口コミでつながる学びの場を、誠実に守り続ける――株式会社ひらゼミ 平田彰氏が大切にする「謙虚な塾運営」
株式会社ひらゼミ 代表取締役社長 平田 彰氏
株式会社ひらゼミは、2対1の個別指導を行う学習塾です。初年度に一度広告を出して以降、募集活動をほとんど行わず、口コミを中心に生徒とのつながりを築いてきました。平田彰氏が大切にしているのは、「謙虚に取り組むこと」と、一人ひとりの子どもに誠実に向き合う姿勢です。目の前の生徒に真面目に向き合いながら学びの場を守ってきた平田氏に、独立の背景や塾運営に対する考え、スタッフとの関わり、今後について伺いました。
目次
口コミで築いてきた、地域に根差す個別指導塾
――現在の事業の特徴について教えてください。
授業の形としては、よくある2対1の個別指導です。その意味では、指導形式そのものに特別な特徴があるとは考えていません。
一方で、募集活動をほとんどしていないことは特徴かもしれませんね。初年度にはミニコミ誌のような媒体に一度広告を出しましたが、2年目以降は広告を出していません。現在は、基本的に口コミとネットをきっかけにして来ていただいています。
――会社として大切にしている理念や考え方はありますか。
理念やビジョンとして明文化しているものは「自己肯定感を育むお手伝いをしたい」ということです。
スタッフとは「謙虚にやりましょう」ということを共有しています。
学習塾という仕事は、許認可や資格が必要ではないサービス業の一つです。それでも生徒、保護者からは「先生」と呼ばれてしまいます。そこには、どうしても勘違いが生まれやすい部分があるんですよね。
また私たちが子どもたちに伝えている学習内容も、自分たちが発明したり発見したりしたものではありません。先人たちが積み上げてきたものを、次の世代にお伝えする役割を担っているだけです。
「自分の子どもを通わせたいか」が判断の基準
――独立し、経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
もともとは、大手の個別指導塾に社員として勤めていました。そこでの経験をもとに、「自分でやったほうがいいな」と思って独立したのが始まりです。
社員という立場で動いていると当然ながらさまざまな制約や組織の事情があり、自分の価値判断とのズレはある程度仕方がないのですが、「これは子どもたちのためになっていないな」と感じることが自分の中の閾値を超えたことが独立の背景にありました。
――経営判断をするうえで、軸になっている考え方は何でしょうか。
一番大事なのは、「自分の子どもを通わせたいと思える塾かどうか」です。
学習塾というサービス業の一つとして、数十人の子どもたちを対象に、真面目にコツコツ取り組んでいく。「経営判断」という意識はあまりないんです。
自分の子どもを通わせたいと思える塾を考えたとき、まず必要なのは誠実さだと思っています。子どもに対して真面目に、真っ直ぐ向き合っているか。そういった部分は、とても大事にしていますね。
本当に自分の二人の息子を通わせた時期もあるのですが、「あの講師に英語を担当してほしいな、この講師との雑談は刺激になるだろうな。」と考えるのは楽しかったですね。
若いスタッフの成長を「邪魔しない」関わり方
――スタッフとのコミュニケーションで大切にしていることはありますか。
現在、社員という立場は私一人で、ほかにアルバイトが10人います。
コロナ禍以降は、スタッフ同士で意見を共有するために対面で集まる機会が減りました。そのため、今はOJTが中心です。その場その場で気づいたことを共有したり、必要があれば修正したり、一緒に勉強したりする。そうした小さな積み重ねでやっています。
組織運営について、仕組み化できていないというのが実情ですね。だからこそ、日々の現場の中で一つずつ伝えていくことを続けています。
――採用や育成については、どのように考えていますか。
採用も、基本的には紹介が中心です。大学の先輩から後輩へとつながってきた流れもありますし、元塾生の中で適性がありそうな子に声をかけることもあります。
育成について私が意識しているのは、10代後半から20代の若い人たちが本来持っている「伸びていく力」を邪魔しないことです。
若い人の、自分自身で成長していく力をこちらの都合で阻害しないようにする。その点には気をつけていますね。
拡大ではなく、学びの場をどう次へ受け渡すか
――今後、新しく挑戦したいことや事業展開はありますか。
新しい展開は、今のところ具体的なものを考えていません。ひらゼミは、小さいながらも地域で一定の役割を担っている場所なのではないかと自負しています。どうすれば続けていけるのか、どのような形で次に受け渡していけるのか。それを今後3年から5年ほどの中で模索していきたいですね。
後継者についても、これからどういう形で探していくのがいいのかを考えている段階です。
――これまでに、取り組んでよかったと感じていることはありますか。
プログラミング教育には比較的早い時期から取り組みを始めました。幸いにも近くに電気通信大学があり、プログラミングに明るいアルバイト講師が継続して手伝ってくれているので大変助かっています。DTM(デスクトップミュージック)なんかにも手を出してみたことがあります。
アウトドアにも指向性があり、多摩川いかだレースに参加したり、野球やテニス、フットサルのイベントを子どもたちと楽しみました。実際にやってみてよかったと感じていますね。
ここ数年はイベントまで手が回らず、あまり楽しい塾にはなってないかもしれません。
体を動かしながら、自分のペースを保つ
――お休みの日は、どのようにリフレッシュされていますか。
なるべく体を動かすようにしています。ソフトボールをしたり、テニスをしたり、犬の散歩をしたりしていますね。そうやって体を動かすことは、継続して心がけています。
経営者の方が書いた本を読むことも以前から好きで、井深大さん、本田宗一郎さん、京セラの稲盛さんなどの著書からは多くのことを学ばせていただきました。さまざまな考え方に触れながらも、私自身は大きなことを目指すというより、目の前の子どもたちに誠実に向き合い続けたいと思っています。
これからも謙虚さを忘れず、この場所を必要としてくれる人たちのために、できることを一つずつ積み重ねていきたいですね。