pegu合同会社 代表 荒木 由貴子氏
「ダンスは特別なものではなく、日常の中にあり、日常・人生を豊かに彩るもの」。そう語るのは、群馬県でダンススタジオを運営するpegu合同会社の代表・荒木由貴子氏です。ダンスを“生活の一部”として捉え、3歳から70代まで幅広い世代が通える場をつくってきました。スタジオ設立から8年。地域に根ざした活動とともに、多角的な挑戦を続けている背景について伺いました。
子どもからシニアまで通えるスタジオづくり
――現在の事業内容について教えてください。
母体はダンススタジオで、会員数は約430名。幼児から大人まで、幅広い世代が通ってくださっています。平日の夕方から夜は子どもや若者向けのダンスレッスン、昼間は平均55歳の方が運動とダンスを楽しめるスタジオ「リフレッシュスタジオ」を展開しています。ここではヒップホップの入門クラスや昭和歌謡を使ったダンスなど、体力づくりや気分転換を目的としたプログラムを用意しています。
さらに2024年4月には学童保育をスタート。学校への送迎から、保護者が迎えに来るまでの時間を安全に過ごせる場所を提供しています。こうして「夜はダンス、昼はリフレッシュ、放課後は学童」と三つの柱で運営し、地域の生活に寄り添った存在を目指しています。
ダンスを続けた先にある“居場所”をつくりたい
――経営方針や理念について教えてください。
私自身、19歳でダンスを始め、インストラクターやスタジオマネージャーを経験してきました。コンテストで結果を残すことだけが全てではなく、仲間や先生と出会い、踊ることが生活の一部になっていく。その感覚を多くの人に届けたいと思ったのが独立のきっかけです。
最初は周囲からの応援が大きく、「自分がやりたい」というより「やってみなよ」という声に背中を押されて始まりました。気づけば8年が経ち、今では「やってよかった」と心から思えます。大切にしているのは、ダンスを通じて生徒たちの生活・人生を豊かにする事、また人生の選択肢を増やすことです。
人が育つ組織づくり
――社員や講師との関わりで意識していることは何でしょうか。
現在は社員3名とアルバイト3名、外部講師8名で運営しています。社員には「マネージャー」「イベント運営」「学童管理」など明確に担当を任せ、責任を持って動いてもらっています。主体性を引き出すには、役割を与え私自信が社員を信頼することが不可欠だと感じています。
また、コミュニケーションはできるだけ対面で行うようにしています。食事や旅行に行ったり、日常の雑談を交わしたりすることで距離が縮まり、相談もしやすくなる。関係性が良好だからこそ、生徒や保護者の皆様にも安心感を与えられると考えています。こうした文化はスタジオの「信頼感」にもつながっており、地域の保護者から「安心して子どもを預けられる」という声を沢山いただける大きな理由になっています。
少子化時代にどう挑むか
――今後の展望について教えてください。
大きな課題は「ダンスを続けた子どもたちの将来をどう描くか」です。生徒たちが大きくなるにつれ、「この先ダンスは何につながるのか」と悩む声を耳にします。そこで、SNS発信や自己プロデュースを学べるクラスを新設し、自分の表現を社会につなげられる仕組みをつくろうとしています。
また、会員数1000人規模を目標に掲げています。新しいスタジオの展開も視野に入れながら、昼の部や学童と連携し、講師や社員がライフステージに応じて働き方をシフトできる環境も整えていきたいと考えています。加えて、少子化に伴う会員減少リスクに備え、イベント収益や地域とのコラボレーション企画など、複数の収入源をつくることにも力を入れていきます。
ダンスと旅でリフレッシュ
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
踊ること自体が私にとってのリフレッシュですが、キャンプや海外旅行も好きです。直近ではタイに4日ほど出かけ、自然や異文化から刺激を受けました。社員も「社長がしばらく不在になる」とわかってサポートしてくれるので、安心して外に出られる環境があることに感謝しています。
日常の中にあるダンスと、非日常の体験をバランスよく取り入れることで、また新しいアイデアやエネルギーが湧いてきます。これからも仲間とともに、地域に必要とされるスタジオの形を探し続けたいと思っています。

