材料の安定供給で、進化する社会を支える――株式会社豊港が描くグローバル戦略

株式会社豊港 代表取締役 黄 清敏氏

株式会社豊港は、材料分野における国内外のネットワークを生かし、日本企業が必要とする原材料の供給に取り組んでいます。先端材料を得意とする日本のものづくりを支えるため、海外の幅広いリソースから材料を提案。さらに今後は、販売だけにとどまらず、製造やM&Aも視野に入れながら事業の拡大を目指しています。今回は代表の黄清敏氏に、事業の強みや人材への考え方、今後のグローバル展開について伺いました。

世界のネットワークを生かし、材料の安定供給を支える

――現在の事業内容や、御社ならではの強みについて教えてください。

日本は先端材料に強みを持つ一方で、その原料については海外からの輸入に頼っている部分があります。当社では、国内外のネットワークとグループ関係会社が持つ専門性・リソースを生かし、日本のお客様が必要とする材料や原料を幅広く提案するとともに、グローバルな調達・供給体制の構築を進めています。 

半導体用シリコン材料や太陽光発電向けシリコン材料、電池材料、光学材料、金属材料など、幅広い分野の材料を取り扱っています。特に近年は、国際情勢やサプライチェーンの変化を背景に、お客様から新たな供給先を求める声が増えています。そこで、東アジアに加えて東南アジアなどにも調達ネットワークを広げ、グループ各社のリソースを活用しながら、多様な調達先と選択肢を提案しています。

――具体的には、どのような活動をされていますか。

2026年には、米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)で開催された「2026 SiC+X Workshop」に招待され、SiC分野に関する講演・発表を行いました。米国の大学・研究機関、半導体メーカー、材料・装置メーカーなどの研究者・技術者と、SiC基板、ウェーハ、プロセス、搬送・洗浄技術、接合技術などについて意見交換を行いました。

世界で活動する華人系企業家として、米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)で、世界の半導体分野をリードする研究者・技術者と直接交流し、講演・発表を行う機会を得たことは、当社にとって大きな意義がありました。

また、MIT.nanoを訪問し、先端的な半導体プロセス関連設備を見学するとともに、SiC材料・ウェーハ技術について、技術・事業の両面から交流を深めました。

こうした国際的な技術交流を通じて、SiC分野の最新動向を把握するとともに、技術開発、共同研究、プロセス評価、海外事業連携につながるネットワークの構築を進めています。

今後も、国内外の大学・研究機関や半導体関連企業との連携を深め、技術と市場の双方を見据えた材料・技術・サプライチェーンの提案につなげていきたいと考えています。

――どのようなお客様との取引が多いのでしょうか。

大手企業のお客様が多いですね。エアコンや電池、パワーデバイス、イメージセンサーなどに関わるメーカーとの取引があります。

近年は国際的な摩擦などを背景に、企業側も新しいサードパーティーのサプライヤーを探すようになっています。当社としても、そうしたニーズに応えられる存在になるため、供給ネットワークをさらに広げているところです。

約20年の業界経験を、次の事業成長につなげる

――経営の道に進まれた背景をお聞かせください。

私はもともとメーカーで仕事をしており、半導体や液晶、電気・電子機器に関わる業界で約20年の経験があります。長くこの分野に携わる中で、日本が強みを持つ半導体や自動車などの産業に対して、自分たちも重要な役割を担える会社にしていきたいと考えるようになりました。

私自身、中国福建省で育ち、日本に来て今年で17年目になります。中国では経営学を学び、英語や日本語を身につけました。日本では、ハイテク技術産業をテーマとした環境学研究科の修士課程を修了し、薬学研究科では医療統計分野を基盤とした研究に取り組み、博士課程を修了しました。さらに、これまでの事業経験を通じて、財務分析や経営改善についても実践的に学んできました。会社経営に携わって12年、これまでに7社のM&Aに関わり、事業の立ち上げや企業統合、海外事業の展開などにも取り組んできました。これまで培ってきた多分野にわたる知識と業界経験、そして国内外で築いてきたネットワークを生かしながら、会社としてさらなる成長を目指しています。  

――採用や育成では、どのような人と一緒に働きたいと考えていますか。

大切にしているのは、効率性や勉強する意欲、そして環境の変化に柔軟に対応できることです。社会環境が大きく変わる中では、これまでの経験だけに頼るのではなく、大変な状況をどう乗り越えていくかが重要になります。

また、長く安定して働く意識も一つのポイントとして見ています。当社グループはまだ発展の途中にありますから、可能であれば若い方も採用し、これから育てていきたいですね。

「人」と「もの」の両面から、グローバル展開を加速

――今後、特に力を入れていきたいことを教えてください。

一つは、グローバルに活躍できる人材を増やしていくことです。そして、これからは単に「ものを売る」だけではなく、「ものをつくる」ことにも取り組みたいと考えています。

そのために、日本や東南アジアの材料メーカーを対象としたM&Aも積極的に検討しています。自社だけで成長するのではなく、シナジーを生み出せる会社と一緒になることも、成長のための一つのルートなんです。

米国での取引開拓にも力を入れています。米国ハイテク産業に関わる企業などとの商談を進めており、電池材料や光学材料、半導体関連材料など、新しい供給先を求めるニーズに応えていきたいですね。

――日本国内での顧客開拓についてはいかがでしょうか。

日本での開拓も変わらず進めています。関連する会社が持つ顧客ネットワークを活用しながら、お互いのお客様をつなげていくこともあります。

また、論文発表やセミナーへの参加、業界団体などとのつながりを通じた開拓にも取り組んでいます。さまざまな接点を持ちながら、当社を知っていただく機会を増やしていきたいと考えています。

事業拡大を支える人材とガバナンスの強化

――現在、会社として向き合っている課題は何でしょうか。

まずは人材です。積極的に採用活動を進めていますが、まだ十分ではありません。現在は営業職や経理職、総務職などを中心に採用を強化しています。

もう一つがガバナンス体制の構築ですね。当社のお客様には半導体関係をはじめ大手企業が多く、取引にあたって慎重な与信調査が行われます。海外のお客様も同様です。そのため、ガバナンスや財務面の透明性を高め、安心して取引していただける体制を整えることが非常に重要だと考えています。

――経営する上で、譲れない考え方を教えてください。

会社にはさまざまな背景を持った人がいます。だからこそ、まず経営方針を社員の皆さんにしっかり理解してもらうことが大切です。その上で方向性を定め、一緒に前向きに進んでいきたいと思っています。

材料という「なくならないもの」で社会に貢献する

――事業を通じて、社会をどのように変えていきたいと考えていますか。

今はAIの活用領域がどんどん広がっています。ヒューマノイドロボットや配送ロボット、フィジカルAIなど、新しい製品や技術が生まれても、それをつくるための「材料」はなくなりません。

だからこそ、当社は材料の安定供給を通じて、進化していく社会を支えていきたい。必要な材料を安定して届け、良い品質を確保することが私たちの役割だと考えています。

――最後に、休日のリフレッシュ方法について教えてください。

私は仕事やビジネスそのものが好きなので、土曜日も家で仕事をすることがあります。以前は土曜日も会社に行っていましたが、親子で過ごす時間も大切ですから、今は家族と同じ場所で過ごしながら仕事をすることもありますね。

海外出張も多いため、土日に移動することも珍しくありません。一方で、仕事だけでなく、家族との時間や自分自身の学びも大切にしています。

最近は英語の学習機会にも参加し、欧米をはじめ、さまざまな国・地域出身のネイティブ講師や参加者との交流を通じて、語学力を高めるだけでなく、多様な文化や価値観への理解も深めたいと考えています。

これからも国内外のネットワークを広げ、人材を育て、ものづくりにも踏み込みながら、社会に必要とされる材料を届け続けていきたいですね。

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