変化に適応し続ける美容室経営――“コンセプトを持たない”という戦略の真意
株式会社ALL THE RAGE 代表取締役 及川 智詞氏
美容業界において、確固たるコンセプトやブランドを掲げることは一般的です。しかし株式会社ALL THE RAGEは、あえて「コンセプトを持たない」という独自のスタンスを貫いています。その背景には、時代の変化に柔軟に対応し続けるための明確な意思があります。本記事では、代表取締役・及川智詞氏に、事業の特徴や経営観、今後の展望について伺いました。
変化を前提とした経営戦略
――現在の事業内容や特徴、強みについて教えてください。
営業所として店舗運営を行っていますが、特徴としては「コンセプトを持たないこと」をコンセプトにしています。美容業界では「これがうちの強みです」と打ち出すケースが多いですが、それを固定してしまうと、時代のニーズが変わったときに対応できなくなると考えています。
そのため、新しい技術やトレンドが出てきた際には柔軟に取り入れ、必要であればメニューや価格、打ち出し方も変えていきます。極端に言えば、店名すら変えてもいいというくらい、固定概念に縛られない姿勢を大切にしています。
――会社としてのビジョンについて教えてください。
ビジョンも同様に、お客様が求めるものを常に提供し続けることです。美容業界では、過去に学んだ技術やスタイルに固執しがちですが、それでは時代遅れになってしまいます。
これまでの積み重ねは大切にしつつも、新しい技術や価値を積極的に取り入れ、常に業界の最前線で戦える状態を維持することを目指しています。
独立の背景と経営判断の軸
――経営者になられたきっかけを教えてください。
独立前に働いていた店舗では、福利厚生などの労働環境に課題がありました。年齢を重ねるにつれて将来への不安を感じるスタッフも多く、改善を求めても変わらなかったため、自分でやるしかないと考えました。
ただ、計画的に独立を目指していたわけではありません。退職を検討していたタイミングで、周囲のディーラーや関係者が動いてくれ、気づけば店舗の準備が整っていました。自分の意思というよりも、環境に背中を押される形で独立に至ったのが実情です。
――経営判断の軸について教えてください。
まず最優先となるのは、利益が出るかどうかです。どれだけ良い取り組みでも、会社としてプラスにならなければ継続はできません。その上で、スタッフが楽しんで取り組めるかどうか、そして最終的にお客様の満足につながるかどうかを判断基準としています。
この「利益」「スタッフ」「顧客」の三つのバランスを見ながら意思決定を行っています。
少人数組織だからこそのコミュニケーションと採用観
――社内コミュニケーションで大切にしていることは何ですか。
現在は少人数の組織のため、日常的に自然とコミュニケーションは取れています。その中で意識しているのは、新しい取り組みを進める際に独断で決めないことです。新しい施策やサービスの話が出た場合には、必ずスタッフと共有し、意見を聞いた上で方向性を決めています。
――採用で重視しているポイントは何でしょうか。
やる気や美容が好きであることは前提ですが、最も重視しているのは人間性やキャラクターです。技術は後から教えられますが、性格や雰囲気は変えられません。既存のお客様との相性が良く、可愛がられる存在であるかどうかを見ています。
また、美容室ではお客様との会話の幅が広く、時には扱いが難しい話題も出てきます。そうした場面で、空気を読みながらうまく対応できる対話力やスルースキルも重要です。年齢に関係なく自然にコミュニケーションが取れることも大切な要素です。
新たな挑戦と市場への広がり
――今後の展開について教えてください。
現在、美容室事業に加えてオリジナルのヘアケア商品の開発・販売も行っています。シャンプーやトリートメントなどの新商品を開発しており、今後はECを通じて本格的に販売していく予定です。
特にAmazonなどのプラットフォームを活用し、全国に向けた展開を進めていきたいと考えています。
――その中での課題や取り組みについて教えてください。
EC展開はまだ本格的に取り組んだことがないため、課題は実際に進めながら見えてくると考えています。ただし、重要になるのは広告戦略です。どのターゲットに対して、どのチャネルで、どのように届けるかを試行錯誤しながら最適化していく必要があります。
商品自体の品質には自信があるため、あとはどのように広めるか。LPやSNSなど複数の手法を試しながら、効果的な方法を見つけていく考えです。
独自の発想力と日常からのインスピレーション
――影響を受けた人物や出来事について教えてください。
特定の人物から影響を受けるというよりも、自分で新しいものを生み出すことを重視しています。市場を見て「まだ誰もやっていないこと」を見つけるのが得意で、いわゆるゼロからイチを作ることに価値を感じています。
実際に、業界の常識に逆らった商品開発で大きな反響を得たこともあります。一般的には避けられている表現や発想をあえて取り入れることで、話題性を生み出してきました。
――最後に、リフレッシュ方法について教えてください。
映画鑑賞が主なリフレッシュ方法です。作品を楽しむだけでなく、そこから発想やインスピレーションを得ることも多くあります。日常の中でも仕事と向き合う時間が多いですが、映画を見る時間が思考を整理するきっかけになっています。