液体から泡を取り除く――独自技術で産業を支える鈴木隆之氏の視点
株式会社オーパスエンジニアリング 代表取締役 鈴木 隆之氏
液体の中に混ざる“泡”は、食品・医薬品・フィルム製造など多様な産業で品質を左右する重要な要素。その泡を効率的に除去する独自のサイクロン技術を開発し、世界に向けて製品を展開しているのが株式会社オーパスエンジニアリング代表・鈴木隆之氏です。今回は、研究継承の背景からAI活用の展望まで、その歩みと未来像を伺いました。
目次
独自のサイクロン式気泡除去装置とは
――まず、御社の事業内容と特徴について教えてください。
当社の主力製品は、液体に混ざった泡を取り除くサイクロン式の気泡除去装置です。コーティング液やフィルムの製造、食品、医療品、機械油など、気泡が混入すると品質に大きな影響が出る領域で活用されています。
超音波や薬剤を使った方法もありますが、当社は旋回流によって液体と空気を分離する独自技術に強みがあり、この方式を扱う企業は世界的にも多くありません。
製造は外部パートナーと連携しつつ、販売は国内外で直販と代理店を通じて展開しています。特に北米では代理店を通じて導入が広がっており、グローバルな産業課題に応える技術として成長しています。
研究者と歩んだ30年超の探究心
――気泡除去技術に携わるようになった背景を教えてください。
私は2代目として事業を引き継ぎました。もともとはITの分野で独立していましたが、父の高齢をきっかけに、2017年から事業運営を担うようになりました。
気泡除去装置は、法政大学の田中教授とともに30年以上研究が続いてきた領域です。実は、流体がつくる複雑な現象は流体力学解析だけでは解明しきれない部分が多く、未踏の領域がまだ多く残っています。その“解くべき課題”があること自体が大きな原動力になり、世界で唯一といえる技術をさらに磨きたいという思いにつながっています。
経営に込める――ITとAIを融合させた技術革新への挑戦
――現在、どのような技術的な挑戦を進めているのでしょうか。
従来の流体解析に加え、AIによるアプローチを組み合わせることで効率的な設計を可能にしようとしています。また、現状の装置は取り付け条件がシビアで、流量が変わると動作に支障が出ることがあります。ここにIoT・AIを組み込むことで、より幅広い産業環境に適応できる次世代モデルを開発中です。来年には新モデルを発表できるよう研究を進めています。
泡の問題は、電気自動車時代になっても、発電方式が変わっても、液体と気体が存在する限り必ず起こる現象です。だからこそ、長期的に社会へ貢献できる技術だと考えています。
少数精鋭を生かすリモート体制と採用観
――現在のチーム体制と、組織づくりで大切にしていることを教えてください。
メンバーは全員業務委託で、現在は3名ほどの少数精鋭で運営しています。流体解析は専門性が高いため、優秀な大学院生や専門人材と協力しながら進めています。フルリモート体制で、Slack上で今取り組んでいることや行き詰まりをリアルタイムに共有することで、離れていても“同じ研究室の空気感”をつくることを意識しています。
採用では、いきなり本採用ではなくインターンから始めることを重視しています。応募者の能力だけでなく、会社を信頼できるか、遠隔でも責任感を持って関わってくれるかを、互いに確かめながら進めたいと考えています。
技術で産業の課題を解き続ける
――今後の展望について教えてください。
気泡による問題は、どの産業でも将来的に避けられない課題だと思います。当社の技術は単純に見えて、実は非常に奥深い領域です。だからこそ、AIやIoTを活用して適用範囲をさらに広げ、将来の産業インフラに不可欠な技術へと育てていきたいです。
研究と開発を続けながら、世界中の製造現場で「泡の問題を解決できる技術」として役立ち続ける存在になりたいと考えています。
探究心を支える価値観と日常
――影響を受けた人物や価値観はありますか。
物理学者ニコラ・テスラを尊敬しています。彼の発明したテスラバルブは非常に美しく、私たちの領域とは異なる分野でありながら、創造性と探究心の象徴だと感じています。
現在は複数の仕事を掛け持ちしておりワークライフバランスは排除していますが、それだけ技術に向き合う緊張感が続いているということでもあります。
研究を重ね、より良い技術を社会に届けるために、これからも一歩ずつ前に進んでいきたいです。