エンジニアと企業のご縁を結び、SES業界をより透明にする
株式会社En-Harbor 代表取締役 大川 海勢氏
株式会社En-Harborは、SES事業を軸に、エンジニアと企業の双方に真摯に向き合っています。代表の大川氏は、エンジニアやSES営業として働くなかで、評価の難しさやミスマッチ、多重下請け構造に課題を感じ、起業しました。人と人との「ご縁」を結び、働く人が戻ってこられる「港」のような場所づくりを目指す大川氏に、事業内容やこれまでのキャリア、リフレッシュ方法について伺いました。
目次
案件と人材を理解し、双方に合うご縁を結ぶ
――現在の事業内容について教えてください。
SESを中心に事業を行っています。私はエンジニアとして、インフラや開発、AI関連の案件に携わってきました。その経験を活かし、案件の内容を理解した上で、求められている人材を提案しています。
人材をご紹介する際には、パートナー企業所属の型でも、フリーランスの方でも、必ず面談を行います。どのような案件に入りたいのか、将来どのような姿を描いているのかを聞いた上で提案するため、ミスマッチは起こりにくいと考えています。
企業側にも、必要な技術や求める人物像を丁寧に確認しています。案件と人材の情報を単に結び付けるのではなく、双方が納得できる形をつくることを大切にしています。
――社名には、どのような思いが込められていますか。
社名の「En」は、エンジニアではなく「ご縁」を意味しています。これまでの自身のキャリアも、リファラルで転職したり、知人から元請け企業を紹介していただくなど、人とのつながりによって広がってきました。
社員が約800人いるSES企業で顧問を務めていますが、それも飲み会で出会った取締役の方とのご縁がきっかけでした。企業と人材の間に入り、ご縁を結ぶ「ご縁製作所」のような企業にしたいと考えています。
「Harbor」には、港という意味を込めました。私は学生時代と社会人になってからの数年間、バーテンダーをしていました。バーには、仕事を終えた人が戻り、人とのつながりを感じられる空気があります。いつか飲食にも挑戦し、働く人が戻ってこられる港のような場所をつくりたいと思っています。
エンジニアとして感じた歯がゆさが、起業の原点に
――これまでのキャリアについて教えてください。
大学卒業後は、大手Sierに新卒で入社し、エンジニアとして働きました。SESの現場では、常駐先で仕事をするため、評価する上司が実際の働きぶりを見ていないことがあります。
がんばっていても正当に評価されなかったり、技術力があっても自分をうまくアピールできず、見合った給与を得られなかったりする人をたくさん見てきました。私自身も、当初は希望する案件になかなか入れず、歯がゆさを感じていました。
その後、スタートアップの立ち上げに関わり、経営に関心を持つようになりました。あわせて、フリーランスとしてSES事業立ち上げ支援も経験しています。
――起業したきっかけは何ですか。
SES営業では、エンジニアの希望よりも、待機を出さないことや利益を優先し、本人の意向と異なる案件への参画を求められる場面があります。案件の内容や人材を十分に理解しないまま情報を流し、マッチすれば利益を得るという構造にも疑問を感じました。エンジニアにも企業にも寄り添う組織が必要だと考えたことが、起業のきっかけです。
経営を意識した最初のきっかけは、大学生の頃にあります。将来は経営をしてみたいと話した際、「絶対に無理だ」と強く否定されました。その悔しさから、いつか必ず実現しようという思いを持ち続けていたのです。
その後、1社を売却し、2社目も売却を控え、3社目でIPOモデルに挑戦していた経営者と出会いました。話を聞いたことで、自分も経営の道に進みたいという気持ちが明確になりました。
――経営や仕事の判断で、大切にしていることは何ですか。
私は、自分が関わることで、お客様やエンジニアなど、関係する人が少しでも幸せになれるかどうかを大切にしています。目先の利益が得られても、本当は合っていないと感じる人材や案件は提案しません。後から自分で後悔するような仕事や、相手を半分だますような仕事はしたくないと考えています。
企業とエンジニアのどちらか一方だけを優先するのではなく、双方にとって良い結果になることが判断の軸です。両者の話を丁寧に聞き、納得できる提案を積み重ねていきたいと思っています。
技術力よりコミュニケーション能力や人間力を重視
――現在の組織体制について教えてください。
現在、社員は私1人です。人形町にある、知人の経営者が借りているオフィスに間借りする形で仕事をしています。同じ場所で働く企業の取締役の方々とは、毎日顔を合わせながら仕事を進めています。
――これから、どのような組織をつくっていきたいですか。
これから採用を本格的に進める予定です。採用にあたっては、技術力の高さよりも、コミュニケーション能力や人間力を重視したいと考えています。
AIの台頭により、コーディングなどの技術力そのものは、今後ますますAIに代替されていく部分が大きくなると感じています。だからこそ、お客様が何をしてほしいのか、何を作りたいのかを丁寧に聞き取る力や、チームをまとめるマネジメントスキル、そして新しい技術をどんどんキャッチアップしていこうとするマインドこそが、これからのエンジニアにとってより重要になると確信しています。技術は入社後にいくらでも伸ばせますが、人の話を聞く姿勢や学び続ける意欲は簡単には変えられないからです。
社員との関わり方は設計段階ですが、お客様にも社員にも真摯に向き合い、コミュニケーションを取る姿勢は変えたくありません。大手企業ではなく、立ち上げ間もない当社を選び、私の船に乗ってくれた人は必ず幸せにするという気持ちで接していきたいと考えてます。
AIと人の力を組み合わせ、SES業界の構造を変える
――SES事業で、今後どのようなことに挑戦したいですか。
SES業界では、案件情報と人材情報が大量に流れ、そのなかから人の手でマッチングしている部分がありますが、そこで多重下請け構造が発生していることが要因だと感じています。私はその工程の多くをAIで透明化できると考えています。
そこで、現在ほかの企業と一緒にマッチングの仕組みをつくろうとしています。ただし、AIだけで完結させるつもりはありません。AIでは捉えきれない人間性や希望、相性を、面談を通じて確認することが必要です。
AIによって候補を整理し、その後に人が丁寧に向き合う構造をつくりたいと考えています。案件情報や人材情報を多く持つ企業だけが有利になるのではなく、企業とエンジニアの双方が納得できるマッチングを実現し、より透明な業界に近づけたいです。
人と語らい、自然に触れる時間が次の力になる
――仕事を離れた時間は、どのように過ごしていますか。
私は、人と会って話すことが好きです。1人で過ごす時間をそれほど必要としないタイプなので、飲み会など、人と交流する時間がリフレッシュになっています。
北海道函館市の出身で、海や自然が身近にある環境で育ちました。そのため、サウナに行ったり、ふらっと海へ行ったり、自然を感じられる場所で何もせずに過ごしたりする時間を大切にしています。現在は門前仲町の近くに住んでおり、地域で友人をつくって一緒に飲むこともリフレッシュになっています。
――最後に、将来実現したいことを教えてください。
まずは、SES業界が抱える課題に向き合い、AIを活用したDX支援や研修を形にしていきます。その先には、飲食などのオフラインのEn-Harbor(ご縁の港)を創る挑戦もあります。人とのご縁が生まれ、誰もが戻ってこられる港のような場所をつくることが、私の目指す未来です。