合同会社インテグリティ研究所 代表 村瀬 次彦氏
企業不祥事やハラスメントが社会問題として取り上げられる中、多くの企業がコンプライアンス体制の整備に取り組んできました。一方で、「制度はあるが現場では機能していない」「押し付けられている感覚が強い」といった声も少なくありません。
インテグリティ研究所は、そうした課題に対し「インテグリティ」という概念を軸に、制度と人の意識を結びつける支援を行っています。村瀬代表に2025年7月に起業した背景や、これまでのキャリア、そして今後の展望について話をうかがいました。
インテグリティを軸にした事業の現在地
――現在の会社の理念や事業内容について教えてください。
現在の事業は大きく4つの柱で構成しています。主な事業は講師派遣で、企業向けに講演会や研修を行っています。内容は企業倫理やインテグリティに関するもので、特に大企業からの依頼が中心です。
加えて、企業倫理に関するコンサルティングも行っています。経営において企業の中だけでは見えにくい課題について、社外の視点から整理し、助言や伴走を通じて支援しています。
また、今後は映像などのコンテンツ制作にも取り組みたいと考えており、コンサルティングなどにとどまらず、継続的に企業と関わっていきたいと考えています。
制度を整えるだけでなく、人間性を育み、人がなぜその行動を取るのかを理解し、主体的に自走できる状態を目指すことが大切です。
このことが、社名に込めた「インテグリティ」──倫理的原則に根ざし、信念と行動の一貫性を保ちながらリスクを引き受け、価値創出を通じて動的な完全性を保つ姿勢──だと考えています。
キャリアの積み重ねが導いた起業という選択
――これまでのキャリアと、経営者になったきっかけを教えてください。
製薬業界で約37年間働いてきました。そのうち25年間はキリン(現キリンホールディングス、協和キリン)で医薬品事業に携わり、自社販売体制の立ち上げからグローバル企業へと成長していく過程を経験しました。
最後の6年間はCSR部門を担当し、業界内で問題(ディオバン事件)となっていた企業と大学との利益相反状態や、不祥事対応に向き合ってきました。その中で、CSRやCSV、企業倫理は経営の根幹に関わる重要なテーマだと強く感じるようになりました。
2019年に退職後、大学院で学び直し、理論的な整理を行いました。その後、一般社団法人での役員経験や大学の講師、企業の倫理委員会委員として活動を継続し、理論と実践をつなぐ取り組みを続けています。これらの経験を踏まえ、インテグリティという概念を企業に啓発、浸透させるために、2025年7月に起業しました。
「オーバーコンプライアンス」は、日本の経済が凋落した要因のひとつです。学会への投稿論文や大学での講義、事業を通じて、失われた30年の再構築に微力ながら貢献したいと考えています。
組織の運営と人との向き合い方
――組織づくりや、社員との関係で意識していることはありますか。
現在は、起業したばかりということもあり、事業の基礎固めを行っています。規模は小さいですが、だからこそ理念を共有しながら価値を創造する点を大切にしています。
制度やルールで縛るだけではなく、なぜそれを行うのかを一人ひとりが自分で考え、納得して行動できる状態をつくることが重要だと考えています。これは企業支援でも同じで、制度と意識を切り離さず、両方を組み合わせていくことが組織運営の基本だと捉えています。
インテグリティが拓くこれからの展望
――今後の展望や、挑戦していきたいことを教えてください。
急成長を追い求めるのではなく、事業の中身を丁寧に磨き上げることを重視しています。「競争よりも共創」を軸に、これまでの経験とインテグリティの価値観を大切にしながら、結果として売り上げや人材の広がりにつなげていきたいと考えています。
表層的なコンプライアンスにとどまらず、企業倫理を本質から理解し、実践しようとする経営者とのつながりを深めていくことも重要なテーマです。日本の伝統的な企業文化と、欧米的な考え方をしなやかに統合し、持続可能な経営の在り方を探っていくことが今後の挑戦です。
日常のリフレッシュと向き合い方
――仕事以外での趣味やリフレッシュ法などあれば教えてください。
20年ほど前から、テレビや音楽の視聴を控え、車を手放すことで、自分の時間を確保し、健康にも気を配っています。そのため、徒歩や自転車で移動することにしていますし、妻との語らいも日課です(笑)。
また、趣味というと釣りでしょうか。前職では10年以上釣り部の部長をしていました。1日船に乗って釣りを楽しんで、釣った魚を捌いてお弁当に入れたりしていたのが、春夏の楽しみでしたね。今は研究に集中しています。

