ゲームで街に誇りを取り戻す──讃岐GameNが描く「創る力」の循環
一般社団法人讃岐GameN 代表 渡辺 大氏
香川県を拠点に、ゲームクリエイターのコミュニティ運営やゲーム制作、子ども向けプログラミング講座、地域イベントの主催などを行う一般社団法人讃岐GameN。代表の渡辺大氏は、「ゲーム」を通じて人と街をつなぎ、一人ひとりが自分の力を信じられる社会を目指しています。本記事では、活動の原点から現在、そして未来への構想までを伺いました。
目次
ゲームが人と街をつなぐ──讃岐GameNの現在地
――現在の事業内容と、その特徴を教えてください。
私は香川県を拠点に、ゲームクリエイターのコミュニティ運営を中心として、ゲーム制作、子ども向けのプログラミング講座、そして地域のお祭りの企画・運営などを行っています。特徴は、企業ありきではなく、コミュニティから自然発生的に広がってきた活動であることです。
――団体として大切にしている理念やビジョンは何でしょうか。
「一人ひとりが自分には作る力があると信じられる社会を、ゲームを通して作る」ことです。何かを生み出す体験を通じて自己効力感を育み、その感覚が街への誇りにつながっていくことを目指しています。
――業界内での強みはどこにあると感じていますか。
利益至上主義ではなく、共感をベースに技術者が集まっている点です。また、「お祭り×ゲーム」という独自のフォーマットを持ち、地域ならではの新しい土壌を生み出せていることも強みだと思っています。
その象徴的な取り組みが、商店街を舞台に開催しているゲームイベント「SANUKI X GAME(https : // www.sanukixgame.com/)」です。
地域の商店街全体を会場に、ゲーム体験やクリエイターとの交流、リアルとデジタルを横断する多彩な企画を展開。街そのものをフィールドに見立てた“ゲームのお祭り”として親しまれています。
ゲームをきっかけに世代や立場を越えた人の流れが生まれ、商店街には新たなにぎわいが広がります。創作文化と地域が交差する場として、回を重ねるごとに存在感を高めてきました。
原点は「仲間がほしい」──渡辺代表の歩みと価値観
――活動を始めたきっかけを教えてください。
2017年に、純粋にゲーム制作の仲間がほしいという思いからコミュニティを立ち上げました。その後、子ども向け講座などの行政関連の仕事が安定し、約4年前に法人化しました。
――キャリアの中で印象に残っている出来事はありますか。
21歳のときのインド一人旅です。タクシードライバーが自国を卑下する姿を見て、とても悲しい気持ちになりました。後に、日本の地方出身の若者が地元を否定する姿を見たとき、その記憶と重なり、今の活動の原動力になっています。
――大切にしている価値観を教えてください。
「やりたいことしかやらない」というスタンスです。無理やりやらせるのではなく、ワクワクする感覚を持ち続けることを大切にしています。
いい意味でいい加減──部室のような組織運営
――組織体制について教えてください。
社員はいません。私自身も本職は医師です。実力のある外注先やコミュニティメンバーで構成されていて、感覚としては部活やサークルに近いですね。
――メンバーの主体性を引き出すために意識していることは何ですか。
判断基準は「面白いかどうか」です。私は調整役に徹し、クリエイターがやりがい搾取にならないよう、報酬や関係性のバランスを意識しています。
――どのような雰囲気の組織でしょうか。
上下関係のない、大学の部室のような雰囲気です。同じ目的を持ったプレイヤー同士が集まっている感覚ですね。
「変なもの」を真剣に──これからの挑戦
――今後、挑戦していきたいことを教えてください。
3Dプリンターや溶接、電子回路などの技術を持つ人たちと合流し、独自のコントローラーを使ったゲーム開発に挑戦したいです。例えば、うどん切り機をコントローラーにするような発想ですね。
――業界の将来についてはどう見ていますか。
デジタルだけのゲームは飽和していますが、「変なコントローラー」のようなハードとの組み合わせには、まだ可能性があると感じています。
――現在感じている課題はありますか。
医療やリハビリ用ゲームのニーズはありますが、保険制度の関係でビジネス化が難しい点です。まずは「面白そう」という動機で作り、そこから新しい形を探っています。
生まれた場所を誇れる人生へ
――経営において大切にしている信条を教えてください。
自分が生まれた場所を「幸せな場所だった」と思える感覚を大切にしています。好奇心を失わず、心の声に従って羽ばたく背中を押したいですね。
――リフレッシュ方法や、経営以外で情熱を持っていることは何でしょうか。
ゲストハウス運営や他分野の人との交流です。本職である医師としての活動や、高校生など次世代の若者を海外へ連れ出し、未知の体験を共有することにも力を注いでいます。
これからも、ゲームを通じて人と人、人と街がゆるやかにつながり、一人ひとりが自分の力を信じられる場所をつくり続けていきたいと考えています。