企業と人材をつなぐ新たな選択肢――インド人材活用で切り拓く未来の採用モデル
Venba Holdings株式会社 取締役CEO 岡本 祐太郎氏
日本国内で深刻化する人材不足。その解決策として海外人材の活用が注目されIntern2Jobは独自のアプローチで新たな可能性を切り拓いています。コンサルティング業界出身・HR系ビジネスの起業経験がある岡本祐太郎氏が、シカゴ大学MBAのインド人同級生と立ち上げた同社は、インドの優秀な新卒人材を日本企業へ紹介する事業を展開。従来の人材紹介とは一線を画す「インターンを通じた採用モデル」を軸に、企業と人材双方にとって最適なマッチングを実現しています。本記事では、事業の特徴や立ち上げの背景、今後の展望について伺いました。
インターンから始まる人材紹介モデル
――現在の事業内容について教えてください。
現在は、インドの新卒人材を日本企業に紹介する事業に注力しています。単なる人材紹介ではなく、まずインターンとして3~5名程度を受け入れていただき、その中から採用を判断してもらうモデルです。
面接だけでは分かりにくいスキルやカルチャーフィット、コミュニケーション能力を、実際の業務を通じて見極められる点が特徴です。企業側にとってはリスクが低く、特に外国人採用に不慣れな企業でも導入しやすい仕組みになっています。
また、内定後から入社までの期間には、日本語教育や日本の職場文化に関する研修も実施しています。入社時にはある程度日本語で業務ができ、日本特有の働き方も理解した状態でスタートできるため、早期に戦力化が可能です。
さらに、将来的にはインド進出を検討する企業に対し、現地法人設立の支援も行っています。日本で採用した人材が現地に戻り、企業文化を伝える役割を担うことで、人材とビジネスの両面をつなぐ仕組みを構築しています。
――他社にはない強みはどのような点にありますか。
インド側と日本側、両方のネットワークを持っている点です。日本では企業との接点や採用ニーズの理解を深めてきました。
一方、インドでは大学との連携を進め、多くの優秀な人材にアクセスできる状態を整えています。もちろん、大学をターゲットにする日本の企業はいくつかあります。しかし、私自らが工科大学で教授を務め、報連相や根回し、和を重んじる心など、日本特有のワーキングカルチャーを教えています。
また、日本の企業向けに、当大学内でラボ設立・共同研究も可能です。加えて、既に日本で就業経験があり、テクノロジーなどの専門知識がある中堅のインド人のコミュニティ形成により、ニーズがあればスカウトも可能です。インド人新卒と日本人マネージャーの橋渡しを担います。
この両輪があることで、単なる紹介ではなく、紹介後の定着から高度な研究まで支援できます。
「戦う場所」を見誤らないーー事業転換の意思決定
――起業の背景について教えてください。
もともとはコンサル業界特化の転職エージェントとして事業を始めました。しかし、競合が非常に多く、人材紹介のノウハウも十分ではなかったため、当初描いていたようなサクセスストーリーまで成長しませんでした。求職者向けサービス自体の質には自信がありましたが、供給力や”可能な限り時間をかけずに内定を取る”という意味での効率面で既存の人材会社よりも非効率になってしまったのが実情です。
この経験から、「どこで戦うか(Where to play)」が極めて重要だと痛感しました。どれだけ優れた戦略やサービスがあっても、戦う場所を間違えれば勝てない。その反省を踏まえ、自分たちが優位性を持てる領域を模索しました。
――そこから現在の事業に至った経緯を教えてください。
インド人の同級生とのネットワークが大きなきっかけです。インド側には優秀な人材と大学ネットワークがあり、日本側には採用ニーズと企業との接点がある。この両方を掛け合わせることで、新しい価値を生み出せると考えました。
実際に始めてみると、大学開拓もスムーズに進み、企業側も関心を示してくれました。仮説通りに事業が動き始め、「戦う場所を変える」ことの重要性を改めて実感しました。
少数精鋭で挑む組織運営と成長戦略
――現在の組織体制について教えてください。
現在は私とインド人の同級生、その家族の計3名に加え、外部アドバイザー1名という体制です。全員がインドに精通しているため、少人数でも効率的に事業を進められています。
今後はファンドレイズを行い、数十名規模まで拡大する予定です。これまでコストを抑えながら堅実に進めてきましたが、成長フェーズに入るにあたり、人材投資を加速させたいと考えています。
――現在直面している課題は何でしょうか。
最大の課題はマンパワー不足です。企業開拓の手段やネットワークは十分にありますが、それを実際に対応する人材が足りていません。問い合わせが増えても対応しきれない状況があり、機会損失が発生する可能性があります。
そのため、資金調達を通じて人員を増やし、事業拡大のスピードを上げていきたいと考えています。
日本とインドをつなぐ挑戦へ
――今後の展望について教えてください。
社会的な視点では、日本の人材不足の解消と、インド人材の機会創出の両立を目指しています。日本では特にエンジニアなどの高度人材が不足しており、今後さらに深刻化すると考えています。一方でインドには、能力がありながら十分な機会を得られていない人材も存在しています。
そうした人材が日本で活躍できる環境を整えることで、双方にとって価値のある仕組みを構築したいと考えています。
企業としては、インドの大学ネットワークをさらに拡大し、より多くの人材を供給できる体制を整えます。同時に、日本の企業側も大手から地方企業まで広げ、採用の裾野を拡大していきたいと考えています。
また、従来の制度では難しかった「直接雇用による適正な人材活用」を実現し、日本の産業を支える仕組みづくりにも貢献していきたいと考えています。
「Where to play」を見極める
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
起業や事業運営において最も重要なのは、先ほども申し上げましたが、「どこで戦うか」を見極めることだと思います。自分の強みが活かせる領域か、競合が多すぎないか。この2点をしっかり考えることが大切です。
流行している分野に飛びつくのではなく、自分たちのリソースと市場環境を冷静に見極める。その上で戦う場所を選べば、勝てる可能性は大きく高まっていきます。
事業の成功は戦略だけでなく、土俵選びから始まっています。その判断を誤らないことが、成長への第一歩だと考えています。