AIで現場の面倒を片付ける――株式会社世良が目指す、作って終わらない開発

株式会社世良 代表取締役 遠藤 嵩良氏

株式会社世良は、企業の中にある「面倒な仕事」をAIで効率化する開発会社です。食品工場での検査や不動産会社の書類作成、行政の看板点検など、業種を問わず現場の負担となっている作業に着目し、AIを活用したシステム開発を行っています。開発だけでなくセキュリティにも自社で対応し、納品後も顧客側で運用できる状態まで整えることを重視しています。今回は、代表の遠藤嵩良氏に事業の特徴や経営の考え方、組織づくり、今後の展望について伺いました。

現場の「面倒な仕事」をAIで片付ける

――現在取り組まれている事業の特徴や、強みについて教えてください。

一言で言うと、会社の中の面倒な仕事をAIで片付ける開発会社だと考えています。例えば、食品工場で人が目視していた野菜の良否判定をカメラとAIに置き換えたり、不動産会社が1時間かけて作っていた書類をAIで20秒ほどで作成できるようにしたり、行政の看板点検を写真1枚で劣化判定できるようにしたりしています。

業種はさまざまですが、やっていることは共通しています。現場の方が一番時間を取られている作業を見つけ、そこだけをAIに任せることが本業です。また、AIを導入すると情報漏えいなどのリスクも出てくるため、セキュリティについても自社で対応しています。

――会社として大切にしている考え方を教えてください。

「作って終わりにしない」ということを、かなり強く意識しています。開発をご依頼いただく際には、見積もりを出す前に簡単でも動くプロトタイプを作り、実際に触っていただくようにしています。提案の段階で「思っていたものと違う」と分かれば、手戻りを小さくできるからです。

さらに、毎週その時点でできているものを触っていただき、認識のずれを減らします。そして最終的には、私たちがいなくても運用できる状態にしてお渡しすることを本当の納品だと考えています。意思決定の経緯や要件、設計、障害が発生した際の対応方法なども、ドキュメントや解説動画にまとめています。

AIエンジニアとしての経験を、事業づくりへ

――会社を立ち上げたきっかけを教えてください。

大学時代からコンピューターサイエンスを学び、GPUなどハードウェアを含めたAIに関する研究をしていました。大学卒業後もAIエンジニアとして、さまざまな業界を支援してきました。

その後、新規事業をつくるコンサルティングファームに転職し、そこで初めて「物を作るだけでは事業にならない」ということを強く意識しました。経営者や企業から依頼を受けて事業をつくる経験をしたほか、その後は事業責任者として複数のプロダクトにも携わりました。6000社ほどのユーザーが利用するSaaS型のAI SEOライティングサービスにも関わっています。

そうした経験を重ねる中で、生成AIを使ってプロトタイプを作ること自体は、以前より簡単になってきました。一方で、セキュリティを担保しながら、きちんとしたシステムとして作り切り、それを企業の事業成長につなげるところには大きな課題があります。そこで、AIや新規事業、セキュリティについて経験してきた自分たちだからこそできる開発支援をしたいと考え、会社を立ち上げました。

――経営判断の軸になっている考え方はありますか。

開発では「QCD」をかなり意識しています。Qは品質、Cはコスト、Dは納期です。お客様の要望をできる限り実現しながら、開発コストも下げ、なおかつスピーディーに納品する。そのバランスを大切にしています。

そのために、AI駆動開発を進めています。AIを活用することで、これまでなら予算や期間の都合で「ここまでしかできません」とお伝えしていた部分を、少しでも多く実現できるようにする。品質を高めながらコストを抑え、早く届けることを会社の軸として考えています。

若手エンジニアに「打席」を与える組織づくり

――社内のコミュニケーションで大切にしていることを教えてください。

現在は50名ほどのメンバーがいます。エンジニアの構成としては、CTOクラスのメンバーが4割ほど、ジュニアクラスが6割ほどです。AIによってジュニアクラスのエンジニアが、より上のレベルの仕事にも挑戦できるようになると考えています。

――採用では、どのような人と一緒に働きたいと考えていますか。

シニアのエンジニアには、自分で実装するだけでなく、ジュニアのメンバーへのアドバイスや、会社の開発基盤そのものを一緒につくっていくことに面白さを感じてくれる方に来ていただきたいです。より良い品質で、低いコスト、早いスピードで開発を回していく仕組みを、さらに改善していきたいと考えています。

ジュニアの方は、エンジニアリングの経験が豊富でなくても構いません。さまざまなサービスを触ってみたり、調査したりすることが好きで、夢中になって集中を続けられる方。開発に対して熱中できる人を探しています。

AIとセキュリティを軸に、企業の未来を支える

――今後取り組みたいことや展望を教えてください。

これから先、AIをうまく取り入れられた会社と、そうでない会社との間で、大きな差が出てくるのではないかと思っています。AIを導入できなかったから事業を畳むという会社を、一社でも減らしたい。そのために、開発とセキュリティを軸として支援していきたいです。

そのためにも、私たち自身がAIの進化に乗り遅れないことが重要です。さまざまなサービスや技術が次々に登場する業界だからこそ、常に最先端を走るエンジニアでありたいと考えています。2歩、3歩遅れた技術をお客様に提供するのではなく、私たち自身が知識や開発力を高め続けることで、お客様のAI活用を支えていきたいです。

現場から離れすぎず、自ら旗を振る

――経営者として影響を受けた考え方や、意識していることはありますか。

特定のロールモデルがいるわけではありません。ただ、さまざまな経営者の方が語っている「現場から手を離して経営に移行する」という考え方と、逆に「こだわる部分には自分が旗を振って現場に入る」という考え方は、自分自身も意識しています。

組織に任せる部分は任せながら、会社のパーソナリティやオリジナリティにつながる部分には積極的に入っていく。そして、お客様の声から遠ざからないことを大切にしています。

――休日などのリフレッシュ方法を教えてください。

自然を見ることです。キャンプや山登りをしたり、書籍を読んだりしています。エンジニアとしてパソコン1台で長時間作業することも多いので、意識的にそれとは逆のことをするようにしています。

デジタル上では日々大量の情報が流れていきますが、書籍は著者が時間をかけてつくったものです。そうした情報にしっかり向き合い、自分の中に蓄えるものと流していくものを意識的に分けています。

これからも、自然や書籍に触れる時間を大切にしながら、自分自身の感覚や考えを磨いていきたいです。

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