ゲームをつくる、その先へ――「人の心を動かす」エンターテインメント
株式会社アールフォース・エンターテインメント 代表取締役社長 横山 裕一氏
株式会社アールフォース・エンターテインメントは、1999年の創業からゲーム制作を手がけ、これまでに350本以上の作品を生み出してきました。また2012年から2017年まではサイバーエージェントのグループに加わり、ゲーム事業を支える技術開発にも携わってきています。本記事では横山氏にこれまでの歩みや経営への思い、ゲーム業界の未来、そして「人の心を動かす」エンターテインメントへの考えを伺いました。
「ゲームをつくりたい」という思いが、起業の原点
――現在の事業内容と、ゲーム制作会社を創業された経緯を教えてください。
弊社はデベロッパーとして、家庭用ゲーム機、パソコン、そしてスマートフォン向けにゲームソフトを制作しています。プログラムだけやデザインだけという所謂部分請けではなく、企画から運営までワンストップで手掛けているところが特徴です。また、直近では自社IPの創出にチャレンジしています。
26歳で起業する以前は、フリーターとして飲食業を中心に様々な仕事をしてきましたが、ゲームをつくって、皆に遊んでもらうという夢を諦めきれず、様々なゲーム会社に応募しましたが、実績もない生意気なフリーターでは採用されませんでした。そんな中、とあるパーティーで、自分で制作した名刺を配ったことがきっかけで、24歳のときにゲーム専門学校の講師としてシナリオを教えることになりました。
その専門学校では、現在の取締役である木村先生と出会い、一緒にゲームを完成させたところ、当時のハドソンのプロデューサーから「個人には仕事は任せられないので会社を作れ」と言われたことが、起業のきっかけになりました。
――これまでの歩みを振り返ってどう感じていますでしょうか。
とにかく、面白いゲームをお客様に届けたい、という気持ちで最前線でゲーム制作に取り組んできた27年間でした。しかし最近は自分が前に出るよりも、若い子達にチャレンジしてもらって、失敗して、そこから学び組織を強くすることが、一番の仕事だと考え取り組んでいます。とにかく四半世紀以上会社を続けていると、うまくいかないこともたくさんあります。それでも存続できたことは、運が良かったことと、社員が成長して、またお客様が応援してくださったからだと思っています。
「お客様は遊ぶプロ」だからこそ、媚びないものづくりを
――経営の中で大切にしている考え方を教えてください。
会社のビジョン、我々の目的は「お客様の人生を変えるエンターテインメントの創造」です。会社のほぼすべてのリソースはお客様のためにある、という考え方でゲーム制作と組織作りを行っています。
この考え方は、私が様々なサービス業で受けた経験からきている考え方です。
ただし「お客様は神様である」という捉え方ではありません。私たちはゲーム制作のプロですが、お客様はゲームを遊ぶプロなのです。ゲームを提供することは、創るプロと遊ぶプロとの真剣勝負だと考えています。
お客様に媚びるのではなく、私たちがプロとして、お客様の人生を変えられるぐらいの良い作品を、そして安心と驚きをどうやって提供できるのか、それを考え続けて、仮説を立てて検証することが大切です。
――ゲーム制作において、どのような価値を届けたいと考えていますか。
ゲームは単に遊んでもらうだけでなく、遊んだ人の心に何を残せるかが大切だと考えています。例えば、ゲームをきっかけに友人との交流が生まれることもあります。ゲームそのものの面白さだけではなく、そこから生まれる人と人とのつながりや、ベネフィットを想像することが重要だと考えています。
AIで変えるゲーム開発と、クリエイターの成長
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
現在、日本のゲーム業界はなかなか厳しい状況にあります。ゲームソフトの開発費も高騰し、スマートフォンのゲームですら数百億円をかける会社が海外には沢山あります。
これまで当社は、クライアントから受託してゲームをつくることがほぼ全てでした。そこから脱却し、自社で企画したゲームで、必要な資金を調達しながら実現していくビジネスモデルに今年から取り組んでいます。
そして、大きな可能性を感じているのがAI駆動開発です。先日リリースしたゲームは、5月から開発を始め、所謂スマホソーシャルゲームの基本機能を全て実現した上で、約2ヶ月半で提供できました。ソースコードの6割以上、3DCGの制作もAIを本格的に活用することで、新卒数ヶ月のメンバーも所属する少ないチームで実践してくれました。
このように、ゲームクリエイターの魂やお客様を喜ばせたい気持ちがしっかり入ったものを、AIを活用して制作する方法を実験しながら取り組んでいます。
――育成について大切にされていることはありますか。
大規模で長期間のゲーム開発が恒常化すると、ゲームクリエイターが育ちにくくなると考えています。自分がつくったゲームがリリースされ、お客様から反応が返ってきて初めて成長できる部分が大きいからです。
AIを活用しながらもクリエイターが成長できるゲーム制作の仕組みをつくっています。私も含めて社内には専門学校で講義や講演を経験しているメンバーが多数在籍しています。自分たちが得たノウハウをゲーム業界の活性化につなげていきたいと考えています。
経営とクリエイティブを両立し、仲間と挑戦する
――現在、経営上の課題として感じていることはありますか。
クリエイティブと経営の両方を担うことが課題だと感じています。ゲームをつくりたいという思いと、お客様の新しいベネフィットを見つけて、それをビジネスにつなげる役割を、両立できる人材が不足していました。
昨年から人材採用を進め、以前から知り合いだった方にも入社してもらい、ビジネス面を任せることで会社が大きく動き始めました。今後は新卒を育成しながらも、経験を重ねた人材にも加わってもらい、クリエイティブとビジネスの力を掛け合わせていきたいと考えています。
また、現在はシングルファーザーとして小学生の子ども2人を育てながら、経営とクリエイティブに取り組んでいます。簡単ではありませんが、社員の協力があるからこそ続けられています。これからは、子育てをしながら経営や仕事を楽しめる仲間も増やしていきたいですね。
ゲームをつくる人が成長できる環境をつくり、遊ぶ方の人生にも何かを残していく。そのような思いを大切に、これからもゲーム制作とお客様に向き合っていきたいと思います。