新体操の価値を再定義し、未来へつなぐ――ミライポップ・アカデミーが描く持続可能なスポーツのかたち

特定非営利活動法人ミライポップ・アカデミー 代表理事 白土祐史氏

新体操を通じて子どもたちの成長を支えながら、持続可能な運営モデルの構築に取り組むミライポップ・アカデミー。地域に根ざしたクラブ運営からスタートし、現在では100名以上が通う規模へと発展しています。本記事では、代表理事の白土祐史氏に、事業の背景や強み、組織づくりの考え方、そして今後の展望について伺いました。  

地域から始まった新体操クラブと法人化の背景  

――現在の事業内容について教えてください。

事業の中心は新体操教室の運営です。もともとは母が1987年に立ち上げた「白土新体操クラブ」が母体で、地域の子どもたち5~6人からスタートしました。長年続ける中で規模が拡大し、現在では常時100名以上が通うクラブになっています。延べでは4,000人ほどが在籍してきました。

私はもともと会社員として広告やIT、ブライダルなど複数の業界を経験し、その後事務局としてクラブ運営に関わるようになりました。保護者対応や環境整備、設備導入などを進める中で、個人事業のままでは継続が難しいと感じ、2020年にNPO法人としてミライポップ・アカデミーを設立しました。組織化することで雇用や会計、運営体制を整え、持続可能な形に移行することが目的でした。

――設立当初はどのような状況だったのでしょうか。

設立直後にコロナ禍に直面し、練習も対面指導もできない厳しい状況でした。その中で、Zoomを活用したオンラインレッスンを開始しました。スポーツ分野ではまだ珍しい取り組みでしたが、結果として延べ1,600人ほどが受講するまでに広がりました。環境の変化に合わせて柔軟に対応できたことは、大きな経験になっています

競技と経営、両輪で支える新体操クラブの強み  

――他のクラブにはない強みはどのような点にありますか。

大きくは「競技としての新体操」と「経営としての新体操」の両方を見ている点です。競技面では全国大会に出場するなど実績を積んでいますが、それだけでなく、持続可能なビジネス構造や組織設計を重視しています。

多様な人材が関われる環境づくりも特徴です。できるだけ学生や主婦、副業の方などさまざまな立場の人が働きやすい体制になるよう意識しています。また、保護者が安心して子どもを通わせられるよう、防犯やハラスメント対策などにも配慮しています。

さらに、社会的な価値も意識しています。例えば、ウクライナから避難してきた子どもたちに向けて無料の新体操教室を実施しました。スポーツ教室の枠を超え、社会貢献につなげていくことも重要だと考えています。

多様な人材と向き合う組織運営  

――組織運営で大切にしていることを教えてください。

多様なメンバーがいるため、コミュニケーションの工夫が欠かせません。対面だけでなく、オンラインミーティングやグループウェアを活用し、情報共有の漏れがないようにしています。

また、業界的にマニュアルが整っていない部分も多いため、最低限の業務マニュアルを整備しています。属人的になりがちな指導現場を改善し、誰でも働きやすい環境をつくることが、結果として組織の安定につながっていると思います。

新体操の価値を高める挑戦  

――今後の展望について教えてください。

新体操を「成長産業」として発展させていきたいと考えています。競技としての魅力だけでなく、選ばれる環境づくりや職業としての可能性を広げていくことが必要です。

現状では、新体操で生計を立てるのは簡単ではありません。審判などの仕事も報酬が低く、ボランティアに近い状況が多いのが実情です。だからこそ、適正な対価を支払う仕組みをつくり、「新体操で仕事をしている」と胸を張って言える環境を整えたいと考えています。

子どもたちにとっても、将来の選択肢として新体操が成立するようなモデルをつくることが目標です。

非効率の中にある価値を伝えていく  

――現在向き合っている課題は何でしょうか。

新体操の価値をどう定義し、社会に伝えるかという点です。華やかなイメージの一方で、実際は地道な努力の積み重ねの競技です。効率やスピードが重視される時代においては、その価値が伝わりにくい側面もあります。

しかし、非効率で時間がかかるからこそ、人間らしさや成長の本質があると考えています。反復練習や失敗の積み重ねが演技となり、人に感動を与える。このプロセスこそが新体操の本質です。

継続力や自己管理能力、表現力など、人として重要な要素を育むことができる点も大きな価値です。これらをしっかり言語化し、発信していくことが今後の課題です。

想定外に向き合うための経営の軸 

――読者へのメッセージをお願いします。

想定外の出来事は必ず起こるものだと考えています。重要なのは「何をやるか」ではなく、「なぜそれをやるのか」という軸を持つことです。この軸があれば、状況が変わってもブレずに進むことができます。

また、継続する力も非常に重要です。地道で泥臭い取り組みを積み重ねていくことが、結果的に組織を支えます。効率やスピードが求められる時代ですが、あえて時間をかけることにも価値があると感じています。

新体操を通じて、人間らしい成長の価値を届けていく。その思いを大切に、これからも挑戦を続けていきたいと考えています。

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