株式会社テイト微研 代表取締役 首藤 隆利氏
飲食店のグリーストラップやビルピット、下水処理の脱水ケーキなど、身の回りには、「匂い」を起点にした厄介な課題が数多くあります。株式会社テイト微研の首藤隆利氏は、微生物を用いて環境保全に取り組み、排便処理剤の開発や特許出願にもつなげてきました。本記事では、現場主義で積み重ねた知見と、これから挑むテーマまでを伺いました。
分解できない匂いに、微生物で答えを出す
――御社の事業内容を教えてください。
私は、微生物を使った環境保全に取り組んでいます。環境保全といっても幅は広いのですが、出発点は歯科医院の「石膏トラップ」でした。石膏トラップから硫化水素が発生していることに気づき、これを何とかできないかと動いたのがスタートです。
そこから家庭排水や厨房のグリーストラップの匂いなど、現場ごとの課題に向き合ってきました。さらにここ6年ほどは、防災用品としての排便処理剤にも取り組みました。
排便は、匂いも分解も難しい。研究所とも相談しつつ、意見が合わずに自分独自でやってみたところ、うまくいったという経緯があります。
――化学薬品では難しい匂いも、微生物なら分解できるのでしょうか。
匂いは、測定器でアンモニアや硫化水素などを追う話になりがちです。ただ、実際の現場では硫化水素だけではなく、低級脂肪酸のような要因もあり、化学薬品では分解しないものがあると知りました。
私自身、当初はその正体が分かりませんでした。だからこそ、現場で臭気の性質を見極め、微生物で分解できる道筋を作ることに意味があると感じています。
ビルピットも同様です。できることは分かっていても、実際に動かす業者を探すのが難しい。だから私は「現場主義」で、状況に合わせた使い方まで落とし込むことを大切にしてきました。
過去に300件ほどデータを取り、グリーストラップの大きさなどから必要量を計算する式を作る、といった地道な作業も重ねてきました。
気づきから特許へ、学び続ける経営観
――開発や研究を続けるうえで、大切にしている姿勢は何でしょうか。
33年半ほど前、環境系の会社に転職しました。当時、生ゴミ処理機を普及させようという流れがあり、「生ゴミは微生物で分解する」という意味が分からなかったところから、微生物学の本を手に取りながら、独学が始まりました。
その後、教育委員会と提携し、学校の生ゴミを毎日投入して1年間どうなるかを検証したこともあります。現場で起きていることを、観察して、考えて、試す。その積み重ねで、排水や匂いの領域へと広がっていきました。
石膏トラップの課題に気づいたのも、年末に修理へ行った現場で、掃除の作業を目にしたことがきっかけです。臭いの正体が硫化水素だと分かったとき、「なぜ今まで気づかなかったのか」と聞かれたこともあります。特別なことをしたというより、現場からの気づきを得たことが大きかったです。
研究所との連携と、粘り強いコミュニケーション
――現在の体制や、社内外の連携はどのようにされていますか。
今、社員は私一人です。業務も経営も作業も、全部一人で回しています。だからこそ、提携している研究所とのコミュニケーションはとても重要です。技術相談や人間関係に気を遣いながら、日常的にやり取りしています。
ただ研究所側には営業マンや営業技術者がいないため、「こういうケースはどう思うか」と電話しても「分からないですね」と返ってくることもあります。資料づくりも、現場の情報整理も、自分でやらなければ前に進まない。そこは苦労する点ですが、逆に言えば、自分が現場と技術の両方をつなぐ役割を担えているとも感じています。
温室効果ガスから孤独死現場まで
――これから実現したい目標や、社会的に挑みたいテーマは何ですか。
展望としては、家畜糞や脱水系、焼酎かすなどの領域に加え、温室効果ガスの問題にも踏み込みたいと考えています。CO2だけでなく、別のガスが家庭から出ているのではないかという議論も見つけ、大学と提携して研究していきたい。ただ資金の問題もあり、段階的に進めているところです。
また、アルテミス計画の提案も毎年続けています。月面や月面地下基地で排便できないか考えるなかで、「匂い」だけでなく、無臭のガスを出さない方法はないのか、と勉強を深めました。人間が生活できる環境を作るなら、微生物も生活できる環境を作れるはずだと考えています。
もう一つの挑戦として、孤独死現場の強い匂いへの対応があります。季節を問わず、1週間経っても匂いが消えないことがある。これをバイオの力で解決できないか、仕様書を作り、現場での実験を待っている段階です。
現場で立ち上る匂いの正体を自分の目と鼻で確かめ、考え、試し、解決できる形に落とし込む――その積み重ねを何より大切にしながら、これからも一つひとつの課題に向き合い、会社を前に進めていきたいと思います。

