脳卒中の後遺症が治る社会へ――患者第一を貫く専門リハビリ
株式会社BRAIN 代表取締役 針谷 遼氏
株式会社BRAINは、脳卒中に特化した保険外リハビリ事業を展開しています。医療保険や介護保険を利用せず、一人ひとりの状態に向き合ったリハビリを提供することが特徴です。掲げるビジョンは、「脳卒中の後遺症が治る社会をつくる」こと。新しいリハビリプログラムの開発や研究にも取り組みながら、その実現を目指しています。代表の針谷遼氏に、脳卒中専門の道を選んだ背景や独立への思い、組織づくり、今後の展望について伺いました。
患者第一で、脳卒中に特化したリハビリを
――現在の事業内容について教えてください。
メインとなる事業は、脳卒中専門の保険外リハビリです。病院などで行われているリハビリテーションを、医療保険や介護保険を使わずに提供しています。
保険外リハビリ自体を行っている事業者はありますが、高齢者のさまざまな疾患を対象としているところも多く、当社のように脳卒中へ特化していることは一つの特徴です。対象を絞ることでお客様の数は少なくなりますが、それでも脳卒中専門で取り組むことを大切にしています。
――会社として掲げているビジョンを教えてください。
「脳卒中の後遺症が治る社会をつくる」ことをビジョンに掲げています。その実現に向けて、新しいリハビリの開発や、再生医療のクリニックとの連携などを進めています。
また、当社では独自のリハビリプログラムの研究にも取り組んでいます。特に、手をほとんど動かすことができない重度の運動麻痺については、研究そのものがまだ十分ではありません。そこで世界中の研究データを調べながら、こうした方々に対して何ができるのかを考えてきました。実際に独自のプログラムを行うことで、全く動かなかった手が少し動くようになった方や、中長期的には生活の中で少し手を使えるようになった方もいます。ただ、本当に再現性があるのかは検証する必要があるため、現在は東京都立大学の先生と協力しながら研究を進めています。
患者に向き合う道を、自ら拓く
――なぜ脳卒中のリハビリに取り組むようになったのでしょうか。
高校生までサッカーをしていて、怪我をしてリハビリを受けた経験がありました。そのため、もともとはスポーツ関係の仕事やスポーツトレーナーを目指して理学療法士になろうと考えていました。
ところが、学校へ入って病院実習に行った際、初めて脳卒中を発症した患者さんに出会いました。そこで、治療を受けても簡単には治らず、後遺症に悩み続けている方がいることを知ったのです。これまで自分が経験してきたスポーツの怪我は、時間が経てば治るものがほとんどでした。だからこそ、治らない症状で困っている方がたくさんいることに衝撃を受けました。理学療法士として長く働くのであれば、より困難な状況にある人のために自分の時間や力を使いたいと思い、脳卒中のリハビリに振り切ることを決めました。その後もずっと脳卒中のリハビリに携わり、その延長線上に今の会社があります。
――独立を決めたきっかけは何だったのでしょうか。
以前は大手の保険外リハビリ施設で働いていましたが、そこで患者さん第一のサービスを提供することの難しさを感じました。
会社である以上、売上や効率を考えなければならないことは理解しています。ただ、一人の患者さんを複数のセラピストが担当することで情報共有が十分にできず、次のリハビリでまたゼロから始めなければならないこともありました。また、担当者によって疾患への知識や技術に差があり、リハビリの品質にもばらつきが生まれていました。
お金をいただいている中で、本当に患者さんにとって最善のサービスを提供できているのかと考えた時に、できていないと感じました。それなら自分でやろうと考え、独立しました。
自由と責任で育てる組織
――現在の組織体制を教えてください。
外注を含めて7人で、正社員は2人です。それ以外はほぼフリーランスという体制です。今後は正社員の採用も強化していきたいと考えています。
採用では、単に資格を持っているだけではなく、技術が高い人、知識がある人、勉強する意欲がある人など、成長していける可能性を持った人と働きたいと考えています。ただ、そうした人材を見つけることは簡単ではありません。現在は基本的に紹介を通じた採用を行っています。
――スタッフとのコミュニケーションで大切にしていることはありますか。
コミュニケーションは必要最小限にしています。KPIをしっかり設定して、それを達成できたかどうかを中心に話をします。達成に向けてどのような施策を行うかについても本人たちに任せ、ある程度の裁量を持って自由に動いてもらっています。
病院では管理が細かく、自分が勉強して新しい治療法を学んでも、上の人が知らないという理由でできないことがあります。そうした環境に不満を感じて辞める人もいます。当社ではKPIだけを決め、その中で自由に取り組んでもらう形を大切にしています。
堅実さの先に、さらなる挑戦を
――経営する上で、譲れないことはありますか。
まずは会社を潰さないことです。しっかり黒字を出し、社員の生活を守ることは経営者として考えています。独立した当初は集客が全くうまくいかず、この状態がいつまで続くのだろうという不安もありました。事業として最低限回るようになるまでには半年ほどかかりました。最初から小さく始め、自分が生活できる程度の規模からスタートし、少しずつお客様が来てくださるようになりました。
現在も集客と採用は課題です。脳卒中専門だからこそ、必要としている患者さんへ情報を届けなければなりません。集客ではYouTubeやSEOに取り組みながら、サービスを知っていただく機会を増やしています。
――今後の展望を教えてください。
患者さん第一という軸は、これからもぶらさずにいたいです。その上で、私たちのサービスをできるだけ多くの方へ届けていきたいと考えています。
店舗を置き、地域ごとにサービスを提供していくビジネスなので、今後は店舗数を増やしていきたいです。脳卒中の後遺症を治すことに集中して仕事ができるのは、独立したからこそ得られた環境でもあります。学生時代から目指してきたことに向かって、自分たちの取り組みを広げていきたいです。
まず動く、そこから道が見える
――経営や仕事の中で、やりがいを感じるのはどのような時ですか。
脳卒中の後遺症を治すという、自分が本当にやりたいことに集中して仕事ができることです。
会社員だった頃は、学生時代から目指してきたことだけに集中することはできませんでした。その点、自分で仕事をする環境であれば、自分たちが掲げるビジョンの達成に向けて動くことができます。そこに大きなやりがいがありますし、独立してよかったと感じています。
――まだ「やりたいこと」が見つかっていない人へ伝えたいことはありますか。
私自身、やりたいことが見つかったのは、いろいろな病院へ実習に行くなど、さまざまな経験をした中でのことでした。
だから、まずはいろいろなことに手を出してみたり、興味を持ったことに首を突っ込んでみたりするといいのではないでしょうか。たくさん行動して経験することで、その中から何か見えてくるものがあると思います。