“ゆりかごから墓場まで”を実現する――共生社会を支える在宅福祉の挑戦

ケアマップ株式会社 代表取締役  高橋 健佑氏

ケアマップ株式会社は、山形県を拠点に在宅福祉・身元保証・産後ケアなど、年齢や境遇を問わず“ケアを必要とするすべての人”を支えるサービスを展開しています。代表の高橋氏は、約20年の現場経験と施設長としてのマネジメントを経て独立。「ゆりかごから墓場まで」というビジョンを掲げ、地域共生社会の実現に挑み続けています。本記事では、事業の特徴、経営者としての価値観、組織づくり、今後の展望について伺いました。

在宅福祉を軸に“最適なサービス”を届ける事業戦略

――現在の事業内容と特徴について教えてください。

当社は在宅福祉を中心に、訪問介護、居宅介護、重度訪問介護、ケアプランセンター、身元保証事業等を展開しています。

特に身元保証は、入院時の連帯保証や施設入所時の各種手続きなど、家族の代わりとなる支援が必要な方の依頼が増えています。介護事業と組み合わせることで、生活上の困りごとをワンストップで解決できる点が強みです。

「最適なサービスの選択」と「最適なサービスの構築」の両立を重視し、利用者と事業者双方の課題に向き合っています。

――御社のビジョンはなんですか?

当社が掲げているのは、“ゆりかごから墓場まで”あらゆるライフステージに寄り添う支援を実現することです。

高齢者だけでなく、産後のお母さんや障害のある方、子どもたちなど、幅広い層を訪問型の支援でつなぎ、地域全体で支え合える環境を目指しています。

地方では自宅での生活を望む高齢者が増えており、訪問の強みを活かした在宅支援は今後さらに重要性が高まります。世代を超えた交流の場づくりも含め、生涯を通じて安心できる地域づくりに取り組んでいます。

介護現場から経営者へ――独立の背景と大切にしている価値観

――福祉業界でのキャリアや独立のきっかけを教えてください。

介護福祉士として約20年、現場から管理職、施設長と経験を重ねてきました。

その中で、人材定着や経営改善に悩む施設を支援したいという思いが強まり、独立を決意しました。前職の経営者から「挑戦したほうがいい」と背中を押されたことも大きな要因です。

コンサルだけでは生活が成り立たないと判断し、介護事業との二本柱で会社を立ち上げました。志に共感した仲間が加わり、気づけば20名を超える組織へと成長しています。

――経営者として大切にしていることはありますか。

ワンマンにならず、常に全体を俯瞰する姿勢を意識しています。

福祉事業は人の生活に関わるため、まず“質”が伴わなければ成り立ちません。利益だけを追うと、本来必要な支援が疎かになる可能性があります。

土台を整え、利用者に誠実に向き合うことで、結果として収益がついてくるという考え方を大事にしています。

――独立後で最も印象に残っている出来事を教えてください。

開業直後、想定以上の応募が続き、1年目で20名近くの採用に至りました。急成長に伴い資金繰りが限界に近づき、一度は事業売却を考えたほどです。(汗)

しかし、家族や仲間の励ましを受け、覚悟を決めて自己資金を投入しました。この決断が転機となり、売上・利益とも大きく伸長。困難を乗り越えたことで、会社としての基盤が強固になったと感じています。

成長を支える組織づくりと働きやすさの追求

――社員のために取り組んでいることはありますか。

一般的な介護現場はいまだに紙管理が中心で、業務効率に課題が残ります。そこで当社では、私自身がポータルサイトを作って、勤怠から報告書作成までスマホで完結できる仕組みを導入しました。

本来、訪問介護は事務所に戻る必要はありませんが、記録のためだけに移動が生じるケースが多い状況です。この負担をなくすことで訪問件数にゆとりが生まれ、現場に集中しやすい働き方へ近づいています。

また、評価制度や賃金テーブルも明確にし、個々が成長を描ける体制づくりにも取り組んでいます。

――コミュニケーション面での工夫点を教えてください。

訪問介護はスタッフ同士が対面する機会が少ないため、オンラインツールで情報を共有しつつ、定期的に少人数のミーティングを開いています。カフェでの面談や1on1も取り入れ、気軽に相談できる関係性づくりを進めているところです。まだ改善の余地はありますが、交流の場を増やすことで組織としての一体感を高めたいと考えています。

地域共生社会の実現へ――今後の挑戦

――今後の事業展開の課題と対策を教えてください。

福祉部門の理念は社内に浸透していますが、身元保証や産後ケアなど新しい領域が広がるにつれ、事業全体の意図が見えにくくなる可能性があります。

事業拡大に伴い、「なぜこの取り組みをするのか」を明確に伝える仕組みを整えることが今後の課題です。複数領域が横断して支援する意義を共有することで、組織として同じ方向を向ける体制をつくっていきたいと考えています。

今後は、高齢者や障がい者という枠にとらわれず、縦割りの社会ではなく、分野横断的に支援できる体制を整えていきます。そのためには、産後のお母さんや子どもの居場所づくりに力をいれていきます。

――影響を受けた価値観や、日々のリフレッシュ方法を教えてください。

好きな言葉は「知足の心」です。足りていることに気づけたとき、人に優しく向き合えるという考え方に共感しています。

リフレッシュ方法は、人との会話を楽しむこと。新しい出会いや何気ない会話から気づきを得ることが多く、次のアイデアにつながることもあります。コーヒーを楽しむ時間も大切にしながら、心の余白をつくるようにしています。

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