株式会社GIIP国際アドバイザリー 代表取締役 佐藤江司氏
GIIP国際アドバイザリー(GIIP国際会計事務所)は、ニューヨーク・東京・インドに拠点を構え、国際税務や会計、コンプライアンス支援を展開しています。20年以上にわたり日米双方で会計士として活躍してきた佐藤江司代表は、海外進出を目指す企業にとって心強い伴走者です。今回のインタビューでは、会社の理念やこれまでの歩み、社員への思い、そして今後の展望について伺いました。
会社の理念と事業の現状
――現在の事業内容や会社の理念について教えてください。
当社は「海外に挑戦する人を支える」という理念のもと、米国を中心に国際会計・税務、会社管理、コンプライアンスのサポートを行っています。米国・ニューヨーク州と日本双方の公認会計士資格を持ち、現地の規制に精通していることが強みです。
社名の「GIIP」はGlobal Initiative and Inter-action by Professionals(プロフェッショナルが世界的に主導して互いに協力する姿)の略で、グローバルに活躍するプロフェッショナルが集まり、互いに協力していく姿を表しています。大手ファームと比べれば規模は小さいですが、だからこそ柔軟に幅広いニーズに対応できるのが特徴です。海外進出前の準備から現地法人の管理まで、一貫して支援できる体制を整えています。
起業の経緯と大切にしている価値観
――起業された経緯や大切にしている考えをお聞かせください。
起業したのは2009年です。リーマンショック直後の混乱期に、計画性もないまま「自分でやってみよう」と決断したのが始まりでした。最初の5年はインドやトルコなど幅広い地域に挑戦しましたが、経験不足もあり人が離れるなどの苦労を味わいました。その後は米国事業にフォーカスし、現在の形(米国および日米サービス中心)に落ち着きました。今後は若手有望人材の活力を活かして、再び多国展開を目指すことも視野に入れています。
私の根底にあるのは「人と同じことをしない」という性格です。日本の市場が縮小していく中で、もっと多くの人がリスクを取って海外へ挑戦してほしい。そうした思いを持ちながら、自分自身も日本人の存在感を世界に示せるよう行動してきました。仲間と共に挑戦し続けることが、経営者としての誇りです。
主体性を重んじる組織づくり
――社員との関わりで意識されていることはありますか。
常に伝えているのは「主体性を持つこと」です。入社後しばらくは考え方を徹底して共有し、自ら動ける人材になってほしいと伝えています。その後は各自の能力に任せ、自由に挑戦できる環境を作るよう心がけています。
必要なスキルとしては、英語力と会計の基礎理解が基本です。ただし本当に価値があるのは、会社経営全体をマネージする視点を持てること。将来的には社会や経済の動向を読み解き、クライアントにより深いサポートを提供できる人材に育ってほしいと思っています。社員には「会計士」以上の役割を果たせる存在になってほしい。そのために日常的な会話や意見交換を大切にし、互いに学び合う文化を醸成しています。
――他に組織作り上で意識していることは何ですか。
“Surroundings”(自分の身の回りを取り巻く環境)を良い方向に常に変えていきたいと思います。お互い尊重し合えるクライアント、よい仲間としての従業員など組織メンバー、オフィスの環境・働く環境など、無理をしないで皆が目標を達成できるような組織化を目指しています。
世界を見据えた今後の展望
――今後の展望についてお聞かせください。
これまで米国事業を中心に歩んできましたが、今後は再び国際的に広がる可能性を模索しています。最近は米国以外の国への進出の相談もあり、自然な形での事業拡大を検討中です。無理に資金調達や買収を行うのではなく、必要とされるニーズに応じてオーガニックに成長していく姿勢を大事にしたいです。
AIなど新しい技術が会計業界にも変化をもたらしていますが、私たちは「人と人が信頼で結びつくサービス」を基盤に据え続けます。国際社会では常に新しいルールや規制が生まれますが、その変化を恐れるのではなく機会に変えていくことが使命です。企業が海外で成功するための“縁の下の力持ち”として、これからも柔軟に進化していきたいと考えています。
走ることで得るリフレッシュと新しい視点
――プライベートでの過ごし方について教えてください。
趣味はランニングと野外トレーニングです。ニューヨークの街を走る人々に混じって体を動かすと頭もリフレッシュされます。また、出張を兼ねて年に数回は日本やインドに足を運び、異なる文化に触れることも刺激になります。特にコロナ禍以降は途上国を訪れ、人々の暮らしに直に触れることで新たな視点を得ることが増えました。
こうした経験が仕事にも良い影響を与えてくれると感じています。経営は時に孤独ですが、旅先で得る出会いや自然との触れ合いが次の挑戦への原動力になります。これからも挑戦を続ける仲間と共に、国境を越えて挑戦する企業や人を支えていくことを楽しみにしています。

