地域の食文化を未来へつなぐ。奈良発・八宝が描く“ローカルの力”

株式会社八宝 木村氏

奈良の地で50年以上にわたり、食を軸に事業を展開してきた株式会社八宝。和食店から始まり、日本酒居酒屋、うどん専門店、そして大和茶スイーツへと進化を重ねてきた背景には、「ローカルを発信する」という一貫した想いがありました。事業の変遷や組織づくり、そしてこれからの展望について、木村氏に話を伺いました。

事業の原点と、現在のブランド展開

――創業から現在まで、事業はどのように変化してきたのでしょうか。

創業はもう56〜57年ほど前になります。最初は和食の店舗からスタートしましたが、その店舗自体は現在は閉めています。ただ、その和食店で培った考え方や技術、いわばDNAのようなものは、今の事業すべてに引き継がれています。

現在は、奈良県内すべての酒蔵の地酒を集めた日本酒居酒屋「奈良の酒蔵全部呑み うまっしゅ」、北海道産小麦を使った自家製麺のうどん店「むぎの蔵」、そして大和茶を使った「大和茶大福専門店GRANCHA」「釜飯茶漬け GRANCHA」を展開し、一つの会社の中、地域で、複数のブランドを運営しております。本来であれば、成功したブランドをフランチャイズ展開する選択肢もあると思いますが、弊社は自社ビルや土地を活かしながら、あえて違うブランドを共存させ、お互いに助け合う形を取っています。

――評価の高かった和食店を閉めた理由は何だったのでしょうか。

和食店は、NTTのタウンページ表紙に選ばれたり、グルメサイトで表彰されたりと、外部評価も高い店でした。ただ、人手不足になっていく中で、あの業態を続けることは、働く人に無理を強いることになると感じていました。頑張ってくれている姿が一番見えているからこそ、「このビジネスモデルでは、きちんとした評価や給与で報いることができない」と思ったんです。そこで思い切って業態転換し、女性や高齢者も働ける「大和茶大福専門店GRANCHA」「釜飯茶漬け GRANCHA」を立ち上げました。製造工場と喫茶、販売を組み合わせ、働き方も含めて再設計しました。

経営者としての歩みと転機

――木村さんご自身のキャリアや、経営に関わるようになったきっかけを教えてください。

もともとは飲食部門の改革から関わり始めました。赤字が続いていた時期に現場を見直し、黒字化できたことが一つの転機です。その後、遊技場事業をやめ、飲食に一本化する大きな決断をしました。
事業の形を変えることに抵抗はありませんでした。高級料理も、うどん一杯も、誰かの心と体を満たすという意味では同じだと思っています。

人と品質で店をつくる──当社が大切にしていること

――御社の一番の強みは何だと思われますか。

やはり、従業員のモチベーションだと思います。
コロナ禍では売上が非常に厳しい状況が続きましたが、こちらから解雇した社員は一人もいませんでした。結果的に退職した社員はいましたが、いずれも自分の判断によるもので、会社や店を本気で思ってくれていたからこその決断だったと受け止めています。

制限解除後にお客様が一気に戻った際も、ギリギリの人数の中で、店長たちは休まず現場を支えてくれました。「今来てくれているお客様を断れない」と言って店を開け続けてくれたことは、今でも忘れられません。当社は、飲食業界の中では珍しく、勤続年数の長い社員が多い会社です。長年一緒に働いてきたメンバーが、現在は各店舗の店長として現場を任せることが出来ていることが当社の強みだと思います。

――商品づくりで大切にしていることは何でしょうか。

食材と品質へのこだわりです。
私は「おいしくないものは出したくない」という気持ちがとても強いです。食材価格が上がり、価格改定もさせていただいていますが、それには従業員の給料を上げたいという想いもあります。

居酒屋であっても、パックを開けて盛り付けるだけのものは使っていません。魚は市場や業者から仕入れ、手をかけるべきところは必ず手をかけます。スイーツについても、人工着色料は使わず、抹茶やほうじ茶は「飲むためのお茶」と同じレベルの大和茶を使っています。そのため、ショーケースには本物ではなくサンプルを並べています。日光や照明で抹茶が変色してしまうほど、余計な加工をしていないからです。
同業の方が召し上がって驚かれることもありますが、それが私たちの基準です。

忙しい今だからこそ、大切にしていること

――日々のリフレッシュ方法や、仕事以外で大切にしていることはありますか。

正直、今はあまり自分のための時間は取れていません。
以前はドライブをして海を見に行ったり、山登りにも興味はありましたが、現在は倫理法人会の活動に多くの時間を使っています。

コロナ前にご縁があって入会し、コロナ禍を乗り越えられたのは、その仲間の存在が大きかったと感じています。前向きな言葉しか飛び交わない環境に、何度も励まされました。その恩返しの気持ちもあり、現在は奈良県の会長を務めています。体力的には大変ですが、今は与えられた役割をしっかり果たすことが、自分にとっての大切な時間だと思っています。

Contact usお問い合わせ

    お問い合わせ内容
    氏名
    会社名

    ※会社・組織に属さない方は「個人」とお書きくだい

    役職

    ※会社・組織に属さない方は「一般」をお選びください

    メールアドレス
    電話番号
    どこでお知りになりましたか?
    お問い合わせ内容

    プライバシーポリシーに同意して内容を送信してください。