現役アナウンサー小野木梨衣に聞く、メディア視点で勝つ広報経営

株式会社OKエージェンシー 代表取締役/広報アナウンサー 小野木 梨衣氏

株式会社OKエージェンシーは、マスメディアに向けた広報支援を軸に、企業が社会の文脈の中で「ニュースとして取り上げられる」導線づくりを手がけています。代表の小野木氏は、テレビ局のアナウンサーを経て、現在はフリーとしてニュース番組や式典司会で活躍し続ける現役の「広報アナウンサー」です。 現場第一線の感覚を持ちながら、報道側の視点から逆算した戦略設計を強みにしてきました。本記事では、事業の特徴から起業の背景、組織づくりの考え方、そして次の挑戦までを伺います。

メディアの現場を知るからこそできる“逆算型広報”

――御社の事業内容や特徴を教えてください。

事業としては、マスメディアに対する広報活動を中心に支援しています。

私自身がテレビ局に勤めていた経験があり、メディアの現場で「何がニュースになるのか」「どうやってネタを探しているのか」を見てきました。そこが、他のPR会社との大きな違いだと捉えています。

広報というと、企業側が情報を出して待つイメージを持たれることも多いのですが、私たちは「どういう文脈で報道されるのか」というゴールから逆算して戦略を立てます。そのうえで、こちらがリソースを割き、テレビ局や新聞社などに直接アプローチして取材の機会を確保していきます。

露出すること自体が目的になると、伝えるべき価値がぼやけてしまいます。だからこそ、ニュースとして成立する筋道を先に描き、そこに沿って情報の出し方を整える。そうした設計が、成果につながりやすいと感じています。

――テレビ局時代の経験は、今の事業にどのように活きていますか?

15年ほど前、石川テレビに勤めていた頃は、平日の情報番組を担当していました。

毎日生放送の現場に立つ中で強く実感したのは、「現場は常にネタを探している」という事実です。何がニュースになるのか、どの切り口なら取り上げやすいのか、その判断基準を間近で見てきました。

だからこそ広報を設計する際は、企業目線ではなく“報道側の目線”で考えます。どの社会背景と結びつければ伝わるのか、どんな文脈なら扱いやすいのかを逆算し、「ニュースとして成立する形」に再構築することを意識しています。

また、メディアがどのようにネタを探し、どんな情報が埋もれてしまうのかも知っているので、その視点が実際の取材獲得につながっています。

――小野木さんが考える「広報経営」とは何でしょうか?

私が考える『広報経営』とは、単に露出を増やすことではありません。広報を経営の羅針盤として位置づけ、社会のニーズ(公器としての視点)を経営判断にフィードバックさせることです。 

メディアの視点を取り入れることは、自社を客観視すること。客観視できる経営者は、時代の変化に強く、ステークホルダーからの信頼も揺るぎません。広報を『広報部』だけに閉じず、経営のセンターピンに置くことで、企業のスケールは劇的に変わると信じています。

プレスリリースの“もったいない”から生まれた起業の原点

――起業を志した背景には、どのような思いがあったのでしょうか?

テレビ局で働く中で、ずっと疑問に思っていたことがありました。現場はネタを探しているのに、企業から届くプレスリリースはほとんど活用されていない。その多くが裏紙になっていく様子を見て、「この仕組みは機能していないのではないか」と感じていました。

報道番組に移って初めて、それが企業からの取材依頼だと気づきました。本来ならニュースとして扱える可能性があるのに、伝え方や文脈が合っていないだけで届いていない。そこに大きなミスマッチがあると痛感しました。

「取材は待つもの」「有名でなければ取り上げられない」という誤解も根強くあります。しかし、社会的な文脈を添えて伝えられれば、企業がテレビに取り上げられる可能性は十分にあります。

あのとき感じた“もったいなさ”を、自分なら解消できるのではないか。その思いが起業の原点です。

――独立を決意したきっかけについても教えてください。

大きな転機は私生活の変化です。4年前に離婚し、子どもを一人で育てる立場になりました。都内でフリーアナウンサーとして活動していましたが、収入は安定せず、このままで本当に守れるのかと向き合うようになりました。

生活基盤を整える必要があると考え、実家のある愛知県へ戻る決断をします。同時に、「話す仕事」そのものではなく、自分の経験を事業者の役に立つ形へ転換できないかを考え続けていました。

メディアの現場を知っていること、伝える力があること。それを企業の価値向上に結びつけられないかと模索する中で、「広報」という選択肢にたどり着きます。生活を守る覚悟と、自分のスキルを再定義する挑戦。その二つが重なり、起業へ踏み出しました。

受け身から脱却する――フリー時代に見えたキャリアの分岐点

――フリーアナウンサーになって、働き方が変わったと感じた点は何ですか?

石川テレビで局アナとして働いていた頃は、勤務表に沿って仕事が割り振られるので、「仕事がないから収入がゼロになる」といった心配はありませんでした。

ところがフリーになると、自分自身が商品で、仕事を取れなければその月の給料は0円になります。そこにまず大きなギャップを感じました。

意気揚々と東京に出たものの、フリーアナウンサーは想像以上にたくさんいて、オーディションも「宝くじの世界」に見えたんです。内容にもよりますが、仕事ごとに選考があり、年齢や好み、巡り合わせといった要素に左右される。

培ってきた経験だけで選ばれるわけではない現実に、正直疲れてしまいました。

――その経験が、ご自身のキャリアのターニングポイントになったのはなぜでしょうか?

事務所に所属していると、来たオーディションを受ける形になり、どうしても受け身になりがちです。その働き方が、私の性に合わなかったのだと思います。

だからこそ、年齢や好みに振り回される歯車から一度抜けて、自分が営業マンとなって仕事を獲得し、自分の経験でお客様に還元できることを「これが理由で選びたい」と思ってもらえる仕事がしたいと考えるようになりました。

また、「30歳定年説」という言葉があるように、年齢とともに画面の前で話す需要が減っていく不安もありました。せっかくスキルや経験が高まっているのに、話す力やコミュニケーション力をマイクの前だけに閉じてしまうのは悔しい。

ニュースを読む以外の場でも、自分の能力が価値として認められることを証明したいと思ったんです。そうした悔しさが、次のキャリアへ踏み出す分岐点になりました。

顧客起点で判断する経営――“広報ありき”にしない提案力

――経営判断をする上で軸にしている価値観はありますか?

お客様が何を求めているのかを最優先に考えます。「広報」という言葉の定義は広く、イメージも人それぞれ違います。まずは課題や期待を丁寧に聞くことを心がけています。

マスメディアへの広報が適している場合は提案しますが、SNS広告の方が即効性があると判断すれば、得意な業者を紹介することもあります。自社の強みを押しつけるのではなく、顧客にとって最適な選択を示す。それが軸になっています。

願望を聞く経営――主体性を引き出す組織づくり

――社員が自主的に動けるようにするために意識していることは何ですか?

以前は「負担をかけたくない」という思いが強く、契約以上のことを任せないようにしていました。ただ、それが逆にチャンスを奪っていたと気づきました。

「やってみる?」と声をかけると、「ぜひ挑戦したい」と前向きな返事が返ってくる。みんな出番を待っているのだと感じました。

それ以降は、相手の願望を聞き、実現に向けて仕事の振り方や報酬も見直すようにしています。

――採用や育成で大切にしているポイントを教えてください。

前向きで素直なこと、そして主体性があること。小さな組織だからこそ、自分で考え提案できる人でないと、大切なクライアントを任せられません。

主体的に動ける姿勢は欠かせない条件だと思っています。

「海外PR」と「印象管理トレーニング」――次の成長戦略

――今後取り組んでいきたい新たな挑戦について教えてください。

ひとつは海外PRです。Made in Japanの価値を海外に広めたいという企業が増えています。海外の販路やメディアとの橋渡しを担える存在になりたいと考えています。

もうひとつは印象管理トレーニングです。メディアに出るだけでなく、話し方や立ち振る舞い、表情といった「伝わる力」を高める支援をしたい。営業の現場でも、印象が信頼を左右します。せっかくの取材機会を最大化するための土台づくりを担いたいと考えています。

――その実現に向けた課題と施策についてはどう考えていますか?

海外分野は知見が十分ではないため、シンガポールのPR会社と協業を始めました。現地の法律や慣習に精通した方と組み、安全に展開できる体制を整えています。

印象管理については、既存の広報代行クライアント様をはじめ、人前にたって話す機会のある経営者や教授へ個別トレーニングを実施中です。登壇動画の分析から、表情の癖の矯正、メディア取材時の想定問答練習などを指導しています。

将来的には、私と同じように現場経験を持つアナウンサーを「印象管理トレーナー」として育成し、BtoBの営業組織全体の底上げを支援する体制を整え、「伝える」を「伝わる」に変えるインフラを目指します。

経営者の学びが会社のスケールを決める

――影響を受けた言葉や出来事はありますか?

尊敬している経営者の講演で、「売り上げが停滞したとき、振り返ると自分が学ばなくなっていた」と語られていたのが強く印象に残っています。

会社がある程度回り始めると、社長自身が現場に入らなくても済むようになる。そのときに慢心が生まれ、結果として人が離れ、業績も停滞したという話でした。ちょうど自分にも重なる時期があり、図星を突かれた感覚がありました。

もうひとつ、別の方から聞いた言葉も忘れられません。「会社は経営者のスケール以上には大きくならない」という一言です。

代表である自分の挑戦や姿勢が、そのまま組織の基準になる。自分が手を挙げなければ、社員もそれ以上の挑戦はしないはずです。だからこそ、学びを止めないことが、自分の器を広げることにつながるのだと強く感じています。

――業界の今後についてどのように見ていますか?

影響力を持つメディアは常に変化しています。テレビや新聞だけでなく、YouTubeやSNSなど、新しいチャネルも無視できません。

商材によって最適なメディアは異なるため、時代の変化に敏感であり続けたいと考えています。

良い仕事関係には良い友情が横たわる

――休日のリフレッシュ方法を教えてください。

人と会って、たくさん話すことですね。経営者か友人かは特に分けていません。仕事の話もしますし、家族の話をすることもあります。

「良い仕事関係には良い友情が横たわる」という言葉の通り、一緒に働く仲間とも休日に会い、日々の出来事を共有する時間が私にとってのリフレッシュになっています。

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