宮崎から広がる応援の輪――「応援ちぐさ」が描く広報PR×デザイン経営

株式会社チーグッド・デザイン 代表取締役 関屋千草氏

宮崎を拠点に、広報PR視点を取り入れたブランド戦略とデザイン提案を行う株式会社チーグッド・デザイン。関屋氏は「真剣に頑張る人をデザインの力で全力で応援する」というミッションのもと、作るだけで終わらない伴走型支援を実践しています。本記事では、独立の背景や経営観、チームづくり、そして描く未来像について伺いました。

広報PRまで担う伴走型デザインの事業モデル

――現在の事業内容について教えてください。

宮崎県を拠点に、ブランド戦略から広報PRまで担うデザイン会社を運営しています。2020年にフリーランスとして起業し、昨年度法人化しました。現在は1人体制ですが、案件ごとにクリエイターを募り、チームでプロジェクトを進めています。

単発の制作よりも、長く伴走する企業が多いのが特徴です。私はディレクションやプロデュースを担当し、必要な技術者と連携しながらゴールまで導きます。完全に一人で完結するのではなく、目的に応じて最適な布陣を整える形です。

制作だけで終わらせないことを大切にしています。作る前段階から設計し、届けるところまで関わる――その一連の流れを担うことで、事業者のスピード感を高めたいと考えています。

テレビ局から県職員、そして独立へ――原点と決断

――事業を始められた当初の思いを教えてください。

もともとは宮崎のテレビ局で10年間、番組制作やテロップ制作に携わっていました。正しい情報を正確に、そしてスピード感を持って伝える。その現場で「伝える責任」と「伝え方の設計」を徹底的に叩き込まれました。

結婚を機に東京へ移り、Webデザインを学ぶためにスクールへ通いました。卒業のタイミングで声をかけていただき、制作ではなくインストラクターとして勤務することになります。初めて人に教える立場となり、ツールの使い方だけでなく、デザインの考え方を1対1で伝える経験を積みました。

その後、出産を機に現場を離れますが、東日本大震災をきっかけに再び宮崎へ戻ります。県の工業技術センターでデザイン職として採用され、7年間、中小企業のものづくり支援に深く関わりました。

事業者の相談に向き合う中で強く感じたのは、「ものを作ることがゴールになっている」という現実です。完成した後、どう広げるのか、どう売るのかで悩む方が多い。そこで私は、「なぜそれを作ったのか」という原点から一緒に考えたいと思うようになりました。制作のさらに前段階から関わりたい。その思いが、独立を決意したきっかけです。

――なぜ「広報PRもできるデザイナー」を目指したのですか?

独立を決めた直後にコロナ禍が訪れました。展示会は中止になり、これまでの売り方が通用しなくなったんです。全力で伴走するつもりで踏み出したのに、思うように支援できない現実に直面しました。

そこで学んだのが『広報PR』という手法です。それまでにも発信やツール制作は行っていましたが、本質的な広報PRはまったく違います。思いを言語化し、共感を生み、仲間をつくる。単なる宣伝ではなく、関係性を築くための戦略だと知りました。

「私がやりたかったのはこれだ」と腑に落ちた瞬間でした。作る前から設計し、届けるまで伴走する。必要なときに必要なものを適切に提供できる存在になる。その覚悟を込めて、『広報PRもできるデザイナー』として歩み始めました。

今は自らを「応援ちぐさ」と名乗り、全力で頑張る人を真剣に応援することを使命に掲げています。デザインは手法であり、目的は事業者の未来を前に進めること。その軸は、独立当初から変わっていません。

経営とデザインをつなぐ挑戦

――経営の道に進もうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

デザインは経営と切り離せないと気づいたことがきっかけです。金融段階から関わり、企業の軸を整える。そのプロセスにデザイン思考が必要だと感じました。

宮崎県が取り組むデザイン経営事業に関わる中で、数字だけでは測れない価値を整える面白さを知りました。経営者がどのような決断をしているのかを理解するためにも、自分自身が経営者になる必要があると考え、法人化を選びました。

――経営判断の軸となっている価値観を教えてください。

私の中でブレないのは、「信じた道を進む」という姿勢です。一度地元を離れたことで宮崎への思いがより強くなり、地方が元気になれば日本も元気になると本気で考えるようになりました。

判断基準は予算や見積もりだけではありません。事業者の熱量に触れ、対話を重ねる中でゴールの姿が描けたときに「やる」と決めます。「きっとなる」という信念を持ち、相手が信じた未来に自分の全力を乗せる。その結果として信頼が積み重なり、売上は後からついてくると実感しています。

――これまでのキャリアでターニングポイントとなった出来事は何ですか?

まず1つ目は出産です。結婚は前向きな変化でしたが、出産で現場を離れたときは正直怖さのほうが大きかったですね。3年ほどブランクが空くと、「自分はもう世の中に必要とされないのではないか」という不安が出てきますし、復帰しても何ができるのか分からないという気持ちもありました。

それでも、「〇〇ちゃんのママ」ではなく「関屋千草」として、もう一度自分を開花させたいと思ったんです。その覚悟が、東京から宮崎へ戻る決断につながりました。女性としての生き方を自分で選び直した瞬間だったと思います。

もう1つは、40歳のときです。県職員として働きながら、「このまま肩書きの中で生きていくのか、それとも自分の名前で勝負するのか」と問い続けました。40歳という年齢を迎えたとき、「80歳になった自分がわくわくしている姿が想像できるか」と考えたんです。そのとき、何も浮かばなかった。

そこから3年間、自問自答を繰り返しました。進むのか、やめるのか。最終的に出た答えは「自分を信じる」ということです。お金を稼ぐ手段は世の中にたくさんある。それならば、自分が信じた道を磨き上げる人生を選びたいと思いました。独立を決めたのは43歳。その決断が、私にとって大きな転機になりました。

信頼でつくるチームと人材観

――今後採用するとしたら、どのような人と働きたいですか?

クライアントを心から大切にできる人と働きたいと考えています。上下関係ではなく平等に接し、当たり前のことを丁寧に積み重ねられる人です。

「ありがとう」と言えること、約束を守ること、メールをすぐ返すこと。基本ができてこそ信頼が生まれると思っています。代表である私にも意見を言える関係が理想ですが、思いやりだけは忘れてほしくありません。

――仕事をする中で、支えになっている存在について教えてください。

私は思い立ったらすぐに動くタイプで、自分でも「常にトップギア」だと思っています。「GO」と決めたら走り出せるのですが、その勢いを冷静に見てくれる存在がいます。

基本的に表には出てきませんが、デザインへの理解がある中小企業診断士の方の力を借りながら、一つひとつの案件を丁寧に進めています。

私はどちらかと言えば右脳派なので、アイデアが先に走ることも多いのですが、その方は必ず「それをやったときのダメージはどうですか」と問いかけてくれます。リスクや影響を一つひとつ確認し、私がすべて答えられたときに初めて「では進みましょう」と背中を押してくれるのです。

表に立つのは私でも、下で手綱を握り、冷静に支えてくれる。その存在があるからこそ、安心して挑戦できています。一緒に進んでくれる仲間がいることの大切さを、日々実感しています。

地域を元気にする「居場所づくり」という構想

――今後の展望や新たな挑戦について教えてください。

人と人がつながり、気づきが生まれる場をつくりたいと考えています。宮崎にはスナック文化がありますが、肩書きや立場に関係なく本音で語り合える空間でもあります。その場を、新しいビジネスが行き交う居場所へ発展させられないかと構想しています。

週に数回集まり、月に一度は学びの機会を設ける。迷える社会人が語り合いながら視野を広げ、「明日会社に行くのも悪くない」と思えるような場をつくりたいのです。

これまで培ってきた人脈や手法を還元し、応援の輪を広げることが、将来的な自分の姿なのかもしれません。

――その構想における課題や考えている方向性はありますか?

課題は多いですが、一本化するつもりはありません。デザイン業は生涯続ける軸とし、居場所づくりは社会貢献のような余白として取り組みたいと考えています。

影響を受けた出会いと、走り続けるための整え方

――尊敬している方や影響を受けた出来事はありますか?

大きな転機になったのは、2018年に経済産業省が打ち出した「デザイン経営宣言」の流れの中での出会いです。当時県職員としてその普及に関わる中で、ミテモ株式会社代表の澤田哲也さんとご一緒する機会がありました。

澤田さんはデザイナーでもコンサルタントでもありませんが、地域の魅力を引き出し、本質を言語化して世の中に届ける力を持つ方です。その姿勢に触れ、デザインの捉え方も人としての在り方も大きく変わりました。

立場に関係なく誰に対しても平等で、否定も押し付けもしない。それでいて核心を突く。私にとって、今も最も尊敬する存在です。

――お休みの日のリフレッシュ方法を教えてください。

週に一度はサウナに行きます。常に10以上の案件が頭の中を行き来しているので、意識的に思考を止める時間をつくらないと脳が休まりません。一度リセットすることで、また前向きに動けるようになります。

最近はボイスレッスンも始めました。自分の声と向き合う30分間は、他のことを一切考えません。体が楽器のように響く感覚が面白く、終わる頃には頭がスッキリしています。整える時間を持つからこそ、また全力で誰かを応援できるのだと思っています。

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