「トップラインを伸ばすAI戦略」を実装する――吾郷潤が語る、中小企業支援の新スタンダード

AGO MARKETING株式会社 代表取締役 吾郷 潤氏

生成AIを「現場で使える武器」に変え、中小企業のトップラインを伸ばす――。AGO MARKETING株式会社 代表取締役の吾郷潤氏は、マーケター/データサイエンティストとしての経験に、現代アートの一面を掛け合わせ、「アート×AI」で経営課題に挑むコンサルティングに取り組んでいます。静岡のお茶農家など地方の一次産業とも伴走しながら、日本の中小企業と地域を元気にする道を模索する吾郷氏に、事業の特徴とその原点、これからの展望について伺いました。

地方の未来を支える「アート×AI」マーケティング支援

――御社の特徴を教えてください。

AGO MARKETING株式会社は、「アートとAIで経営改善する」をコンセプトに、中小企業の経営改善と売上向上を支援している会社です。もともとは「マーケティング×生成AI」でスタートしましたが、今はアート思考やデザイン思考も取り入れ、経営戦略そのものを一緒に描くスタイルへ進化させています。

私自身、ルーツである島根に帰省するたび、過疎化でシャッターが閉まった商店街を目にしてきました。若者が無理に東京に出なくても、地方でイノベーションを起こせる社会をつくりたい――その思いが、いまの事業の原動力になっています。

――具体的に、どのような支援をされているのでしょうか。

当社が重視しているのは、AIによる単なるコスト削減ではなく「トップラインを伸ばすAI戦略」です。業務効率化だけではキャッシュは大きく増えません。浮いた時間とリソースを使い、どう新規を獲得し売上を上げるかまでをセットで設計しています。

静岡のお茶屋さんのDX支援では、各部署にAIの使い方講座を行い、現場主体で活用が進むよう伴走しました。数か月後の事例発表会では、手書き資料の検索に月20時間かかっていた業務がAIにより20分で済むようになり、多言語マニュアルの自動生成など、現場発の工夫も次々に生まれました。

社員が目を輝かせながら事例を発表する姿を見て、「AIが本当に現場に根づいた」と実感できたのは、とても嬉しい瞬間でした。

アート思考で経営にブレークスルーを生む

――御社ならではの強みや、仕事で大切にしている価値観は何でしょうか。

従来のマーケティングはロジック中心で、どうしても戦略が似通ってしまいがちです。そこで私が大切にしているのが「アート思考」「デザイン思考」です。お客様の行動や感情を深く理解し、人間中心でアイデアを発想していくことを、AIの力で後押ししています。

現代アートの作品キャプションをAIに読み込ませ、「この作品からビジネスに活かせるインサイトを出してください」と分析させるワークショップも行っています。経営者の方々と一緒に作品を眺め、AIが提示する多角的な解釈をきっかけに議論すると、「そんな視点はなかった」という気づきが次々に生まれます。

論理とアート思考、それにAIを掛け合わせることで、経営にブレークスルーを生むことができると信じています。

「情熱は人を動かす」――多様なプロが集うチームづくり

――組織体制や、メンバーに対して大切にしていることを教えてください。

当社は、業務委託やパートナーも含めて約24名のチームです。副社長など優秀な顧問に支えられ、営業・戦略面で力強いサポートを受けています。

採用・パートナー選びで重視しているのは、AIのスキル以上に「お客様の課題に情熱を持って向き合えるかどうか」です。ソリューション営業やマーケターの経験があり、課題の本質を捉えられる人であれば、AIの使い方はあとからいくらでも習得できます。

「情熱は人を動かす」という言葉を胸に、お客様とメンバーの心を動かせるチームをつくっていきたいと思っています。

5〜10年で年商50億、日本中の中小企業とともに

――今後の目標や、事業を通じて実現したい未来を教えてください。

中長期的な目標は、年商50億円・顧客100社という規模で、日本中の中小企業と伴走することです。ただ、数字以上に大事にしているのは、全国の社長さんから「アート×AIで一緒にイノベーションを起こしてくれてありがとう」と言っていただける状態をつくることです。

現実的には、まず3年後に年商1億〜1億数千万円規模を目指しています。最大の課題は「アート×AI」というコンセプトの価値をわかりやすく伝え、新規のお客様との出会いを増やすことです。

日本では中小企業のAI利用率がまだ低く、「AIで何ができるのかイメージできない」という声も多いのが実情です。リファラルやテレアポ、自社のEラーニング、ウェビナーなど、複数のチャネルを組み合わせながら、一歩ずつ認知の壁を越えていきたいと考えています。

テニスと現代アートが生むインスピレーション

――仕事以外では、どのようにリフレッシュしているのでしょうか。

テニスをはじめ、スポーツ全般が大好きです。毎週のテニスでは、自分と相手の強み・弱みをAIに入力し、戦略を考えてもらって実際に試してみることもあります。遊びの場でもAIを実験的に使ってみることで、新しい発想が生まれることが多いです。

もう一つの大事な趣味が現代アートです。作品を前に「なぜこの表現なのか」「作者は何を伝えたいのか」と考える時間は、ビジネスのインスピレーションの源泉でもあります。

サントリー時代に教わった「やってみなはれ」、そして上司から贈られた「情熱は人を動かす」という言葉を支えに、これからも自分の情熱を信じて、一社一社の経営者と向き合っていきたいです。

経営者はある意味アーティストです。自分の情熱や世界観を、たまたま「経営」という手段で表現している存在だと思います。

自分が心から好きだと言えることを見つけ、一歩を踏み出す人が増えるように――アートとAIの力を借りながら、その背中を押し続けていきたいです。

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