株式会社メタリティ 代表取締役 福田 登仁氏
株式会社メタリティは、ウェアラブルデバイスやスマートグラスを軸に、デバイス開発支援やDX化のコンサルティングなどに取り組む企業です。マニュアル制作からキャリアをスタートし、アニメーションマニュアル、AR、ウェアラブルコンピューティングと、常に「まだ世の中にないもの」に挑み続けてきました。本記事では、代表の福田登仁氏に、これまでの歩みや事業への考え方、そしてこれから目指す未来について伺いました。
「まだないもの」を形にする仕事の積み重ね
――現在の事業内容について教えてください。
もともとはマニュアル制作の会社として始めました。ただ、紙のマニュアルの多くは読まれることが少ないと感じて、1995年から読むマニュアルから見るアニメーションマニュアル制作に取り組みました。当時は周囲に同じことをやっている会社がなく、新しい土俵をつくる感覚でした。
その流れで2000年頃からウェアラブルコンピューティングの事業に取り組み、ヘッドマウントディスプレイを使った現場支援やマニュアル閲覧の仕組みや遠隔作業支援システムを開発し、その後2005年頃からは、ARを使った技術技能伝承や自動マニュアル生成など、ARエンジンの開発も行っています。
――現在はどのような立ち位置で関わっていますか。
前の会社を売却してからは、ハードウェアを自社で抱える形ではなく、スマートグラスなどのデバイス開発支援やDX化のコンサルティング、新規事業立ち上げのサポートを行っています。
もともとものづくりが得意なところもあって、シリコンバレーの企業や台湾メーカーと連携するなど、実際に形にする仕事にも引き続き関わっています。海外とのコネクションもあり、ウェアラブルデバイス関連を中心に、必要に応じて支援できる体制です。
「0→1」にしか興味がなかったキャリアの原点
――経営者になられたきっかけを教えてください。
もとから経営者を目指していたわけではありません。新しいものをつくることが好きで、0から1を生み出すことに興味がありました。サラリーマンという働き方が合わなかったというのも正直なところです。その結果として、自然に独立し、自分で仕事をするようになったという感覚です。
――仕事をする上で大切にしていることは何でしょうか。
「使えるものをつくりたい」という点です。昔から、形だけ整っていても実際には使われないものがすごく嫌で、マニュアルでもハードウェアでも、使う人がそれで便利になり、ハッピーになることを目指してきました。その感覚は今も変わっていません。
――ターニングポイントはありましたか。
かなり初期の頃ですが、コンピュータを使って仕事を始めたことです。1986年か87年頃、鉛筆一本でやっていた仕事をコンピュータに置き換えました。
当時はパソコン自体が高価で、Macも一式で数百万円する時代でした。お金がない中で借金して導入しましたが、結果としては正しい選択だったと思います。ドキュメントは紙でなくてもいい、むしろデジタルだからこそ自動化できる、という考え方がこの頃に固まりました。
上下関係をつくらないという組織観
――組織づくりで大切にしてきたことは何でしょうか。
上下関係はあまり好きではありませんでした。仕事として押し付けるのではなく、同じ目線でやりたいことをやってもらうようにしています。
やりたいことをやれば、100%の力が120%になる、逆にやりたくないことをやれば80%になってしまう――その感覚は社員に対しても、お客さまに対しても同じです。
――取引先との向き合い方にも、その考えは反映されていますか。
はい。どんなに有名な企業でも、仕事としてよい付き合いができないと感じた場合はお断りしてきました。
「誰とやるか」「どんな仕事をするか」を大事にしてきた結果だと思っています。
技術を見せないことが、価値になる時代へ
――スマートグラス領域で、今後目指している方向性を教えてください。
いま世の中に出ているスマートグラスは、技術先行だと感じています。展示会ではすごく見えるけれど、使う人の視点に立っていないものが多いように思います。
本当に必要なのは「使いやすい」「わかりやすい」ことです。技術は前に出すものではなく、裏側にあるべきだと思っています。
――これからのスマートグラスは、どのようなな存在になると考えていますか。
これまでは作業用途や教育用途、遠隔メンテナンスなど、現場向けが中心でしたが、これからはもっと一般の人が使える方向に落ちていくと思っています。最終的には、手に持つスマートフォンではなく、ハンズフリーで情報を扱える世界をつくりたいです。
――これからの挑戦を一言で表すなら、どのような言葉でしょうか。
「技術ではなく、体験から考えること。」です。誰でも迷わず使えるスマートグラスを形にすることで、次の「当たり前」をつくっていきたいと思っています。

