地域に必要とされる存在へ――ダンスとイベントで人・地域・未来をつなぐ
TWIN STAR株式会社 代表 岩崎 稔氏
ダンススタジオの運営と、地域活性化につながるイベントの企画・制作を手がけています。東日本大震災を経験したことをきっかけに、音楽業界で培った経験を地域のために活かしてきました。子どもから大人までが体を動かせる場所を提供しながら、地域に必要とされる存在であり続けることを目指す岩崎氏に、経営における価値観や事業を始めたきっかけ、これからの挑戦について伺いました。
人と地域と未来をつなぎ、新たな価値を生み出す
――現在の事業内容について教えてください。
当社は、ダンススタジオの運営と、地域活性化につながるイベントの企画・制作を行っています。当社の理念は、「人と地域と未来をつなぎ、新たな価値を創造する」ことです。東日本大震災を経験し、この地域に人が集まるきっかけをつくりたいと考えるようになりました。
私は以前、東京の音楽業界で仕事をしていました。その経験を活かし、エンターテインメントの力で未来につながる感動を生み出したいと考えています。
――経営において大切にしていることは何ですか。
私は、企業を必要以上に大きくしたいとは考えていません。まずは家族を守ることを大前提にしながら、地域に必要とされる人間でありたいと思っています。
必要とされなくなったときには、自分の価値もそこで終わるのではないかという意識があります。ありがたいことに、地域でイベントを行う際には、最初に私のところへ相談をいただくことが増えました。
地域から必要とされているかを常に意識しながら、当社のあり方や仕事を選ぶようにしています。
震災を機に、地域のための仕事へ
――現在の事業につながった経緯を教えてください。
東日本大震災が起きた当時は、音楽やイベントの仕事を続けられる状況ではありませんでした。そこで先輩から声をかけてもらい、津波の被害を受けた地域に関わる土木工事を手伝うことになりました。
私は学生時代に土木のアルバイトをした経験があります。その経験を活かし、先輩と土木関連の事業を始めました。その後、工事をしていたときに、知り合いから「復興イベントを行うので手伝ってくれないか」と声をかけられました。それが、もう一度イベントの仕事に関わるきっかけです。
復興に関係するイベントを手がけるなかで、これまで音楽業界で積み重ねてきた経験を地域のために活かそうと考えるようになりました。
――ダンススタジオを始めたきっかけを教えてください。
2014年頃から、音楽とボランティアを組み合わせた「ロックコープスジャパン」に携わりました。4時間のボランティア活動を行うことで、ライブイベントに参加できる取り組みです。その後、地域を歩いていたときに、母親たちが「子どもたちが体を動かせる施設がない」「ダンススタジオもない」と話しているのを耳にしました。
当時は放射線への不安から、子どもを外で遊ばせることに慎重な家庭も多い時期でした。私自身も、将来子どもができたときに、安心して体を動かせる場所があれば心強いだろうと感じました。
ちょうど所有していた建物の1階を別の用途に活用しようと考えていたため、ダンススタジオにすることを思いついたのです。自分のエンターテインメント業界での経験も活かせると考え、事業を始めました。
本音で向き合う、開かれた組織づくり
――社内外のコミュニケーションで心がけていることは何ですか。
私は、何でもオープンに話すことを大切にしています。社員や業務委託の人だけでなく、クライアントに対しても、できる限り裏表なく本音で話すようにしています。例えば、見積もりについても、委託元から受け取る金額や当社が確保する利益、実際に依頼できる金額を率直に伝えます。
言葉のキャッチボールを重ね、本音で話せる関係をつくることが、信頼につながると考えているからです。意見がぶつかることもありますが、言いにくいことを抱えたままにするより、その場で伝え合える関係のほうが健全だと思っています。
一方で、経営上の苦労を従業員にすべて見せることはしません。代表取締役を務める妻と共有しながら、判断するようにしています。
地域発の音楽と、新たな事業への挑戦
――現在、事業上の課題となっていることは何ですか。
現在の課題は資金です。イベントの仕事は、業務が終わってから入金までに2〜3か月かかることがあります。経理上は黒字でも、手元の現金が不足することがあるため、キャッシュフローを安定させなければなりません。
そこで、イベントの制作だけでなく、会場での出店にも取り組み始めました。当社が制作を担うイベントでは、出店を検討できる機会があります。大きな金額ではなくても、そこで収益を積み重ねることで事業の体力をつけたいと考えています。それによって、資材の購入や新しい事業への挑戦にもつなげていきたいです。
――今後、挑戦したいことを教えてください。
私は、地域で音楽をつくりたいと考えています。この地域には、アーティストやタレントを支えるマネージャーなど、音楽業界の裏方として活動している人が意外に多くいます。そうした人たちとのつながりを活かしながら、将来的には地域で音楽フェスをつくることが目標です。
イベントもダンスも、根本にあるのは誰かを喜ばせることだと思っています。誰かに喜んでもらいたい、誰かのために仕事をしたいという思いは、この仕事を続ける上で失いたくありません。
仕事を離れ、頭を空にする海辺の時間
――リフレッシュ方法を教えてください。
私のリフレッシュ方法は釣りです。海の近い地域なので、ヒラメやスズキなどを釣ります。道具も揃えていますが、仕事が残っていると、なかなか釣りに行く気持ちにはなれません。
釣りをするときは、頭のなかを何もない状態にしたいと思っています。「あれをやらなければならない」「これも残っている」と仕事が頭の片隅にあると、本当の意味ではリフレッシュできません。
やるべきことを終え、気持ちを切り替えられる状態になってから、海に向かうようにしています。
――音楽は、仕事以外の時間にも身近な存在ですか。
妻と出会ったきっかけも音楽イベントでした。好みの音楽ジャンルはまったく違いますが、自分が知らない音楽を教えてもらう機会にもなっています。
妻が好きだと言っていたアーティストをイベントに呼べたら喜ぶだろうかと考えることもあります。私にとってのモチベーションは、家族が喜んでくれることです。日常の会話も大切な引き出しにしながら、これからも誰かを喜ばせる仕事を形にしていきたいです。