「守る」ではなく「生かす」。日本の伝統を“現代の感性”で次世代へつなぐ、和えるの挑戦
株式会社和える 代表取締役 矢島 里佳 氏
日本の伝統を守るのではなく、現代の暮らしに“生かす”ことで次世代へつないでいく——。創業から14年、和えるは教育・企業研修・空間プロデュースなど多面的な事業を展開しながら、一貫して「現代人が知らないがゆえに消えていく先人の智慧」を伝えることに向き合ってきました。和える代表の矢島里佳氏に、理念、組織のあり方、そして2031年に描く未来までを伺いました。
目次
「伝統を守る集団」ではなく、知恵を“選べる形”で届ける会社
――御社の事業内容や大切にしていることを教えてください。
私たちは「日本の伝統を次世代につなぎたい」という想いで創業しました。ただ、勘違いされやすいのですが、私たちは伝統を守る集団ではありません。大事なのは伝統を“活かす”ことです。無理に残すのは不自然だと思っていますし、不必要なものが淘汰されるのは自然の節理だと捉えています。
けれど、現代人が先人の智慧を忘れてしまい、受け継がれないまま「知らないがゆえに消えていく」ものが多い。それが一番もったいないと感じました。
だからこそ、私たちはある種のジャーナリスト集団として、先人の智慧から何を学び、今を生きる人が何を選ぶとより美しい未来がやって来るのか、その“選択肢”を届けています。選ぶかどうかは一人ひとりの感性に委ねたい。創業以来、そこはぶれずに大切にしてきました。
直感に素直に生きる。だから、引退日も最初から決めた
――矢島さんご自身のキャリアや、経営者として譲れないことは何ですか。
私はジャーナリストになりたくて、慶應義塾大学の法学部政治学科への進学を選びました。メディア関連で活躍する先輩方を多く輩出する環境で学べることが、魅力的だと思ったからです。今も職業としては、ずっと「言葉を扱う人間」であり続けたいという感覚が強いですね。たまたま社会的職業が“起業家”という形になっているだけで、自分的職業はジャーナリスト(ストーリーテラー)のままです。
譲れないことは「直感に素直に生きる」こと。自分を自分でご機嫌にできる大人でいることです。自分のご機嫌取りができれば、次世代に迷惑をかけにくいと思っています。本来、経済活動は、人がご機嫌に生きるための一つの手段のはずなのに、いつの間にか私たちが資本主義という装置に振り回され、まるで経済の奴隷のようになってしまっている。だからこそ「自分はどう生きたいのか」を自身に問わずに働くのは問題だと感じています。
管理しない代わりに「自己対話」から始める
――組織運営や社員との関係性は、どのように設計していますか。
常時関わるメンバーは10名前後です。妊娠・出産などライフイベントが重なり、実は全員が一度に揃ったことはありません。それぞれのライフステージを尊重し合いながら、赤の他人でファミリービジネスをするように一丸となって働く文化が、和えるには醸成されています。和えるは精神的に自立しており、自らを律して自走できる人材のみで構成されているため、管理しない、管理されないスタイルで互いに助け合いながら共に「日本の伝統を次世代につなぐ」という目的に向かって歩んでいます。
勤務形態も全員同じではありません。労働基準法に準じつつ、一人ひとりが「生きると働く」をご機嫌よく和えられるようにオーダーメイドで雇用契約書も作成しています。週何日・何時間働くと自分がご機嫌でいられるのか、まず自己対話をして決めてもらう。働く場所も、フルリモートか併用かリアル中心か、その人のライフスタイルや得意分野に合わせて取り決めます。
海外元年。日本の精神性を伝え、世界平和につなげたい
――今後、どんな挑戦をしていきたいですか。
今年(2025年)は和えるくん「海外元年」と位置づけています。日本の伝統には、人を優しくする力があると確信しており、21世紀・精神性の時代において、日本の伝統は世界平和につながると本気で思っています。
だからこそ、日本の精神性を海外の方にも伝えていきたい。そのために和える一同、目に見えない精神性を伝える様々な事業を生み出し続けています。
――リフレッシュ方法について教えてください。
日々、好きなことをして生きているので、リフレッシュという概念があまりなく、趣味も特にないのですが、国内外を旅して、異なる文化圏や年代の方々と出逢うことは好きですね。
ただ観光を目的にする旅には興味がなく、何か人のお役に立てることがありながら各地へ行き、私自身も共に学ばせていただくスタイルが自然と身についています。固定化した考え方に陥らないためにも、様々な思想哲学に出逢いたい。
2031年3月16日の和える引退後は、何も予定を入れずにその日暮らしで過ごしてみる——それが、未来の趣味かもしれません。
——読者の皆さんへ一言メッセージをお願いします。
「自分はどう生き、どうありたいのか」という問いから始めてみてはいかがでしょうか。
その先に、ご機嫌な自分がいるはずです。自らが生きると働くを和えてご機嫌に暮らす。そんな大人の背中を次世代に魅せることが、美しい未来への大きな一歩になるのではないでしょうか。