M&Aを企業の「特別なイベント」から経営機能へ――M&A LABORATORIESが目指す企業成長の新しい選択肢

株式会社M&A LABORATORIES 菊川 淳氏

株式会社M&A LABORATORIESは、企業がM&Aを自社の経営機能として活用できる体制づくりを支援しています。案件を紹介する仲介とは異なり、企業に伴走しながらM&Aに必要な機能や判断基準を構築していくことが特徴です。上場企業でCFOを務め、自らM&Aの体制構築に携わってきた菊川淳氏。本記事では、会社設立の背景や事業に込める思い、経営判断で大切にしていること、組織づくり、そしてM&Aの「民主化」を見据えた今後の展望について伺いました。

M&Aを自社で実行できる「経営機能」に変えていく

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

当社が取り組んでいるのは、M&Aの仲介や案件を探してくることではありません。企業の中にM&Aを実行するためにはどのような機能が必要なのかを一緒に考え、伴走しながらその体制をつくっていくことが中心です。

私自身、以前は上場会社のCFOとしてM&Aに携わっていました。当初は社内に専門部隊がありませんでしたが、メンバーにOJTで経験を積んでもらいながら、デューデリジェンスやバリュエーション、買収後のPMIまで一貫して社内で進められる体制をつくっていきました。

外部のサービスに頼るだけではなく、自社で機動的にM&Aを進められる仕組みがあれば、企業にとって成長の選択肢は広がります。私はもともとサービスを「使う側」にいたからこそ、その経験を企業の支援に生かせるのではないかと考えています。

――事業を通して実現したいことは何でしょうか。

向き合いたいのは、企業価値をどう高めていくかというテーマです。一社だけではなく、さまざまな企業が成長していくことで、日本の上場マーケットそのものの活性化にもつながっていくはずです。M&Aを企業価値向上の手段の一つとして活用できる会社を増やしていく。それが、私たちが挑戦したいことです。

CFOとして培った経験を、今度は企業の成長支援へ

――会社を立ち上げた背景を教えてください。

2026年4月まで上場会社で約6年半CFOを務めていました。企業価値を高めていくためには、既存事業の成長だけではなく、非連続的な成長も必要になります。その手法の一つとしてM&Aを活用してきました。

周囲のCXOや経営層と話していると、「買収をどう進めればいいのか」「どのような基準で判断すればいいのか」と困っている方が少なくありませんでした。自分が経験してきたことを生かして、そうした企業を支援できるのではないか。そこに社会的なニーズもあると捉え、会社を立ち上げました。

実は、以前にも6年ほど自分で会社を経営していた経験があります。当時は業務委託をベースに事業を進めていましたが、会社をさらにスケールさせるための組織づくりを学びたいという気持ちがありました。その後、上場会社で企業価値向上や組織づくりに携わった経験を、今度は自分の会社にも生かしていきたいですね。

――経営判断で大切にしていることはありますか。

一度ゼロベースに戻って、「何が目的なのか」「何を実現するためにやるのか」を考えることです。絶対にこうしなければならないという価値観を持つより、目的に照らして、その行動が合理的なのかを判断したい。目的が見えないまま、思考を止めて何かを進めることはしたくありません。

相手が本当に実現したいことを、対話から見つける

――現在はどのような体制で事業を進めていますか。

現状は私が中心となり、業務委託の方やコンサル会社のパートナーなどと連携しながら進めています。社員という形に限らず、一つのプロジェクトや目的を達成するために、それぞれの力を生かして動いている段階です。

今後は組織として運用できる形をつくっていきたい一方で、生成AIがかなり使える環境になってきました。実際、現在提供しているサービスに関わる部分でもAIを活用しています。そのため、単純に人数を増やせばいいとは捉えていません。AIと人の力をどう組み合わせながら組織を成長させるかは、見極めていきたいところです。

――仕事で関わる方とのコミュニケーションでは、何を大切にしていますか。

まず、相手が「何をしたいのか」をきちんと汲み取ることですね。最初にいただいた答えだけで判断するのではなく、いろいろな角度から質問して深掘りしていきます。

「こういうことも含まれますか」「こういう選択肢もありますよ」と対話を重ねながら、相手が目指しているものの輪郭を少しずつ鮮明にしていく。そのうえで、自分が何を提供できるのかを考えるようにしています。

情報収集についても、人から得る一次情報を大切にしています。経営者をはじめ、さまざまな方と対話する機会が多いので、そこで得られる生の情報は大きいですね。

M&Aを「一部の企業だけが行うもの」にしない

――今後、実現していきたいことを教えてください。

今取り組んでいるのは、M&Aを経験したことのない会社でも、自社の組織の中で当たり前に実行できる状態をつくり、それを企業価値の向上につなげていくことです。

M&Aというと難しいものに見えるかもしれません。ただ、もっと民主化できるものだと私は捉えています。経理や人事の機能が多くの会社にあるように、M&Aも経営機能の一つとして企業の中に存在する。そんな状態に近づけていきたいですね。

企業側に知識や判断基準があれば、選択肢はさらに増えていきます。情報の差によって誰かの判断だけに委ねるのではなく、自分たちで判断できるようになることで、より良い取引の循環も生まれるでしょう。成長できる企業がさらに成長できる環境をつくることに、私たちの支援がつながればうれしいです。

また、支援するだけではなく、自分自身が企業側に入り、実際に企業価値を高めることにも取り組みたいです。「こうすれば企業価値を上げられる」と伝えるだけでなく、自分で実現する。その経験が支援の説得力にもつながるはずです。

新しい経験を楽しみ、数字の先にある意味を見る

――仕事をするうえで、数字とはどのように向き合っていますか。

数字は、それ自体を見るというより、数字が何を意味しているのかを大切にしています。

例えば「大きい」「小さい」だけでは、人によって捉え方が違いますよね。そこに数字が入れば、お互いが持っている感覚の解像度を上げられます。数字は、コミュニケーションをより具体的にするためにも使えるものだと思っています。

――休日はどのようにリフレッシュされていますか。

お酒を飲んだり、友人と一緒に食事をしたりする時間は好きですね。そうやって人と過ごすことが、自然とリフレッシュになっています。

あとは、自分がこれまでやったことのないことをやってみるのも好きです。仕事でもそうですが、知らないことに触れたり、新しいことを経験したりするのは楽しいですね。

これからもさまざまな経験を重ねながら、企業が自ら成長の選択肢を持てる環境づくりに取り組んでいきたいです。

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