海外の優れたプロダクトを日本市場へ――「営業力」と「正直さ」で価値を届けるExtractorの挑戦
株式会社Extractor 代表取締役CEO/COO 谷内 照吾氏
株式会社Extractorは、海外で生まれたソフトウェアやサービスを日本市場に紹介し、販売から顧客対応までを担う企業です。2016年の設立当初はライブ配信事業からスタートしましたが、開発での失敗を転機に営業力を生かす方向へ転換し、現在は海外企業のプロダクトを日本に展開するSaaS事業を軸に、ライブコマース事業にも取り組んでいます。本記事では、代表の谷内照吾氏に、独自の営業スタイルや経営の軸、今後の展望などについて伺いました。
「よいものを見つけ、売る」ことに特化
――現在の事業内容について教えてください。
現在は、海外のソフトウェアを日本市場へ展開し、販売からアカウントマネジメントまで一貫して担うSaaS事業を主軸としています。中国の「AppGrowing」、韓国の「Featuring」「Playio」の3社と連携しており、AppGrowingはAIを活用した動画広告の分析・制作、Featuringはインフルエンサーマーケティング、Playioはリワード広告の領域で、それぞれサービスを提供しています。
――御社ならではの強みはどのような点にありますか。
まだ広く知られていない優れたプロダクトを見つけ、日本市場に広げていく力です。これまでにも、当初は無名に近い状態だったプロダクトを取り扱ってきた経験があります。
記事やSNSでの発信に加え、ゲーム業界で築いてきたつながりも活用しながら、実際に商品へ触れてもらう機会をつくり、利用を広げてきました。
――事業を通じて実現したいことは何でしょうか。
目指しているのは、広告資金の大きさに左右されず、本当によい商品が正当に評価される市場をつくることです。優れた商品やサービスがあっても、十分に知られていないために売れていない企業は少なくありません。だからこそ、人脈や直接的な営業を通じて商品の価値を届けることに力を入れています。
実際、競合が大規模なプロモーションやCMを展開するなか、当社は小規模な集まりを開き、商品を直接見て、触れていただく機会をつくってきました。そこから契約につながり、競合を上回る成果を出せたケースもあります。広告費の規模ではなく、商品の価値をきちんと伝えることで選ばれる――そうした営業の形を実践してきました。
任天堂から営業の世界へ――経験の先にあった起業
――経営者になられた経緯を教えてください。
2005年に新卒で任天堂へ入社し、7年間勤務。海外事業や企画開発に携わり、ビジネスや海外市場の視点を開発へつなげる考え方を学びました。その後はモバイルゲームへの関心から、グリーをはじめ複数のゲーム関連企業などで経験を積んでいます。
大きな転機は、無名の海外企業を日本市場でどう売るかを考えるようになったことです。その後に入社した企業では、日本市場でゼロから1年間で2億円の売上に到達しました。この経験から、自分の営業スタイルが日本市場で通用するという手応えを得て、次第に営業へ軸足を移していきました。
その後、台湾企業の日本法人で代表取締役を経験しましたが、投資家から「雇われ社長ではなく、自分でやったほうがいい」と勧められたことが最後の後押しとなり、2016年に当社を設立しました。
――経営判断で大切にしていることは何ですか。
自分の直感を信じつつ、既存のやり方にとらわれないことです。ビジネス書も読みますが、書かれている手法をそのまま取り入れるのではなく、あくまで参考にし、自分の経験やスタイルと組み合わせて判断しています。
営業でも、単純に広告費をかければ売れるとは考えていません。良い商品であれば、重要なのはその価値をどう伝え、実際に触れてもらうかです。資金力に頼るのではなく、工夫によって商品を必要な人へ届ける。その方法を考え続けることを大切にしています。
正直さと柔軟性を、組織の力に変える
――仕事において譲れない価値観を教えてください。
「正直であること」です。商品のよいところだけでなく、悪いところもきちんと伝えるようにしています。営業では都合の悪い部分を軽く扱ってしまうケースもありますが、私は逆に、すべて正直に伝える姿勢を大切にしてきました。それが競合との差にもなっていると感じます。「谷内が言っているなら本当だ」と信頼していただき、購入につながることも少なくありません。
――社内のコミュニケーションではどのようなことを意識していますか。
最初から否定しない姿勢を心がけています。以前は自分がリードする意識が強かったのですが、今は、年齢や経験を問わず、人の意見に耳を傾けるようにしています。経験を重ねるほど固定観念や過去の成功体験にとらわれやすくなるからこそ、新しいアイデアをまず聞くことが重要です。
また、海外の商品を扱う以上、それぞれの文化や商習慣、仕事のスピードに柔軟に対応できる人材が必要です。そのため、現在も海外経験があり、複数の文化や言語を理解する人たちと営業について学ぶ機会を設けています。
「日本進出ならExtractor」と言われる会社へ
――現在向き合っている課題を教えてください。
課題は、営業を担う人材の不足です。よい商品を見つけても、手が足りず取り扱えないケースがあります。これまでは自分一人で一つのプロダクトを売る形が中心でしたが、同じ考え方や営業手法を実践できる人材が増えれば、扱える商品も広げられます。今後は営業人材を育成し、複数の商品を組み合わせて提案できる体制を整えていきたいです。
――今後、どのような会社を目指していきたいですか。
大きな目標は、自分たちで優れたものを開発し、自ら販売して海外へ展開することです。そのためにも、まずは会社自体の営業力をさらに強化していきたいと考えています。
これまで個人として培ってきた実績や知名度を会社の力へと変え、「日本に進出するならExtractorに頼めばいい」と海外企業から思ってもらえる存在が理想です。営業を担う仲間を増やし、世界各地の優れたプロダクトと日本市場をつなぎながら、会社として新たな可能性を広げていきたいです。