PLEASURE 坂上 貴之氏
PLEASUREは、住宅を手がける地域工務店を中心に、業務設計や外注化の仕組みづくりを支援するコンサルティング事業を展開しています。前職で地盤改良工事の営業として多くの工務店経営者と向き合ってきた経験をもとに、「忙しさ」に悩む社長や現場の負荷を軽くすることをミッションに掲げています。本記事では、同社の坂上氏に事業への思いや今後の展望について伺いました。
工務店の“忙しさ”に向き合う業務設計コンサルティング
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
当社の主なお客様は、地域で注文住宅を手がけている工務店の経営者の方々です。かつて地盤改良工事の営業として工務店を回っていた際、とにかく皆さんが「忙しい」とおっしゃる姿を何度も目の当たりにしました。売上が少なくても大変、受注が増えても現場や事務が回らなくて大変という状況のなかで、社長も従業員も残業が増え、疲弊していく姿を見てきたんです。
そこで現在は、工務店の売上アップをゴールに据えつつ、その前提となる業務改善・業務効率化に重点を置いています。社長の時間をいかに空けるか、その空いた時間を生産性の高い仕事にどう変えていくかを設計するのが、PLEASUREの基本スタイルです。その手段として、クラウドワーカーなど外部パートナーへの業務委託を組み込んだ仕組みづくりも支援しています。
――どのような経営ビジョンを持っていますか。
長く同じ業界にいると「こういうものだ」と枠にはまりがちですが、私は異業種から住宅業界に入ったこともあり、その“当たり前”に違和感を覚えることが多くありました。その違和感を大切にして、業界に小さくてもイノベーションを起こしていくことが、自分のミッションだと思っています。
「売り込み」から「課題解決のパートナー」へ
――独立の経緯を教えてください。
もともと「いつか独立したい」と思っていたわけではありません。人材派遣・業務委託の営業、環境機器メーカーの営業、建設会社での新規事業立ち上げといったキャリアを経て、地盤改良工事の事業責任者として住宅業界に本格的に関わるようになりました。そのなかで、少数精鋭で頑張っている工務店が、属人化と長時間労働に苦しんでいる現実を知ったことが、独立を考える大きなきっかけです。
以前の私は、どちらかというと「自社の商品をどう売るか」という発想が強い営業でした。しかし、お客様の話を丁寧に聞き、課題や本当に欲しているものを理解できるようになってからは、「売り込み」ではなく「課題解決のパートナー」として並走する感覚に変わっていきました。その瞬間、お客様との関係性や仕事の質が大きく変わったと感じています。
――仕事をする上で大切にしている価値観は何でしょうか。
「豊かさ」です。人とのつながりの豊かさ、経済的な豊かさ、自己実現としての豊かさ――知らなかったことを知り、新しい可能性に気づき、チームで成長していく過程そのものに価値を感じています。前職時代に出会ったある同業の社長から、「お客様の期待を1ミリでも上回れたら感動が生まれる」と教わりました。その言葉は今でも指針になっており、常にお客様の期待を少しでも良い意味で裏切れるような提案を心がけています。
全国の工務店と人材に“豊かさ”を広げていく
――今後の展望を教えてください。
事業としての目標は、「業界のなかでメジャーな存在になること」です。売上規模を追うというより、困りごとを抱えた工務店さんの間で「業務改善や外注化のことならPLEASURE」と名前を挙げてもらえる状態をつくりたい。そのために、将来的には全都道府県にクライアントを持つことを一つのゴールにしています。
一方で、業界全体を見ると人口減少により住宅ニーズが減っていくことは避けられません。そのなかで「生き残り」をかける工務店が、自分たちの強みを活かしながら、魂が喜ぶ仕事を続けていけるように支援することが、自分の役割だと考えています。現在の課題は、自社の認知や集客です。ローカルエリアや紹介でのご縁が中心なので、コミュニティでの情報発信やオンラインセミナーなどを通じて、実際の声を聞きながら、AI活用やDXといったテーマも取り入れつつ模索しているところです。
プライベートでは、神社巡りとサウナがリフレッシュの時間です。独立して思うようにいかない時期に、半分「神頼み」のような気持ちで神社に行き始めたのがきっかけでしたが、今はお願いよりも感謝を伝えに行く場所になりました。また、サウナに入って何も考えない時間をつくることで、心と身体を整えています。
加えて、8年ほど前に受けた教育プログラムをきっかけに出会った若い世代に対して、ボランティアでコーチングを続けています。人の可能性を信じ、その一歩を後押しすることは、経営と同じくらい情熱を注いでいる活動です。これからも工務店やクラウドワーカー、そして関わるすべての人たちの可能性と豊かさを広げていけるよう、一歩ずつ取り組んでいきたいです。

