「奇跡のりんご」を育てる情熱と哲学──自然と共に生きる農業のかたち

合同会社まっかなほんと 代表社員 對馬正人 氏

「安心・安全、そして美味しい」。

對馬農園が育てるりんごは、このシンプルな理念の結晶です。

無農薬・無化学肥料という、一般的には不可能とされてきた方法でりんごを栽培し、食の安全に対する現代社会のニーズに応え続けている對馬正人さん。

今回は、自然と共生する農業への情熱、家族への想い、そして未来への展望についてお話を伺いました。

無農薬で美味しいりんごを届けるために

――現在の事業と、こだわっている点について教えてください。

對馬農園では、主にりんごの栽培と販売を行っています。栽培の約9割がりんごで、他に少量の米やにんにく、毛豆なども手がけています。私たちが何より大切にしているのは「安心・安全」、そして「本当に美味しい」りんごを届けることです。

農薬も化学肥料も一切使わずにりんごを育てるのは、業界では“無謀”とまで言われる挑戦です。りんごは非常にデリケートで、栽培に失敗すると何年も影響が出てしまう。だからこそ、自然との対話を大切にしながら、毎日工夫を重ねています。

また、私たちは“見た目”よりも“味”を重視します。色づきを良くするための葉摘みも行わず、光合成を最大限に活かして糖度と風味を引き出した「葉とらずりんご」にこだわっています。

子どものために始めた挑戦が、使命に変わった

――もともと農業をされていたわけではないんですね?

はい、私はもともと公務員でした。

実家がりんご農家だったので、いつかは継ぐ必要があるとは思っていましたが、当時は「りんごだけでは食べていけない」と言われていた時代。なかなか踏み切れませんでした。

転機は、ニュースで「無登録農薬」の問題を目にしたことでした。「自分の子どもには、安心して食べられるものを食べさせたい」と強く思ったんです。その気持ちがすべての原点でした。

最初は家族のために始めた無農薬りんご作りでしたが、その安全性と美味しさが口コミで広がり、今では多くのお客様に愛される存在になりました。自分のためではなく「誰かのために」という想いが、結果的に仕事への誇りとやりがいに変わり、今ではこれが自分の使命だと感じています。

家族経営のなかで次世代へ伝える想い

――農園はご家族と一緒に運営されているのですか?

今は私と妻、そして息子の3人で運営しています。忙しい時期にはアルバイトの方にも協力してもらっていますが、基本は家族経営です。

特に息子には、次の担い手として、少しずつ知識や技術を引き継いでいってほしいと思っています。私が20年以上かけて得た経験を、一から伝えるのは簡単ではありません。

でも、ひとつひとつ丁寧に教えていくつもりです。彼の若い感性や発想力が農園に新たな風を吹き込んでくれることにも期待しています。

家族で働くからこそ、プライベートとの線引きも大切にしています。例えば、休日には仕事の話をしないようにするなど、バランスを取る工夫もしています。

日々の対話を大切にしながら、お互いを理解し合い、信頼関係を深めていける環境づくりを意識しています。

自然とともに、健康でいることが原動力

――ご自身が大切にしている価値観やリフレッシュ方法を教えてください。

「諦めないこと」そして「心と体の健康」が、私の信念です。これまでに何度も大怪我をしましたが、そのたびに立ち上がってきました。失敗で終わらせなければ、それは成功につながると信じています。

精神的な支えとなっているのは、哲学者・中村天風さんの教えです。「気持ちに勝つことの大切さ」を学びました。農業は自然が相手なので思い通りにならないことも多いですが、自分の気持ちに負けなければ前に進めます。

リフレッシュには、家族との旅行を大切にしています。これまで訪れたことのない土地に触れることで、新たな刺激や学びを得ることができますし、何より自然の中で過ごす時間が心を整えてくれます。

そうした時間が、また次の畑仕事への活力になり、新たな挑戦への原動力にもなっていく。

これからも自然と向き合い、家族と共に、より良い農業のかたちを模索し続けていきたいと思っています。

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