株式会社アルパインクリエイト 代表取締役 福地政弘氏
株式会社アルパインクリエイトは、屋根からの落下事故を防ぐために開発された革新的な雪下ろし製品「ナイアガラカット」を中心に、雪国の暮らしを守るソリューションを提供している企業です。本記事では、代表の福地政弘氏に、開発に至る背景、製品に込めた思い、組織づくり、そして未来への展望について伺いました。
目次
屋根からの事故をゼロへ──会社の現状と理念
――現在の事業内容の特徴を教えてください。
当社は「ナイアガラカット」というロープで滝のように雪を落とす製品の開発・販売を中心に事業を展開しています。最大の特徴は、“引切動作”という切断原理を応用し、ロープで固く締まった雪でも安全に落とせる点が特徴です。これにより従来の雪落とし棒では、高所や硬い雪を切れずに、結局屋根に登って落下事故が多い現状を、変えることができると考えております。
――他社にはない強みはどこにあるのでしょうか。
ナイアガラカットは長いポールにロープを掛けて切ることで固い雪も安全に除去することが可能です。またドローンを併用することで3階建て以上にも対応でき、雪国に新しい除雪手段を提供し、新しい技術と組み合わせながら「屋根からの落下事故ゼロ」を目標にしています。
研究の積み重ねが生んだ技術──福地さんのキャリアと価値観
――起業に至るまでのキャリアと背景を教えてください。
前職は北海道電力で、配電部門の技術者として電柱や電線の保守管理に携わっていました。ニセコ勤務時、電柱に数百キロの雪が形成される「冠雪」問題を目の当たりにし、その対策研究に15年取り組み、開発品で澁澤賞や特許も取得し年間50件程度あった冠雪による停電事故を約8割方削減したことが現在の原点です。そして社会的には雪下ろし事故が毎年100人前後発生する現状を知ったのと、身近な人の落下事故をきっかけに根本から解決したいという思いで起業を決めました。
――経営判断で大切にしている価値観は何ですか。
常に「表面的な対策でなく、本質的な原因を見る」ことを意識しています。社会にとって本当に必要なことか本質的な対策ができているかを軸に判断することで、ぶれない事業運営ができると考えています。雪国における“当たり前の危険”をなくすことが、自身の使命だと感じています。
形式知で伝える──組織運営と関係づくり
――コミュニケーションで意識されていることを教えてください。
起業から1年の段階であるため、まだ社員はおりませんが、協力して頂いている販売会社、保険会社、自治体など数多くのパートナーと連携して事業を進めています。そこで大切にしているのは「暗黙知を形式知にする」こと。経験や感覚ではなく、紙や資料に落とし込み、誰が見ても理解できる形にすることで、認識の齟齬がなくスムーズな連携を意識しております。
――パートナー企業との関係で大事にしている姿勢はありますか。
上下ではなく“自律分散型”の関係性を心がけています。すべての関係者がWin-Winになれる三方よしの環境をつくることで、長期的に信頼される関係になると考えています。
日本から世界へ──今後の展望
――今後どのような展開を目指していますか。
まずは北海道から東北、そして全国へ広げていきたいと考えています。YouTubeが50万再生を突破したことで本州からの注文も増えており、ニーズの高さを感じています。
――海外進出についてはどう考えていますか。
雪の多いアメリカやカナダでも、屋根の下ろし事故が頻発していると聞いております。そしてアメリカでは日本と同様な雪落とし棒しか販売されていない状態であることも調査しております。そのため国際特許(PCT)出願も完了しており、将来的には海外展開も視野に入れています。偶然ですがナイアガラの滝周辺の地域が積雪の多い地域と聞いておりますので、製品名との親和性も高く、世界展開への可能性を感じています。
山と共に生きる──福地さんの素顔
――休日の過ごし方やリフレッシュ方法を教えてください。
山が好きで、夏は登山、冬はスキーがライフワークになっています。往復10時間以上かかる山に挑戦することもあり、自然の中で過ごす時間が心身のリセットになっています。
――会社名「アルパインクリエイト」にはどんな思いがあるのでしょうか。
日本は西側に水蒸気の多い暖流があることで偏西風により、世界でも珍しく「平地でも積雪量が多い地域」です。そのため海外の山岳地域と同じような環境にあることから、アルプスのように自然と共存できる世界を創造したいという思いを込めています。これからも雪国の暮らしをより安全・快適にするための挑戦を続けていきます。

