ビジネスと人権の架け橋をつくる――継青堂が描くサステナブルな企業の未来
合同会社継青堂 代表執行役 樋口 利紀氏
合同会社継青堂は、「ビジネスと人権」という分野に特化し、企業活動における人権尊重の取り組みを支援する会社です。企業を取り巻く環境が大きく変化する中で、人権への配慮は一部の先進的な企業だけの課題ではなくなりつつあります。本記事では、代表執行役の樋口利紀氏に、事業の内容や起業に至った背景、これから目指す社会の姿などについて伺いました。
ビジネスと人権に特化した伴走型支援
――現在の事業内容について教えてください。
当社は、サステナビリティの中でも「ビジネスと人権」という分野に特化したサービスを提供しています。
近年、投資家や取引先、消費者からの要請によって、人権をないがしろにするビジネスが成り立たなくなってきています。特にプライム上場企業など大企業では、人権尊重への対応が強く求められる状況です。
そうした中で、「具体的に何をすればよいのかわからない」という悩みを抱える企業に対し、アドバイスや伴走型の支援を行っています。単なる助言にとどまらず、企業の状況に合わせて一緒に考え、進めていくスタイルを大切にしています。
――具体的にはどのような支援を行っているのでしょうか。
例えば、人権デューディリジェンスの支援があります。サプライチェーン全体を通じて自社の事業活動が誰かの人権に悪影響を与えていないかを調査し、リスクを予防していく取り組みです。その結果や対策について、サステナビリティ報告書やコーポレートサイトなどで情報開示するところまでを含め、一連の流れを支援しています。
社会課題解決の経験を、企業の力に変えるために
――起業に至るまでの経緯を教えてください。
社会課題解決に関心を持つ原点となったのは、学生時代にパレスチナの難民キャンプを訪れたことでした。その後、SOAS(ロンドン大学東洋アフリカ学院)で国際人権法の修士号を取得し、国際人権NGOであるアムネスティ・インターナショナルで人権問題の解決に専門家として携わりました。
活動を続ける中で、次第に「企業や経済界の持つリソースが社会課題解決に向かえば、大きな社会的インパクトを生み出せるのではないか」と考えるようになりました。そこで、世界的なプロフェッショナルファームであるPwCコンサルティングに転職し、企業向けにサステナビリティや人権デューディリジェンスの支援を行いました。
ただ、NGOでの経験と、コンサルティングファームでのビジネス経験の両方を活かせる組織は多くありません。それなら自分でつくろうと思ったのが起業のきっかけです。
――事業を進めるうえで印象に残っている出来事はありますか。
創業からまだ1年半ほどですが、印象深い出来事の一つが、京都のNGOと共催したセミナーです。紛争被害者支援を行う団体と連携し、「紛争鉱物」をテーマに企業とNGOがどのように協力できるかを議論しました。
大阪や京都を中心に十数社の名だたる企業が参加し、活発な意見交換ができたことは、大きな手応えとして残っています。
ビジネスがもたらす人権侵害をゼロに
――今後、どのような未来を描いていますか。
会社を経営する以上、利益を上げることは重要です。ただし、売上だけを目的にするのではなく、社会にとって意味のある取り組みを続けたいと思っています。
まず取り組みたいのは、企業活動の中で知らず知らずのうちに生じてしまう人権侵害を防ぐことです。その代表的な課題が、紛争鉱物の問題です。
例えば、遠く離れた地域で採掘された鉱物が、武装勢力の資金源となったり、強制労働を伴ったりしたまま、最終的には私たちが使う製品に組み込まれてしまうケースがあります。そうした人権リスクに企業がどう向き合い、どのようにサプライチェーンを見直すべきか――その判断と取り組みを支援していきたいと考えています。
さらに将来的には、人権侵害を防ぐだけでなく、その先の段階にも関わっていきたいと考えています。
具体的には、NGOによる被害者支援の取り組みとも連携し、支援を必要とする人たちに、継続的にリソースが届く仕組みづくりに関わっていくことです。企業の活動と、現場で支援を行う団体の取り組みがつながることで、より実効性のある社会課題解決につながるのではないかと考えています。
家族と過ごす時間が原点に立ち返る瞬間
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
できるだけ家族と過ごすようにしています。会社勤めだったころと比べて、独立起業した今は家事や育児に割ける時間が増えました。現在は京都の郊外で暮らしており、家庭菜園をしたり、子どもと公園に行ったりと、自然の中で過ごす時間が多いです。また、20年以上続けているギターを弾くこともよいリフレッシュになります。思考が煮詰まっているときこそ、こうした時間によいアイディアが浮かんだりするので、リフレッシュすることも大切にしています。