フィンハーモニー 代表 音楽家専門FP 橋爪あやか氏
音楽×金融の両面から“続けられる未来”を支える、音楽家専門FPの橋爪あやか氏。ファゴット奏者としてクラシック音楽の魅力を伝えつつ、演奏家が抱えやすい経済的不安を解消するための資産形成サポートにも取り組んでいます。
演奏機会の減少や市場縮小が続くクラシック業界で、「音楽を続けたい」という思いを支える存在として、独自の視点で事業を展開しています。本記事では、音楽×金融に挑む背景や独立の経緯、組織づくりの考え方、そして今後の展望について伺いました。
音楽と金融を掛け合わせた唯一無二の事業とは
――現在の事業内容と特徴について教えてください。
私の活動は「音楽」と「金融」を掛け合わせた、音楽家のための専門的なサポートです。
自身がファゴット奏者として演奏の現場に立ちながら、生演奏の価値を次世代につなぐために子ども向けの演奏会なども企画しています。
一方で、音楽家が抱える“お金の不安”を解消するため、ファイナンシャルプランナーとして資産形成やライフプランの相談にも対応しています。
クラシックの市場縮小やAIの台頭により、演奏の機会が減っているのが現状です。その中で「続けたいのに、経済的な理由で諦めてしまう人」を減らすことが自分の使命だと感じ、音楽と金融の両面から支えられる体制作りをしています。
――音楽家専門FPとして独立した背景は何でしょうか。
本格的に独立したのは今年からです。金融商品の提案に限界があり、お客様に合わせた柔軟な選択肢を提示できないもどかしさを感じ独立を決意しました。
また、周囲の演奏家が「お金が理由で諦めざるをえない」姿を何度も見てきました。自分自身も同様に悩んだり、相談先が見つからず困った経験があります。
その課題を本気で解消したいと思い、個人事業主として活動することを決意しました。「音楽を続けるための最適な環境」をつくるためには、自分で道を切り拓く必要があると感じたからです。
挑戦を後押しする“最適解”の提案スタイル
――独立後、仕事で大切にしている価値観を教えてください。
大切にしているのは“正解ではなく最適解を一緒に探す”という姿勢です。
金融の世界は「これが正しい」という基準が語られることも多いですが、人の価値観や状況はそれぞれ違います。
その人にとって一番負担が少なく、無理なく続けられる方法を一緒につくる。それが独立系FPだからできる最大の価値だと感じています。自分の信念のもと、お客様に寄り添った提案ができるようになりました。
――これまでの活動の中で印象に残っていることはありますか。
交流会やイベントに参加すると、「ファゴットって何の楽器?」と聞かれることが多く、その度に「もっとこの楽器の魅力を広めたい」と感じ、演奏家としての活動にもより一層力を入れたいと思うようになりました。自分の事業だけでなく、楽器そのものの知名度向上にも貢献したいという思いが強くなった出来事です。
仲間と共につくる未来――金融教育と音楽の価値を広げるために
――今後のビジョンや取り組みたいことを教えてください。
目指しているのは「心の豊かさと経済的豊かさの両立」です。
金融面では、現在IFAとして在籍している株式会社T&Iコーポレーションで、“お客様の資産を自分の資産だと思って扱いなさい”という教えを胸に、信頼される存在を目指しています。
音楽の領域では、音楽家が一人での活動が難しい事もあるので、チームでも動ける仕組みをつくりたいと考えています。演奏家や音楽経験のある士業の方と協業しながら、音楽の価値を広げる取り組みや音楽に集中できる環境づくりのサポートを展開していく予定です。
――一緒に働く仲間に求める資質はどのような点ですか。
“思いやり”と“熱意を行動に変えられる力”です。技術があっても、信頼関係が築けなければ長く一緒に働くことはできません。
相手を尊重し、ともに成長していける関係を大切にしたいと考えています。これは演奏活動でも金融の仕事でも同じで、人と人との信頼が仕事の質を左右すると実感しています。
――事業を進めるうえで感じている課題と、今後の取り組みはありますか。
日本は金融リテラシーがまだ十分とは言えず、知識不足による不安を抱える人が多いのが現状です。
だからこそ、金融をもっと身近に感じてもらうための交流の場やイベントを増やしていきたいと考えています。音楽と金融をつなぐ立場だからこそできるアプローチで、「知るきっかけ」を作っていきたいです。
音楽と向き合い続けるための時間
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
美味しいものを食べている時に幸せを感じます。
まとまった時間が取れたときには旅行に出かけています。
特に出雲大社で過ごした時間は印象的で、気づけば1時間も座っていたほど心が落ち着きました。美味しいものを食べながら各地を巡ることが、心の豊かさにもつながっています。
――あなた自身に影響を与えた人物はいますか。
大学受験の際、お世話になった恩師の言葉が今でも音楽を続けられている理由として大きいです。「もし演奏から離れることがあっても、嫌いになって辞めてほしくない。いつでも味方でいるから。」と言ってくださったのが、今も支えになっています。音大受験を諦めかけたことがあった自分にとってその言葉はとても心強く、音楽が好きという気持ちを再認識しました。

