相続と生前対策で、困る前の安心を地域へ届ける

行政書士キズナ法務事務所  代表 小嶋秀和 氏

行政書士キズナ法務事務所は相続や生前対策を中心に、地域に根ざした支援を行う行政書士事務所です。代表の小島秀和氏は、長年不動産業界で経験を積んだ後、50歳を機に独立。相続手続きだけでなく、認知症による資産凍結対策や空き家の相談にも向き合いながら、相談者一人ひとりとの信頼関係を大切にしています。今回は、事務所の特徴や独立の背景、仕事に込める思いについて伺いました。

相続に寄り添う専門支援

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

当事務所の特徴は、大きく二つあります。一つは、行政書士として相続に特化していることです。相続を扱う士業の方は多くいらっしゃいますが、個人事務所で相続だけに絞っている方は、私の周りではあまり見かけません。私自身、相続と生前対策、特に認知症による資産凍結対策に集中して取り組んでいます。

もう一つは、前職で不動産の仕事をしていた経験を生かせることです。相続の相談を受けていると、実家や空き家をどうするかという話が必ず出てきます。高齢の親御さんが施設に入ったり、相続が発生したりすると、空き家の問題が生じることがあります。そのため、開業して3年目に宅建業の免許も取得しました。相続の相談から、不動産の処分や売却の仲介まで、必要に応じてワンストップで対応できる点は強みだと考えています。

――理念やビジョンに込められている思いについて教えてください

大きなものを掲げているわけではありません。ただ、相続やお金の問題、認知症による資産凍結で困っている方が実際に多いことを、この仕事を通じて実感しています。そうした方々に寄り添い、力になりたいという思いで日々動いています。

一度きりの人生を仕事に込めて

――経営者になられた経緯を教えてください。

前職では住友不動産に28年在籍し、オフィスビル、マンション、ハウジング事業、仲介販売など、事業部門を一通り経験しました。本体で事業部長を務めたこともありますし、縁があり関係会社の社長も経験させていただきました。50歳になったことを機に、一度きりの人生なので、自分のやりたいことをやりたいと思うようになりました。もともとこの仕事には興味があり、行政書士の資格も取得したことから、独立することを決めました。

独立するときは、期待よりも不安の方が大きかったです。金銭面だけを考えれば、会社に残った方がよかったと思います。それでも、自分の人生を考えたときに、お金ではなく、人の役に立つ仕事を自分のためにやりたいと思いました。妻にも、50歳で定年して、あとは悠々自適に暮らすのと同じ感覚で起業すると話しました。最悪、収入がゼロでもいいという覚悟を持って独立しました。

――仕事をする上で大切にしている価値観は何でしょうか。

経営判断の軸にしているのは、お客様との信頼関係です。相続の仕事は、お客様の資産という非常に大きなプライバシーに関わります。ですから、儲かるかどうか、手間がかからないかどうかではなく、自分を信用していただけるかどうかを一番大切にしています。どれだけ大きな案件であっても、信頼関係を築く自信が持てない場合は、お断りすることもあります。反対に、金銭的に難しい方であっても、本当に困っていて信頼して頼ってくださる方であれば、対応することもあります。

任せる力と担う覚悟

――仕事を進めるうえで、大切にしていることを教えてください。

基本的には一人で事務所を運営しています。家内に手伝ってもらうことはありますが、人を使って大きく広げていくつもりはありません。その分、必要に応じて外部の専門家や業者の方に仕事をお願いしています。外部の方とは、従業員ではなく対等なパートナーとして関わっています。お互いにメリットがないと長続きしませんので、相手を尊重し、条件についても基本的には先方の希望を受け入れるようにしています。そのうえで、きちんとした仕事をしていただくことを大切にしています。幸い、これまで良い方々に恵まれており、仕事をお願いして厳しいと感じて関係をやめたようなことはほとんどありません。

業務の切り分けとしては、登記は司法書士の先生に、税務申告は税理士の先生にお願いしています。不動産の売却でも、遠方の案件や客付けの部分など、一人では対応しきれないところは知り合いの業者にお願いしています。資格や業際の関係で自分が行えない部分、または本業と並行して一人では対応しきれない部分を切り分けて依頼している形です。

もともと前職時代から、自分でやった方が早いと考えるところがありました。注文住宅の営業をしていた頃、分業体制の中で設計担当や工事担当に依頼することに苦労した経験があります。その後、自分で設計に関わってみると、自分でやった方が早いと感じたことがありました。その経験もあり、起業してからは、できるだけ自分で調べ、勉強し、対応するという姿勢で仕事をしています。

早めの備えを地域へ届ける

――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。

新しい挑戦というよりは、今の形を大切にしながら続けていきたいと考えています。開業して7年ほど経ち、地元密着で取り組んできたことで、少しずつ地域の方々にも知っていただけるようになってきました。事務所の周辺の狭い範囲を掘り下げて活動してきたことで、問い合わせも増えてきたように感じています。開業当初は、生前対策に力を入れていたこともあり、セミナー講師も年間30件ほど行っていました。生涯学習センターや公民館、介護施設、地域包括支援センター、社会福祉協議会などから依頼をいただき、遺言による揉め事防止や、家族信託、後見契約による認知症の資産凍結対策についてお話ししてきました。実際には、人は困ってから動くことが多いため、亡くなった後の相続手続きや、資産凍結が起きた後の相談も多くあります。ただ、事後の対応には限界があり、もう少し早く声をかけていただければ、もっとできたのにと悔しく思うこともあります。そうした方が一人でも少なくなればと思い、講演活動にも取り組んできました。

これからも、目の前の仕事を一つひとつ丹念にこなし、初心を忘れずに続けていきたいです。

楽しむ時間が仕事を支える

――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。

昔からウインドサーフィンをしています。今は、ウインドサーフィンの発展形であるウィングフォイルをやっています。事務所も海岸から歩いて5分以内の場所にあるので、風が吹くと海に行き、風が吹かないときに仕事をするような生活です。以前は定休日だけ休むという考え方でしたが、最近はメリハリをつけるようになりました。仕事ができる日に集中して仕事をして、空き時間を作れるだけ作る。天気予報を見ながら、風のある日はリフレッシュの時間に充てています。

一人で仕事をしているからこそ、自分でスケジュールを組みながら、集中する時間と楽しむ時間を切り替えています。長く続けていくためにも、そうした時間の使い方を大切にしています。

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