Hinome株式会社 代表取締役 中家 直也 氏
奈良と聞けば“鹿と大仏”。そんな固定概念を覆し、地方に眠る魅力ある商品・サービスに“ひのめ”を当てたい。SNSマーケティングを展開するHinome株式会社は、地方企業の発信力を支えるプラットフォームづくりに挑戦しています。マイナビ・クラウドワークスを経て独立し、現在は全国のリモートメンバーと共に事業を拡大中。今回は、創業背景から今後の展望までを伺いました。
目次
地方の“知られざる魅力”を発信したい
──創業のきっかけを教えてください。
奈良と聞くと、多くの方が思い浮かべるのは「鹿と大仏」です。でも、奈良公園って県全体から見ればほんの一部なんですよね。実際には南部を中心に、素晴らしい商品やサービスがたくさん眠っています。その現実をもっと多くの人に知ってもらい、選択肢を増やしたいと思ったのが会社を立ち上げた原点です。
地方には福岡の「博多ラーメン」のように、一つのイメージに埋もれてしまう現実があります。そこに光を当てたい。だからこそ“ひのめ(陽の目)”というコンセプトを掲げました。
人材業界からマーケティングへ
──創業前はどのようなご経歴でしたか。
新卒でマイナビに入り、人材紹介や求人広告の営業を約6年担当しました。その後、クラウドワークスに転職してフリーランスの方々の支援を経験し、Webマーケティング会社で役員を務めました。ただ、人を介して支援するビジネスには「肌触り感がない」と感じています。もっと自分の手で、成果に直接関わりたいと思ったことが独立のきっかけでした。
SNSマーケティングツール「HINOME」の成長と反響
──現在展開されているサービスについて教えてください。
2022年6月にInstagram特化型分析・運用ツール「HINOME」をリリースしました。今では2万3,000アカウント以上の利用者がいて、口コミだけで毎月400~500件ほど新規登録が増えています。とくに地方の企業や自治体でも使いやすい設計を意識しています。難しいデータ分析ではなく、“直感的にわかる”デザインにしたことで、多くの方に支持をいただいています。
苦い経験で得た“組織の覚醒”
──逆に、これまでの失敗体験はありますか?
2023年9月に奈良で大規模なオフラインイベントを開催したのですが、結果は約数千万円の赤字をだすことになりました。有名アーティストを招いたり、無料イベントにしたりと張り切りすぎてしまって…。でも、この経験で経営感覚が鍛えられ、組織としても強くなったと感じます。あの失敗があったから今があるというのは間違いありません。
失敗を成長と捉えられるかどうか
──組織運営で大切にされていることは。
弊社はフルリモートの会社なので、主体性がないと仕事が成り立たないんです。採用時には必ず「失敗経験」を聞くようにしています。その失敗を“自責”として捉えられる人は、成長が早い。たとえば、ある元社員が情報商材で60万円を失った経験を話してくれました。でも彼は「自分で選んで決めた結果」と言い切った。その姿勢を見て、即採用を決めましたね。
30代での上場を目指して──AIとSNSの未来
──今後の展望を教えてください。
30代のうちに奈良本社での上場を目指しています。現在は、AIを使ってSNS投稿を自動生成する新ツールを開発中です。写真を撮ってメモを添えるだけで、AIが投稿文を作成してくれる。地方企業の情報発信をもっと手軽にし、SNS運用のハードルを下げたいと思っています。課題はやはり人材と資金です。奈良という地域性もあり、採用や資本調達の難しさはありますが、それらも含めて挑戦ですね。
家族との時間が生みだすリフレッシュ
──最後に、プライベートでのリフレッシュ法を教えてください。
昨年10月に長男が生まれまして、今は彼と過ごす時間が一番の癒しです。まだ8〜9ヶ月ですが、ハイハイを始めてどんどん成長している姿を見るのが本当に楽しい。仕事で張り詰めた気持ちをリセットできる、とても大切な時間ですね。

