有限会社藤谷勝志写真事務所 代表取締役 藤谷勝志氏
雑誌・広告の第一線で活躍し、シャネルやアルマーニ、エルメスなど名だたるブランドの撮影を手がけてきた商業カメラマン・藤谷勝志氏。現在は東京都内に自身の撮影スタジオ「STUDIO FLOWER」を構え、ビジネスプロフィールから企業広告、一般顧客の撮影まで幅広く手がけている。“結果を出す写真”を信条に活動する藤谷氏に、これまでの歩みや仕事への哲学、組織づくり、そして未来への展望を伺った。
目次
商業写真の現場で磨いた「結果にこだわる」姿勢
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
個人の写真事務所を運営し、雑誌・広告を中心に商業写真を撮影しています。2004年に現在のスタジオを構えたことで、メディアの撮影に加え、一般のお客様の撮影にも幅広く対応できるようになりました。天井高と10メートルの撮影距離を確保したスタジオなので、広告撮影や白ホリでの全身撮影にも十分対応できます。こうした環境を個人で持っているのは都内でも少ないかもしれません。
――撮影において大切にしている理念やビジョンは?
商業写真は「きれいに撮れば終わり」ではありません。撮影した商品が売れたり、クライアントの成果につながって初めて評価される世界です。フリーカメラマンは営業してくれる人がいませんから、次につながるかどうかは写真そのものの結果次第。政治家のポスターでも、企業の広告でも、目的が達成されてこそ写真の価値があります。だからこそ“結果に繋がる写真”を常に意識しています。
写真との出会いと、プロになると決めた瞬間
――この仕事を志されたきっかけは?
高校の写真部で白黒フィルムを現像したとき、真っ白な印画紙に像が浮かび上がるあの瞬間に魅了されました。県の美術展に出品して賞をいただいたことや、先生に褒めてもらえたことも嬉しくて、写真にのめり込みました。当時読んでいた写真雑誌のプロカメラマンの経歴を見たとき、「写真学科のある大学がある」と知って、東京工芸大学短期大学部へ進学しました。そこから迷いなく写真の道へ進みましたね。
――経営者として意識してきたことは何でしょうか。
フリーで続けてこられたのは、「自分を選んでくれた人に必ず応える」という気持ちを大切にしてきたからです。カメラマンは本当にたくさんいます。その中で「藤谷に撮ってほしい」と声をかけてくださることは当たり前ではありません。その期待に応え、結果につなげること。それは今も昔も変わりません。
1人で運営するからこそ保てる、妥協のない丁寧な仕事
――組織の運営やコミュニケーションについてお聞かせください。
以前はフィルム撮影だったのでアシスタントが必要でしたが、デジタルに移行してからは基本的に1人で対応しています。撮影からライティング、データ管理まで一貫して自分で行うことで、クオリティに責任を持てますし、ブレのない仕事ができます。その分、クライアントとのコミュニケーションは丁寧に行い、どんな写真が最適かを十分に共有して撮影に入るようにしています。
――一般のお客様の撮影も増えていると伺いました。
ビジネスプロフィールや企業用のポートレートは特に力を入れている分野です。起業したばかりの方の撮影を担当し、その方が事業を軌道に乗せて数年後に再び撮影に来てくださることがあり、それが本当に嬉しい。写真がその方の成長や信頼構築の助けになっていることを実感します。
変化の大きい時代でも、写真が持つ“力”を信じ続ける
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
写真業界は、スマホの普及やSNSで「誰でもカメラマンになれる時代」になり、大きく変わりました。広告も縮小傾向で先を見通すのが難しいのが現実です。しかし、どれだけ環境が変わっても、写真が人の心を動かし、結果を生む力は変わらないと思っています。目の前の一つひとつの仕事を丁寧に積み重ねながら、“成果につながる写真”をこれからも追求していきたいです。
写真家としての視点を育てる、日常の楽しみ
――プライベートの過ごし方やリフレッシュ法を教えてください。
特別な趣味があるというわけではありませんが、日常の中で光や表情に目を留めるクセは抜けません。普段から「いい瞬間だな」と感じるものを観察することが、仕事の感性にも繋がっている気がします。撮ることそのものが好きなので、写真に触れている時間が一番のリフレッシュになっているのかもしれません。

