中小企業の“指針”をつくるブランディングを──ポルト・ブル 城戸千津の想い

株式会社ポルト・ブル 代表取締役 城戸 千津氏

株式会社ポルト・ブルは、中小企業や個人事業主に向けて、ブランディング支援とデザイン制作を行う会社です。広告代理店での経験を生かし、“視覚的感性と多面的考察力”を大切にしながら、企業の魅力を形にしている城戸千津代表。本記事では、城戸代表の理念やキャリア、組織づくりへの想い、今後の展望、そしてお人柄について伺いました。

中小企業に寄り添うブランディングとデザインの現状

――事業内容と、その特徴について教えてください。

私はもともと広告代理店でデザイナー・ディレクターをしていましたが、出産を機に退職し、個人でデザイン制作を始めたのが会社の原点です。中小企業や個人事業主の方と仕事をする中で、デザインが統一されずブランドが育たないケースを数多く見てきました。

ブランディングが整わなければ、マーケティングも集客も前に進めません。そこで、視覚面のデザインからブランド構築まで一貫して支援できる会社として、ポルト・ブルを立ち上げました。

理念は 視覚的感性と1歩先の心」。見た目の美しさだけでなく、その先の事業成長を見据えて提案することを大切にしています。

キャリアの背景と、デザインに込める価値観

――経営者になられたきっかけを伺えますか。

経営志向があったわけではなく、広告業界で子育てとの両立が難しかった時代背景もあり、復職を断念したことが独立のきっかけです。アルバイト先でも経験を買われてチーフに任されることが増え、「それなら自分でやろう」と決意しました。

――仕事を続けるうえで大切にしている価値観は何でしょうか。

デザインには必ず「理由」があると考えています。SNSで誰でも簡単に作れる時代だからこそ、形・色・余白・構造など、すべてに意味を持たせた“指針としてのデザイン”を届けたいと思っています。

――これまでのキャリアで最も印象に残った出来事はありますか。

オンライン化が進んだコロナ禍は大きな転機でした。効率化が進んだ一方で、「デザインは簡単に作れる」という誤解も広がり、価値の伝え方を考え直す機会になりました。

外注スタッフとつくる“気軽に話せる”関係性

――組織運営で意識されていることを教えてください。

現在はパートや協力会社のデザイナーなど10名弱と連携して制作を進めています。働きやすさのために在宅作業を取り入れたり、オンラインで雑談も含めた面談を行ったりして、気軽に話せる関係性を大事にしています。

――コミュニケーションで工夫されていることはありますか。

「思っていることは溜め込まず言い合える関係」をつくることです。デザイナーは寡黙な方も多いので、私の側から心を開いて話せる空気づくりをしています。以前は年2回の食事会も行っており、今後また再開できればと考えています。

――一緒に働く方に求める資質は何でしょうか。

素直に気持ちを伝えられることです。スキルは勉強で伸ばせますが、人間関係の基盤となる“正直に話せる姿勢”はとても重要だと感じています。

ブランディングを広め、若い世代へ「デザインの本質」を伝える未来

――今後の展望について伺えますか。

今後は「伝える側」に比重を置き、制作8割・コンサル2割の比率を逆転させたいと考えています。特に50〜60代の経営者はブランディングの重要性を知らないまま事業を継いでいるケースも多いため、一度立ち止まってブランドを整える必要性を広めたいと思っています。

また、高等学校や専門学校でデザインを教える機会もあり、若い世代に“おしゃれだけにとどまらないデザインの本質”を伝える活動も続けていくつもりです。

――業界の未来についてどのように感じていますか。

ツールの進化により自社で制作できる企業が増えていますが、だからこそ“本質的なブランディング”の価値は高まっています。知恵や経験にお金を払う文化も、これから確実に広がっていくと感じています。

経営を支える原動力と、仕事の外にある大切な時間

――経営で大切にしている考えを教えてください。

私は数字に強いタイプではありませんが、「困っている人を助けたい」という気持ちを一番大事にしています。誠実に向き合った時間は、必ずいつか形になって返ってくると信じています。

――影響を受けた人物はいますか。

植松電機の植松努社長の講演に強く感動しました。「思い続ければ必ず叶う」というメッセージは、経営者としての私の軸にもつながっています。

――リフレッシュ方法を伺えますか。

美術館巡りや旅行が好きで、時間があれば積極的に出かけています。海外も訪れることがありますが、特に“街全体が歴史や遺跡に触れられるような場所”は大きな刺激を受けました。また、15歳の娘との時間も大切にしており、母としての時間をしっかり確保することを心がけています。

これからはデザインの本質を伝えながら、中小企業や若い世代の可能性を広げていく取り組みを、より一層深めていきたいと考えています。

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