を紙に描き、その通りに配置してもらうほど細部までこだわります。長年一緒に本を作ってきた編集者も私と年齢を重ねました。最近は新たにお付き合いする出版社もあり、新作の制作も進めています。本のつくり方や売り方も変化しており、私自身も学び直しの真っ最中です。以前は「1冊書くと砂漠に水が吸い込まれるようにこれ以上残っていることがない」と感じてしまうほどのエネルギーをつかいましたが、近年はスタッフと写真集をつくるなど、発信の形も広がっています。

今後、執筆で挑戦したいことはありますか

生成AIもどんどん進化しています。これからは、“自分で書く”だけでなく「話した内容をそのまま形にしてもらう」方法にも挑戦しようと思っています。現在、日刊現代さんや講談社さんから「理念をテーマに書いてみませんか」と声をかけていただいています。ただ、歯科業界では5Sが浸透していないため、まずは別業界向けに整理整頓のアイデア集として出版し、それを逆輸入する形で届けられたらと考えています。私共が行っていることは、他業界のコンサルタントから「どの業界にも通じる取り組みだ」と言われたことも励みになりました。書くことは私の原動力です。これからも学びと挑戦を楽しみながら、価値を伝えていきたいと思います。

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