株式会社コンフェクトワークス 代表取締役社長 伊賀 新 氏
スイーツ市場の飽和、原材料高騰、購買行動の変化――。店舗を構えるだけでは厳しさが増す時代に、伊賀新さんは2025年9月、北海道・札幌で菓子工房を立ち上げました。主軸は企業向けのOEM開発と製造受託。小ロットでも挑戦できる仕組みで、独自素材を持つメーカーやブランディングを重要視される企業の新商品づくりを支えています。職人としての経験と事業責任者としての視点を掛け合わせ、これからの菓子づくりの形をどう描くのか。現在地から未来像までを伺いました。
「作れない」を「売れる」に変える、OEM開発と製造の現場
――まずは事業内容を、改めてわかりやすく教えてください。
大きく2つあり、主軸は企業さまからのOEM開発と、そのまま製造を受託して納品することです。プライベートブランドの商品を作りたい、既存商品の量産化で売上を伸ばしたい、飲食店などでは人気メニューを物販化したいけれど設備がない、といった要望に応えています。
もう1つは、自社ブランドのオンライン販売や外部EC、 カフェや飲食店向けの卸販売も行っています。実店舗は持たない菓子工房として特注品の製造が中心です。
――どのようなお客さまからの依頼が多いのでしょうか。
いわゆるスイーツショップというより、お菓子を作っていない、あるいは作るノウハウをお持ちでない企業さまが多いです。
例えば、海藻の生産・販売をされているブランドが、海藻加工品に続く新しい展開として開発されたスイーツのアウトソーシング、メープルシロップのインポーターが自社のメープルを生かした物販菓子を商品化したい、ロースタリーカフェのコーヒーの出涸らしや、焙煎豆としての販売期限が過ぎてしまった未利用素材のアップサイクル商品の開発といったケースです。ブランディングを重要視した商品化のニーズは確実に増えていると感じます。
――御社の強みはどこにありますか。
一番は小ロットで開発・製造できる点です。裁断機や包餡機、ピロー包装機などを導入するOEM専門工場に依頼すると、クッキーなら1フレーバーで数千枚単位、包材も何万個単位ということが多く、試してみたい企業にとってはハードルが高いです。
まずは販売してテストマーケティングをしながら育てたい、という段階に寄り添うことと、クライアントこだわりのレシピへの再現性を重要視しているのが強みです。商品ジャンルも要望に応じて幅広く対応しますが、流通や日持ちの観点からは焼き菓子やチョコレートの実績が多く、生菓子であれば冷凍で納められる形も提案しています。
「店を持つ」だけではない。起業を決めた理由と、仕事観の変化
――起業に至った背景には、どんな問題意識がありましたか。
十数年パティシエとして働き、20歳の頃は将来パティスリーをやりたいという思いでこの道に入りました。ただ、市場は飽和し、コンビニやチェーンのスイーツの品質も上がり、わざわざ専門店で高価格の商品を買う動きは以前より弱まっていると感じましたね。
原材料高騰もあり、すべてを価格転嫁するには難しい現実もあります。単純に店舗運営だけで勝負するのは厳しい時代になり、複数の販路や収益の柱を持つ必要があると考えるようになりました。
――キャリアの中で、今の事業に直結している経験はありますか。
東京都内の企業でジュースブランドの事業責任者をしていた経験が大きいです。レシピ開発した商品を外注で作ろうとしたとき、ロットや包材、レシピの再現性の壁で簡単には実現できないことを実感しました。
そこで、自分が受け皿になり、小ロットで挑戦できる環境をつくれば、企業の商品開発の潜在的なニーズを掘り起こせるのではないかと思いました。事実、それまでやり取りのあった企業へそういった構想を共有したところ、是非商品化したいと言ってくださった方々が最初のクライアントとなってくださっています。
スマートフォンやSNSの普及で情報の伝達速度が上がり差別化が難しくなってきた昨今、ブランディングや独自素材など、如何にして独自性を見出すかを重要視する飲食ブランドが増えていますし、そこに応えられるパティシエの菓子製造の新しい事業のあり方を形にしたいと思いました。
――仕事をする上で、大事にしていることは何でしょう。
業界のトレンドを感じ続けることを意識しています。日常的にスイーツ店やカフェをはじめとした様々な飲食店に行くようにして情報をインプットし、それを商品開発や販促などの戦略のヒントにしています。
日々の気づきがそのまま提案力につながる感覚で、お客さまの「独自性を出したい」という思いを、具体的な商品として落とし込むために、常に消費者のニーズや話題となる傾向を取り込むようにしています。
札幌から“Made in 北海道”の発信と店舗展開へ
――今後3年で、どんな姿を目指していますか。
売上は3年後に今の5倍を目指しています。まずはOEMの受託件数を増やし、基盤を作る。その上でこの菓子工房をセントラルキッチンとして、札幌中心部で小規模で固定費を抑えられる、北海道ブランドのスイーツ店やカフェの店舗展開を構想しています。
――「次に仕掛けたいこと」があるとすれば何でしょうか。
すぐに取り組みたいのは、お土産ニーズに応える商品開発です。札幌は観光が盛んで、インバウンドも非常に勢いがあります。自社ブランドを、パッケージデザインも含めて「北海道産のお土産として選ばれるお菓子」に育て、その事例をもとに、北海道に限らず各地のお土産商品の開発ニーズにも広げていきたいです。
小ロットで試しながら売れる形に磨き上げることで、ブランドの挑戦を後押しできる存在であり続けたいと思っています。

