木の技で現場を支え、次代の担い手を育てる――有限会社山本技建が貫く「人」を軸にした経営

有限会社山本技建 社長 山本邦彦氏

有限会社山本技建は、木工事を中心に、新築住宅やリノベーション、鉄筋コンクリート・鉄骨工事に伴う木工事などを手がけています。一般住宅だけでなく、ゼネコン案件や公共工事にも関わりながら、現場を支える存在として事業を展開しています。大工の担い手不足が課題とされるなかで、毎年の新卒採用や育成に力を入れ、「人が集まり、育ち、続いていく」会社づくりを進めています。

今回は代表の山本邦彦氏に、事業の特徴、経営の転機、組織づくり、そして今後の展望について伺いました。

住宅から大規模案件まで。木工事を軸にした事業展開

――御社の事業内容とお客様の属性について教えてください。

木工事を請け負っている会社です。住宅の新築やリノベーション、それから鉄筋コンクリートや鉄骨工事などに伴う木工事を行っています。

一般個人のお客様と、公共工事やゼネコンさんの仕事があります。公共工事については、基本的に下請けとして入る形になります。

――事業の比重としては、どちらが大きいですか。

ゼネコンさんの木工事の方が多いですね。うちは大工としての規模が比較的大きく、常時20名ほどの大工が在籍しています。多いときには20〜60名規模で現場が動くこともあります。

住宅工事だけですと、どうしても工期のサイクルが短く、人の動かし方が不安定になりやすい。予定が読めない中で人を抱え続けるのは、経営としてもリスクになります。一方で、大きな物件であれば1年先、2年先まで予定を押さえることができ、社員の生活や雇用の安定につながります。

そのため、結果的に箱物工事の比率は高くなりますが、住宅工事をやめるという考えはありません。自分たちで直接請ける仕事を持つことで、現場力や技術力を維持しながら、事業全体のバランスを取っています。

強みは「若い人が入ってくる」こと。採用と育成を仕組みにする

――同業も多い中で、御社の強みはどこにあるとお考えですか。

大工の担い手不足が言われる中でも、うちは毎年新卒採用ができています。高卒採用が中心ですが、若い子が入ってきて、この先も続いていくであろうと見てもらえている点が、強みになっているのかなと思います。

人がいること自体が強みになります。仕事を取るのがまったく大変でないわけではありませんが、特にゼネコンさん関係では、人手がある会社に対して早い段階で声がかかることが多いですね。「この時期にこういう物件があるけど、ぜひやってほしい」といった相談を事前にもらえることもあり、人がいることが信頼につながっていると感じています。

――育成に対する考え方は、どこで変わったのでしょうか。

きっかけは、北海道の左官屋さんの記事でした。そこには毎年新卒採用ができている理由として、人材育成や労働環境への取り組みが紹介されていて、読んだときにかなり衝撃を受けました。

それまでの自分の中には、「職人は背中を見て覚えるもの」という考えがどこかにあったと思います。でも、その考え方を押し付けていたら、人は来ないし、続かない。時代が変わっている以上、教え方も環境も変えなければいけないと強く感じました。

その記事は、自分だけで留めるのではなく、社員にも見てもらいました。経営者だけが変わっても意味がなく、会社全体として方向を合わせる必要があると思ったからです。

――現在の育成の仕組みについて教えてください。

今は「黙って見て覚える」というやり方はしていません。4月から5月までの1ヶ月間、座学と実技の研修期間を設け、その後に現場へ出すようにしています。工業高校の建築科の子ばかりではなく、普通科出身の子も入ってきます。基礎知識や道具の名前、現場での考え方などを最初に整理して教えることで、現場に出たときの不安を少しでも減らしたいと考えています。

座学では映像を使いますし、生成AIも活用しています。新入社員が道具の名前や使い方、「こういうときはどうするか」といったことを、自分で調べられる仕組みを整えています。上司に聞き続けるだけではなく、自分で考え、調べる力を身につけてもらうことが目的です。若い社員たちに作ってもらっている部分もありますが、今後さらに内容を充実させていきたいですね。

組織の捉え方は「雇用形態の違いだけ」。働く環境を整える

――現在の組織体制を教えてください。

社員大工が10名、事務員はパート2名と社員1名です。1人親方の大工さんが10名ほどいますが、うちは専属外注という形で、社員と同様の扱いという考え方です。年間を通して仕事が切れないようにする点も同じで、雇用形態が違うだけだと考えています。

――現在の課題はどのような点でしょうか。

労働環境をさらに良くしていくことです。浜松では、就職先として製造業と比較されることが多く、休日や給与、福利厚生で見劣りしないようにしていく必要があります。

週休2日は今では当たり前ですが、建設業では「やると言いながら実際は取れていない」会社も少なくありません。うちはやると決めた以上、徹底する。自社物件はもちろん、元請けさんの現場でも同じ考え方で、どうしても土日に工事が必要な場合は振替休日を取るなどして対応しています。あわせて、今後は組織そのものも見直し、個人任せではなく、会社として安定して回る体制をつくっていきたいと考えています。

10年後の姿は「大工30人が常時いる会社」

――今後の展望を教えてください。

基本は若手育成です。採用できる環境を整え、認知してもらい、雇用につなげていきたい。今年4月には新卒2名の入社も決まっており、来年以降に向けても動いています。将来的には大卒向けの発信にも取り組み、選択肢の一つとして「大工」という仕事を知ってもらいたいですね。

売上については相場感もあるので一概には言えませんが、3年後には20%ほど伸ばしていきたいと考えています。人については最低でも3人は増やしたい。10年後には、大工さんが常時30人いる状態を目指しています。その場限りで人を集めるのではなく、継続的に入職し、育っていく仕組みをつくることが重要だと考えています。

仕事から離れる時間が、心と体を整える

――お休みの日の過ごし方について教えてください。

空手をやっています。25歳くらいから始めて、今も続けています。フルコンタクト空手で、現在は師範代として指導も任されています。複数ある道場の中の一つを任されている形で、仕事というよりは完全に趣味ですね。報酬をもらっているわけではなく、少年野球のコーチと同じような感覚です。

体を動かすことで気持ちが切り替わりますし、仕事とは違う立場で人と向き合う時間にもなっています。あとは、子どもたちと過ごす時間ですね。一緒に遊んだり、何気ない時間を過ごしたりすることが、いちばんのリフレッシュかもしれません。現場では常に判断や責任が求められますが、こうした時間があることで、また仕事に向き合うための気持ちを整えられていると感じています。

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