有限会社鹿児島ラーメン 代表 西 洋平氏
鹿児島で三代続くラーメン店を守りながら、家族で訪れやすい飲食店づくりを進めているのが有限会社鹿児島ラーメンの代表・西洋平氏です。事業承継、コロナ禍、人材不足など多くの壁に向き合いながらも、地域の味と文化を未来へつなぐための経営に挑んでいます。本記事では、現在の事業、代表の歩み、組織づくり、未来の構想について伺いました。
目次
鹿児島ラーメンを守り、育てる現在の事業と想い
――現在の事業内容と、鹿児島ラーメンの特徴を教えてください。
3店舗とフランチャイズ1店舗を運営し、店舗営業を軸にネットショップ、卸、物産展・イベント出店なども行っています。鹿児島ラーメンは九州の中でも独自性があり、豚骨・鶏ガラ・野菜を合わせた“あっさり寄り”のスープが特徴です。自家製麺文化が根付き、漬物を食べながらラーメンを待つなど、昔ながらのスタイルも受け継がれています。
事業承継の背景と、経営者として育っていった価値観
――事業承継までの経緯を教えてください。
高校まで鹿児島で過ごし、大学・大学院は東京へ進学しました。ITコンサル企業で働く中で「経営を自分の仕事にする」ことへの興味が強まり、母が続けてきた店を継ぐ決意を固めて帰郷しました。子どものころから店は身近な存在で、自分自身が食べて育った味でもあります。
――経営者として印象的だった出来事は?
承継直後、長年働いてきたベテランのパートさんが一度に十数名退職したことです。「安心して引退できる」と言われた一方、人手不足が経営を揺らす現実を強く感じました。採用に強い専門家の協力も得て体制を立て直し、「組織を守ることの重さ」を痛感した出来事でした。
――大切にしている価値観は?
飲食の現場で働く人の賃金や働き方を知り、「豊かさとは何か」を深く考えるようになりました。収入だけでなく、家族と過ごす時間や心の余裕も豊かさの一部です。スタッフが無理なく働ける環境を整え、生産性を高めながら生活の質を守ることを大切にしています。
“主体性を求めすぎない”という選択。鹿児島ラーメン流の組織づくり
――社員に主体性を持ってもらうための工夫はありますか?
地方の飲食店では、都市部の企業のように高度な主体性を求めるとギャップが生まれてしまいます。そのため「責任を背負わせすぎない」「できる範囲の役割に集中してもらう」という方針に切り替えました。求める基準を適切に調整し、60点の積み重ねを大切にすることで、スタッフが自信を持って働ける環境をつくっています。
――コミュニケーションで意識していることは?
代表の私が現場に足を運び、直接声をかけるようにしました。「ありがとう」「助かったよ」といった前向きな言葉を積極的に伝えることで、現場の雰囲気が明るくなり、仕事の取り組み方も変わってきたと感じています。複数店舗があるからこそ、距離が生まれないよう、顔を合わせる時間を意識的につくっています。
子どもたちの“体験”が地域を未来へつなぐ。これからの挑戦
――今後挑戦したいことはありますか?
「子どもが行きたくなるラーメン屋」を実現したいと考えています。店舗のひとつを活用し、子どもがラーメンづくりを体験できる“ラーメン屋さん職業体験”の場をつくりたいです。
鹿児島では子ども向け職業体験イベントが非常に人気で、応募枠の数倍の希望者が集まります。子どもが作ったラーメンを親が食べる体験は、その家族にとって特別な思い出になりますし、地域の飲食文化を知るきっかけにもなるはずです。大きな利益を求める取り組みではなく、地域の未来に貢献する事業として形にしていきたいと考えています。
家族と音楽と、少しのポーカー。代表のリフレッシュ
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
一番の癒しは息子と過ごす時間です。生活の中心が子どもになり、外出の頻度は減りましたが、今の自分にとって大事な時間です。妻と音楽ライブに行くことも楽しみで、特に「THE YELLOW MONKEY」が好きで、ツアーにも足を運びます。ほかにはサウナや、鹿児島でブームになっているポーカーもよく遊びます。考える力が必要で、経営にも通じる部分があると感じています。
これからも、家族との時間と自分を整える時間の両方を大切にしながら、日々の経営に向き合っていきたいと思っています。

