株式会社ジャパンアルプスアドベンチャーズ 代表取締役 新美 透氏
株式会社ジャパンアルプスアドベンチャーズは、日本アルプス山岳域とその周辺地域を舞台に、地域の自然や文化を生かした体験型ツアーを手がける旅行会社です。代表の新美透は、同社に加え、山岳情報の集約と発信を行うアルプスガイドセンターの代表も務めています。登山者として山に親しむ中で、地域資源の魅力が十分に伝わっていない現状に課題を感じ、情報発信から観光事業へと取り組みを広げてきました。本記事では、事業立ち上げの背景や経営の視点、これから描く未来についてお話を伺いました。
山と地域を結ぶ観光事業の立ち上げ
――現在の事業内容と、その出発点について教えてください。
もともとは東京でサラリーマンとして働いていましたが、山が好きで各地に登りに行く中で、山と地域を結びつけた形で何かできないかと考えるようになりました。登山に必要な情報が十分に整理されておらず、点在していることにも課題を感じていました。
そこで、情報を集約し発信することで、人が地域を訪れやすくなる仕組みをつくれないかと考え、準備期間を経てアルプスガイドセンターを立ち上げました。当初は収益モデルを明確に描いていたわけではなく、「まずはやってみる」という思いが先行していたのが正直なところです。
失敗も多く、周囲から心配されることもありましたが、日本アルプスを軸に地域活性化へ貢献したいという考え自体は、今も変わっていません。
――情報発信から旅行事業へ展開した理由は何でしょうか?
情報発信だけでは、どうしても来訪そのものにつながりにくいという実感がありました。観光事業として持続させるには、訪れる体験そのものを形にし、収益を生む仕組みが必要だと考えるようになります。
そこで、これまで蓄積してきた情報やネットワークを生かし、旅行会社として事業を立ち上げました。日本アルプスを訪れたい人が、安心して、より深く地域を知ることができる導線をつくることが目的です。
現在は、試行錯誤を重ねながら、その形を磨いている段階だと捉えています。
日本アルプスの価値を伝えるという挑戦
――日本の山の魅力はどんなところにあると思いますか?
山に登り始めたのは40代後半からで、海外の山にも足を運びました。その中で、日本アルプスの自然環境や景観、文化的背景は、世界的に見ても非常に魅力的だと改めて感じたんです。
海外には多くの登山者が集まる山がありますが、日本アルプスにはそれに匹敵する、あるいはそれ以上の価値があると感じています。
ただ、その魅力が十分に伝わっていない。だからこそ、日本人だけでなく海外の人にも、その本質を体験として伝えていきたいと考えています。
――インバウンドやアドベンチャーツーリズムをどう捉えていますか?
海外から人を呼び込む流れ自体は大きくなっていますが、単に人数や消費額を追うことには違和感があります。大切なのは、その地域が持つ自然や文化の価値を理解してもらうことだと思っています。
結果としてお金が地域に落ち、その収益が自然や文化を守るために再投資される。そうした循環が生まれてこそ、観光には意味があると考えています。
そのため、量よりも質を重視したツアーづくりを軸にしています。
質を重視するツアーづくりと組織運営
――ガイドや人材に対して、どのような考えを持っていますか?
私はガイドではなく、仕組みをつくる立場ですが、ツアーの質を左右するのは間違いなくガイドの存在です。登録しているガイドの中には、この地域でもトップレベルだと感じる人材がいます。
一方で、ガイドの数自体は圧倒的に足りていません。発掘や育成も大きな課題だと認識しており、その点については地域とも連携しながら進めています。質の高い体験を提供するためには、人への投資が欠かせないと考えています。
――組織運営で、意識しているコミュニケーションはありますか?
大きな組織ではないからこそ、方向性の共有を重視しています。単に方針を伝えるのではなく、「なぜその方向なのか」を理解してもらうことを意識しています。
全員が同じ方向を向いて進めるかどうかは、事業の質にも直結します。共有の深さを大切にしながら、チームとして動ける状態をつくることが、今の段階では何より重要だと感じています。
日本アルプスの未来を見据えて
――これから取り組んでいきたいこと、目指す姿を教えてください。
旅行会社としては、まだ始まったばかりです。これから、地域の自然や文化をどうツアーとして具体化していくか、その精度を高めていきたいと考えています。
海外の人に向けて発信する一方で、日本人にとっても、一生忘れられない体験となる旅を提供できる存在でありたい。そのために、無理に広げるのではなく、丁寧に積み重ねていく姿勢を大切にしています。
――地域や読者に伝えたいメッセージはありますか?
地元の人でも気づいていない文化や自然の価値は、実は多くあります。日本アルプスに限らず、どの地域にもそうした資源は眠っているはずです。
上辺だけの観光ではなく、その土地ならではの本質的な魅力をどう伝えるか。その視点を大切にしながら、地域とともに歩んでいける観光の形を、これからも模索していきたいと考えています。

