PMOというキャリアをひらく――プロジェクト推進を軸とした事業展開

株式会社office Root 代表取締役社長 甲州 潤 氏

システム導入の成功を左右するPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)を軸としたサービスを提供する株式会社office Rootの創業者である甲州氏。エンジニアの新たなキャリアパス構築と事業の拡大を目指す同氏に、その道のりとビジョンを伺いました。

プロジェクトを円滑に進めていくお手伝い

――御社の事業内容について教えてください。

当社のメイン事業はPMO(プロジェクト推進支援)事業です。日本企業がシステム導入やその入れ替えを行う際、多くの場合、事業会社がシステム開発会社に依頼をします。しかしこの両者の間で認識のズレが生じ、プロジェクトが円滑に進まないことがよくあります。当社の事業はこの両者の間に立ってプロジェクトを円滑に進めていくお手伝いをする、PMOというポジションをとっています。

――創業の経緯はどのようなものでしたか。

私自身がソフトウェアエンジニアを経て、PMOとして約20年弱フリーランスで活動していたのが始まりです。お客様からの声が増えてきたこと、またコロナの時期に同じフリーランスの仲間から「一緒に何かできないか」と声をかけてもらったことがきっかけで法人化しました。より多くの多様なプロジェクトに対応するため、法人として拡大していったというのが設立の流れです。

エンジニアにPMOのキャリアパスを提示

――現在の組織構成について教えてください。

従業員は私を含めて2名のみで、ほとんどの業務は業務委託の方々で対応しています。業務委託のメンバーはだいたい15名から20名ほどいます。私自身は今もPMOやITコンサルタントとして現場で動いていますが、ソフトウェアを作る開発の経験も持っています。そのバックボーンがあるからこそ、今はプロジェクトの上流工程で、全体を推進する仕事ができているのだと思います。

――これまでのキャリアで最も印象的だった出来事は何でしょうか。

書籍を出版したことです。法人の設立前からプロジェクトで培ったノウハウをブログで発信していたのですが、それがベースとなり、出版社の方々との話の中で出版に至りました。この書籍はエンジニアのキャリアパスの提示にもなっており、40歳前後でキャリアに悩む人たちに向けてPMOという選択肢を知識や概念とともに伝えています。

自分で切り拓いていける人材が必要

――現在直面している最も大きな課題は何でしょうか。

課題は人材の一点に集約されます。単純に能力のある人、というだけではなく、「自分で切り拓いていける人材」が不足しています。当社ではAIツールなど最新技術を使える環境が整っていますが、それを「どう使って、どう事業を進めていくか」ということが最も重要な点です。決まったことやできることをやるという点で優秀な人は多いですが、「作る技術があるなら、その技術を使って自分で新しいことをやらなきゃだめだ」という姿勢を理解し、実行できる人を集めること。この「自分で考えて動ける人材」の増強が、事業拡大のボトルネックとなっています。

――今後の事業展開についてお聞かせください。

まずPMOに関するコミュニティの展開があります。前述の書籍を出版したことで、「どうやってPMOのスキルを勉強していったらいいか」という声が多く寄せられました。こうした声に答えるため、オンラインやリアルでPMOのワークショップや勉強会を開催し、個人のキャリアを支援するようなコミュニティを作りたいと考えています。また事業面ではPMOの事業を拡大していくのはもちろんのこと、その他のCIO代行や教育コンテンツ、そして海外進出支援といった複数の事業をも「プロジェクト推進」のキーワードで強化していきたいと考えています。

まずは小さく始めること

――プライベートでの趣味やリフレッシュ方法について教えてください。

趣味という趣味はあまりないのですが、家族と過ごすことがリフレッシュになっています。特別な旅行などではなく、ご飯を食べたり、公園に遊びに行ったりという日常的なレベルで十分にリフレッシュできています。

――これから起業したい方、経営者を目指す方へ伝えたいことは何ですか。

個人事業主から小さく始めるのは、リスクが少なくて良いことだと思っています。資金調達をして大きなことをやるのも素晴らしいですが、一生をかけていきなりやるぞと気負うよりは、自分ができることから小さく始めて、うまくいったら大きくしていく、という考え方で気軽に始めたら良いのではないでしょうか。今は手続きも調べれば簡単にできますし、昔のように専門家を探す必要もありません。技術も発展しているので、会計処理一つとっても一人で何でもできます。何かを始めるのに、何も恐れる必要はありません。ですので気軽に、まずは一歩を踏み出してほしいと思います。

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