CuoRelease 代表 廣田 左希子氏
福岡を拠点に、企業のリーダーから小学生~高校生、成人男女まで幅広い「人の成長」に向き合うコーチングを展開するCuoRelease(クオレリース)。代表の廣田左希子氏は、事業の失敗からの再起という自身の原体験を持ちながら、600名を超えるクライアントに寄り添い、「気づき」と「再選択」を引き出してきた、“当事者視点”のコーチだ。
倒産・負債・自責。そこから立ち上がった彼女だからこそ、誰よりも丁寧に、そして専門性を持って人に向き合う。
いま、後継者時代の経営者を中心に「廣田さんにしか話せない」と選ばれる理由を探った。
「個の成長は、組織の成長につながる」三層構造のコーチング
――現在の事業内容と特徴を教えてください。
CuoReleaseは「個に向き合うこと」を軸に、三層のコーチングを展開しています。
① 個人向け(BtoC)コーチング
迷いの渦中にいる方、人生の再スタートを切りたい方、目標達成をめざす方まで幅広く伴走します。「今日を生きたくない」と口にする方が再び前を向く瞬間に立ち会えるのは、私自身が暗闇を経験したからです。
② 子ども向けコーチング
小中高校生に自発性と自己肯定感を育む指導を行います。“出る杭は打たれる”ではなく、「自分の意見を言える」未来の大人を育てるため、学校現場でも授業を担当しています。
③ 法人・後継者向けコーチング
企業では、2代目社長・次期リーダー・管理職の支援が中心です。
外部コーチとして1on1と個性分析を組み合わせ、短時間でも本音に届く対話を提供。社員数10〜50名規模の企業で「ネガティブ理由の離職が減った」「リーダーが覚醒し、チームの雰囲気が活発になった」という声を多くいただいています。
研修講師として、メンタル・コミュニケーション・ハラスメント・新入社員など現場密着型の指導も行っています。
“当事者”である強さ――「答えを渡さず、可能性を信じ切る」
――大切にしている価値観は何でしょうか。
最も大切にしているのは「答えは全て本人の中にある」という姿勢です。
私はコンサルタントではありません。解を提示するのではなく、問いと通じて本人に“本当の答え”に気づいてもらう。そのためには、状況や感情を一段深く理解し、信じ切る必要がります。
私は、事業に失敗して多額の負債を抱え、「もう生きられない」と思ったことがあります。そんな私に最後に残っていたのは、「誰かの基準で生きていた自分への気づき」でした。その矛盾に気づいた瞬間、人生が動き始めたのです。
だからこそ、私は解決策を押し付けません。その人の中にすでにある“答え”に気づけるよう、問いを重ねていきます。
この姿勢が、企業のリーダーや後継者から「腹を割って話せる」「安心して本音を言える」と支持される理由だ。
「唯一無二の伴走者」を増やす
――現在の体制と、これから加わる仲間に求める資質を教えてください。
現在は私がすべての1on1を担当していますが、5年以内にコーチを5名育成する計画です。候補者は、私のコーチングで大きな変化を体験した人の中から現れると思っています。
求めるものはただ一つ。代わりのいない自分になる覚悟です。成果は、スキルだけでなく生き方から滲み出ます。相手の可能性を信じ切る視座を持てるか。肩書きよりも「この人が隣にいると前に進める」と思ってもらえる存在を、ともに育てたいです。
――最も大きな学びになった出来事を挙げるとすれば?
2016年に飲食店を開業しましたが、様々な問題が重なり短期間で撤退しました。同時進行で取り組んでいた仕事も失い、負債だけが残りました。
生きることをやめようと考えたとき、私は自分の中にある「母に認められないなら続けられない」という無意識の声に気づきました。母に私の事業を心から賛成してもらえていないことが潜在的に非常に気になっており、「早くやめたほうがいい」と潜在的に感じていたんです。それが現実を引き寄せていたと知った瞬間、人生が好転しました。
それ以降、私は誰かの基準ではなく、自分の意思で選ぶことに徹しています。そして、同じように、無意識の思い込みに縛られた人が気づき直して一歩を踏み出す瞬間に立ち会いたい——それがCuoReleaseを続ける理由です。
一人から百人、そして社会へ
――今後、挑戦したことや目標をお聞かせください。
まずは、私一人では月100名が限界という壁を越えること。1on1と個性分析を組み合わせた短時間・高密度の支援モデルを標準化し、全国に広げることが目標です。
さらにもう一つは、動物保護との連携です。将来的には福岡郊外に犬の保護施設を立ち上げたい。「命を守る循環」をコーチングから広げていきたいと思っています。
全てを受け入れて、前に進む
――普段は、どんなことをしてリフレッシュしているのでしょうか。
料理を作ることが大好きで、忙しくてもキッチンに立って料理を作ることが楽しみです。
――最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
私は、不妊治療と流産を繰り返した過去があります。
数百万円を投じ、心身ともに限界まで向き合いました。最初は「なぜ私だけ」という怒りと悲しみに暮れましたが、時間をかけて現実をそのまま受け入れることを学びました。私たち夫婦には、子ども以外のかたちで人に還元できる役割があるかもしれない——そう考えられるようになったのは、コーチングの「気づき」の力そのものです。
私はこれからも、当事者として、そして伴走者として――目の前の一人に誠実に向き合い続けたいと思います。

