顧客の「視座」に立ち、変化を生む――全方位のマーケティングで企業の挑戦を支える
株式会社Wide Open Marketing 代表取締役 櫻田 人司氏
大阪を拠点にマーケティングコンサルティングを手がける株式会社Wide Open Marketing。戦略策定やブランディングから、イベント運営や店頭施策まで一気通貫で支援しています。10期目を迎えた現在、力を入れているのは、海外ブランドの日本市場進出や日本企業の海外展開を支える「Go to Market」、次世代のマーケター育成です。今回の取材では、事業への考え方やキャリア、次の10年への展望を伺いました。
目次
戦略から現場まで、マーケティングを全方位で支援する
――現在の事業内容について教えてください。
当社の主な事業は、マーケティングのコンサルティングです。戦略策定やブランディングといった上流領域から、イベント運営、店頭での試食・販売などの実行領域まで、一気通貫で支援しています。
お客様はBtoC企業が中心ですが、BtoB企業や個人事業主の方を支援した実績もあり、幅広く対応しているのが特徴です。
――「Wide Open Marketing」という社名には、どのような意味が込められていますか。
「Wide Open」には、マーケティングの領域も、お客様も幅広く、全力で支援するという意味を込めています。「全力で」という意味では、日本語でいう「フルスロットル」に近いイメージです。
もう1つ、口コミを意味する「Word of Mouth」の頭文字が「WOM」であることも社名の由来です。私はマーケティングにおいて、口コミをどれだけ生み出せるかが非常に重要だと考えており、その思いも社名に込めています。
――マーケティングで大切にしている考え方は何ですか。
私は、一番大切なのは「思いやり」だと考えています。売る側の理屈ではなく、買う人の気持ちにどこまで立てるかということです。一般的に「顧客視点」という言葉が使われますが、私は「顧客視座」を大切にしています。
視点は、自分の立ち位置を変えずに見る方向を変えることです。一方、視座は、自分自身が相手の位置に立ち、商品やブランドがどう見えるのかを考えることだと思っています。BtoBでもBtoCでも、必ず買い手がいます。その位置から物事を想像できることが重要です。
販売・営業・広告・メーカーで培った経験が、現在の支援につながる
――これまでのキャリアについて教えてください。
関西大学を卒業後、最初に就いた仕事はスキューバダイビングのインストラクターでした。大学時代に趣味でダイビングを始め、3年生のときにインストラクター資格を取得。卒業後は、ダイビングショップに勤務しました。
その頃からマーケターになりたいという思いがあり、まず流通を理解する必要があると考え、ネスレジャパングループで営業を経験しました。その後は広告代理店の株式会社新通エスピーで、セールスプロモーションの企画営業やプランナーを経験しています。
2006年にはレッドブル・ジャパンへ入社し、関西のブランドマネージャー、フィールドマーケティングスペシャリストとして、2017年まで約11年間マーケティングに関わりました。
――これまでの経験は、現在の仕事にどのように活かされていますか。
販売や接客、教育、メーカー営業、セールスプロモーション、メーカーのマーケティングまで経験してきたことは、私の強みです。戦略だけでなく、商品がどう売られ、お客様との接点がどうつくられているのかまで理解できるため、マーケティングの上流から下流まで支援できます。
レッドブルについても、私1人が成長させたとは考えていません。ブランドは営業、マーケティング、物流など、多くの人の力によって成り立ちます。私は、日本市場での成長と成功をつくったチームの1人だった、という表現を大切にしています。
――起業されたきっかけを教えてください。
レッドブル在籍中にご縁をいただいた、ヤンマー社のとある執行役員の方から、新規事業に興味はないかと声をかけていただいたことがきっかけです。その事業に強く興味を持ち、レッドブルを退職して当社を設立。その新規事業を支援することから事業を始めました。
良い商品や技術を持っていても、どう売ればいいのかわからない企業の課題を解決したいという思いがありました。
少人数だからこその強みを、再現できる価値へ変えていく
――現在の組織体制について教えてください。
現在は、私と秘書の2人で当社を運営しています。経営者が1人、従業員が1人という体制です。私と同じようなキャリアを持つ人は多くないため、これまで培ってきたノウハウを再現することが難しいという課題があります。
良く言えば属人的な強みがありますが、事業として考えるとスケールしにくい面があります。
――仕事をする上で、大切にしている考え方はありますか。
「先義後利」という考え方を大切にしています。まず先に誰かの役に立ち、何かの課題を解決する。その結果として、後から利益がついてくるという考え方です。
先に利益を求めるのではなく、まず貢献することが大切です。また、私は「やり方」よりも「あり方」が重要だと考えています。どんな手法を使うか以前に、誰にどのような価値を提供するのか。その姿勢を大切にしています。
海外市場への挑戦と人材育成で、マーケティングの可能性を広げる
――現在、特に力を入れている事業について教えてください。
海外ブランドの日本市場進出や、日本企業の海外展開を支援する「Go to Market」です。この背景にあるのは、レッドブルで得た経験です。
ただし、レッドブルが行った施策をそのまま別のブランドで再現しても、うまくいくとは限りません。成功した本質的な要素を理解し、それぞれの企業やブランドにあわせてカスタマイズすることが大切です。
――マーケティングの面白さはどこにあると考えていますか。
私は、商品やサービスを購入した人に、どのような「変化」をつくれるかという点に面白さを感じています。新しい技術やサービスによって業務が効率化したり、商品によって生活が便利になったり、楽しくなったりします。場合によっては、その人にとって幸せな瞬間をつくることもできるはずです。
私はブランドを「約束」だと捉えています。不便が便利に、不満が満足に、不安が安心に変わる。その変化を市場やお客様に約束するものがブランドです。その約束をつくり、利益を生み出せる仕組みとして構造化することがマーケティングだと考えています。
――次の10年に向けて、どのような未来を描いていますか。
マーケティングを楽しいと思う人を、もっと増やしていきたいです。その人たちがさまざまな企業でマーケティングの良さや面白さを伝え、企業のマーケティングの質を高めていく。そうした循環をつくりたいと考えています。
私が持っているノウハウをより多くの企業に届けるだけでなく、マーケティングを担う人そのものを増やしていきたいです。その結果として、企業の業績やレベニューの創出に貢献できる広がりをつくることが、次の10年の目標です。