株式会社ERUTLUC 代表取締役 鈴木 良和氏
2500名の生徒が通うバスケットボールスクールを中心に、100名規模の組織を率いる株式会社ERUTLUC。単に子どもに技術を教えるのではなく、「コーチを育てること」を事業の中心に据える独自性で成長を続けています。
代表取締役の鈴木良和氏は、指導者として、経営者として、これからのスポーツ教育に何を見ているのか。会社の歩みやビジョン、未来への挑戦についてお話をうかがいました。
目次
理念と事業内容——“バスケスクール”ではなく“コーチを育てる会社”
——まず、事業内容についてお聞かせください。
バスケットボールスクールを中心に、出張指導やキャンプなどのプログラムも展開しています。現在は2500名ほどの生徒が在籍し、100名ほどの指導者が関わっています。
スクール自体だけではなく、当社の特徴は「コーチを育てること」を最重要のテーマにしている点です。指導者の質と量が、その土地のスポーツ環境を大きく左右します。道具やコートはマイナスにはなりませんが、コーチ次第で子どもたちの経験は良くも悪くも大きく変わるため、まず“人”を育てることに力を入れています。
——コーチ育成を重視するきっかけは何だったのでしょうか。
大学時代に指導を受けた日高哲朗先生のような指導者が子どもたちのスポーツ現場にいたら、もっとスポーツが好きな子が増えるし、バスケットボールが上手な子どもが増えるだろうなと思ったことがきっかけです。
より多くの子ども達の成長に貢献するためには、自分が良いコーチになるだけでなく、良いコーチを増やすことに取り組んでいかなければならないと考えるようになりました。
子どもたちが「スポーツは楽しい」と思える場をつくるためには、まず指導者の質が重要です。地域のスポーツ環境を良くしたいという思いが事業の中心にあります。
指導者から経営の道へ——“一つのチームを強くする”から“指導者を育てる”へ
——もともとは学校の先生を目指していたとうかがいました。なぜスポーツ教育の道に?
最初は一つのチームを強くする指導者を目指していましたが、次第に「指導者を育てる側に回る方が、より大きな価値を生める」と思うようになりました。大学や大学院で学びながら育成に興味を持ち、そのなかでバスケットの派遣教師事業を思いつきました。
子どもを教えながらコーチも育てられる。それなら自分の理想とする環境づくりに近づけると考え、起業を決意しました。
——子どもたちとの印象的なエピソードはありますか。
学校に行けなくなった子がスクールを通じて居場所を見つけたり、一度バスケを嫌いになった子がまた好きになってくれたりしたことですね。
バスケットを通じて自己理解や考え方が広がり、高校でキャプテンになった子もいます。そうした瞬間に、この仕事の意味を強く感じます。
組織づくりと文化——“信頼・安全・ワクワク・成長”の順番がすべて
——社内ではどのような価値観を大事にしているのでしょうか。
クレドとして「信頼・安全・ワクワク・成長」の順番を明確にしています。
まずは「また来たい」と思ってもらうこと。信頼がなければ成長はありません。怪我を防ぐことも含めて、安全な環境をつくったうえで、楽しさを感じてもらい、その先に技術の成長があります。
——組織運営の課題はありますか。
人を育てる仕事なので、難しさは常にあります。同じレシピで同じ質のサービスがつくれるわけではなく、素材である“人”が毎回違うからです。当社はバディ制度で先輩コーチが新人を育てるスタイルなので、技能職でもあるため、外で実践しながらつかんでいく側面が大きい。そこが面白さでもあり、難しさでもあります。
——社員に求める素質は何でしょう。
誠実さと、人を育てる力です。どれだけ技術があっても、誠実でない人は上には上がれません。子どもや仲間に真摯に向き合える人と仕事をしたいと考えています。
未来への挑戦——NBA提携から障がい児支援まで広がるフィールド
——今後挑戦したいことを教えてください。
NBAとの提携が始まり、NBAバスケットボールスクールを日本で広げていくのが大きな挑戦です。また、車いすの子どもたちや障がいを持つ子どもたちがスポーツに触れられる環境づくりにも取り組んでいきます。
さらに、バスケに限らず、マルチスポーツとして地域のスポーツ体験の質を上げる事業にもチャレンジしています。スポーツが子どもたちの選択肢として“価値あるものだ”と、親御さんにも本人にも感じてもらえる世界をつくりたいと思っています。
個人的なスタイル——学び続ける姿勢がすべてをつくる
——最後に、仕事を続けるうえでのリフレッシュ方法や大切にしている習慣はありますか。
趣味はあまりないです。趣味から本当の会社を作り、その仕事が趣味の延長みたいなものなので。ただ、飲みに行くことは好きなので、それがリフレッシュ方法かもしれません。

