“かかわるすべての人の笑顔のために”――O.N.Gが築く共感型の事業づくり

O.N.G株式会社 代表取締役 大野木 宏太氏

美容室をはじめ、まつ毛サロンやヘッドスパ専門店、巻き爪矯正院、プリン専門店など、多角的な事業を展開するO.N.G株式会社。「かかわるすべての人の笑顔のために」という理念を軸に、新しい価値や体験を生み出し続けています。事業拡大の過程で組織づくりの難しさに直面しながらも、再び“人の心”に向き合う経営へと舵を切った大野木氏。今回は、事業への考え方や組織づくり、今後の展望について伺いました。

理念を軸に広がる多角的な事業展開

――現在の事業内容を教えてください。

美容室を中心に、まつ毛のアイラッシュサロン、ネイルサロン、ヘッドスパ専門店、巻き爪矯正院、プリン専門店など、複数の事業を展開しています。

売上としては美容事業が中心になりますが、当社は「この事業を大きくしたい」という考え方ではなく、「かかわるすべての人の笑顔のために」という理念に共感してくれる人たちと一緒に成長していきたいという想いを大切にしています。

そのため、収益性だけを見て事業を広げるのではなく、「一緒にやりたい」と言ってくださる方が現れた事業が自然と広がっていく形に近いですね。

最近では、スタッフ自身が「やってみたい」と手を挙げ、事業の垣根を越えて挑戦するケースも増えています。美容師として働きながらプリン製造に携わるなど、一人ひとりの挑戦や多様な働き方を尊重しながら、新しい価値を生み出していける環境づくりを意識しています。 

――社名「O.N.G」に込めた意味を教えてください。

O.N.Gは「オンゴーイング」に由来しています。

”O”には「一歩踏み出す」、”N”には先祖や次の世代への感謝、”G”には人や想いを繋げ広げていく、という意味を込めています。

挑戦する勇気や、一歩踏み出す大切さを次の世代へ繋げていきたいという想いがあります。

――事業を拡大する上で大切にしている考え方は何ですか?

私は「大きくする経営」ではなく、「大きくなる経営」を大切にしています。

もちろん目標から逆算して考えることも重要ですが、利益だけを追いかけると、人の心が後回しになってしまう。実際に巻き爪事業の方が利益率は高いのですが、だからといってそこだけを無理に広げようとは考えていません。

目の前のお客様やスタッフが笑顔になり、その積み重ねの先に結果として会社が成長していく。その状態が理想だと思っています。

――御社ならではの強みはどんなところですか?

正直、「これが強みです」と言えるものはないと思っています。なぜなら技術やサービス単体で見れば、もっと優れた会社はたくさんあると思うからです。

だからこそ、理念や価値観そのものを会社の強みにしていきたいと考えるようになりました。「こういう考え方の会社だけど、一緒に働きたいと思ってくれる人はいますか?」という姿勢ですね。そういった意味では、理念や人との向き合い方、事業同士が支え合う文化は、当社らしい強みだと感じています。

技術やサービスだけではなく、どんな想いで仕事をしているのか。その部分に共感してくれる方々と、一緒に会社をつくっていきたいと思っていますし、どんな仲間達と一緒に学び一緒に成長していくのか?が大切だと思っています。

組織崩壊を経験して見直した“人の心”を大切にする経営

――経営に対する考え方が変わったきっかけを教えてください。

コロナ後の時期に、会社を存続させるため売上や利益を優先しすぎていた時期がありました。

その頃は店舗数もスタッフ数も増えていたのですが、現場の温度感やスタッフの心への配慮が後回しになっていたんです。「会社のルールだから」「これくらいはやってもらわないと」という考え方が前に出すぎてしまい、本来大切にしたかった“寄り添い”や“尊重”が薄れていました。

その結果、「こういう会社に入りたかったわけじゃなかった」と言われ、20人ほどの社員が辞めてしまったんです。4店舗を閉めることにもなりました。

あの出来事をきっかけに、もう一度原点に戻ろうと思ったんです。経営理念や価値観を大切にしながら、人の心を中心に置いた経営をやり直そうと考えるようになりました。

――そのような言葉をかけられた時、どのような心境でしたか?

ものすごくショックでした。自分をかなり責めましたし、全部の店舗を閉めようかと思った時期もあります。

ただ、創業時から一緒にやってきたスタッフや、それでも信じてついてきてくださる方々が、「私はそう思わないですよ」「今があるのは一緒にやってきたからですよ」と声をかけてくださったんです。

その言葉に救われましたし、この人たちと一緒に幸せになっていきたいと、改めて思えるようになりました。

パートナーシップで広げる新たな事業のかたち

――今後、力を入れていきたい事業を教えてください。

美容室については、これ以上大きく広げようとは考えていません。人材確保が非常に難しい業界ですし、無理に店舗展開するつもりはないですね。

一方で、巻き爪事業は今後さらに広げていきたいと考えています。現在グループ全体では60店舗あり、3年ほどで187店舗を目指しています。

また、まつ毛事業では国産機材の開発も進めており、今後はパートナーシップという形で全国展開していきたいと思っています。

ドライヘッドスパについては、NPO法人を立ち上げました。脳性疲労や眼精疲労を抱える方が増えている中で、技術や知識を教材化し、施術できる人材を増やしていきたいと考えています。

プリン事業もテレビで取り上げていただく機会が増え、現在は製造が追いつかない状態です。美容師やまつ毛スタッフがプリン製造も兼務しており、こうしたマルチタスク型の働き方も今後増やしていきたいと思っています。

――フランチャイズではなく「パートナーシップ」にこだわる理由は何ですか?

私は、「一緒に豊かになっていく関係」を大切にしたいんです。

フランチャイズは、長く続けるほど「本部にお金を払い続ける関係」になりやすいと感じています。一方で、パートナーシップなら、お互いが継続的に成長しながらWin-Winの関係を築ける。

例えば機材のレンタルという形であれば、挑戦する側も始めやすいですし、「次はもう1店舗出したい」と思える状態を一緒につくれると思うんです。

人が育ち、経営が安定し、さらに挑戦する人が増えていく。そういう循環を生み出したいですね。

――現在感じている課題について教えてください。

課題は会社のブランディングです。

これまでは、各事業部のリーダーたちにSNSやメディアへ出てもらおうと動いていました。ただ、最終的に行動するかどうかは本人次第なので、そこに多くの時間と労力を使ってきました。

だからこそ今は、自分自身が前に出て、会社の価値観や想いを発信していかなければいけないと感じています。

また、美容師やドライヘッドスパなど施術系の人材確保も大きな課題です。コロナ以降、働き方や価値観も変化しているので、こちらからしっかり発信しなければ、想いは届かないと思っています。

“目の前の人を笑顔にする”という経営哲学

――会社を通して実現したいことを教えてください。

「社会を変えたい」という大きな話ではなく、まずは目の前の人を笑顔にしたいですね。お客様でも、仲間でも、患者様でも、隣にいる人の心の温度が上がることが大事だと思っています。

自分から動いて、人を笑顔にする。その積み重ねが結果的に社会を明るくしていくのではないでしょうか。

――最後に、これから起業を目指す方や経営者の方へメッセージをお願いします。

どの道を選んでも、楽なことはないと思います。

ただ、「やる気が出たら動く」ではなく、まず一歩踏み出すことが大事なんです。動いてみると景色が変わって、「意外と楽しそうかも」と思えて、次へつながっていく。

私は「ベビーハイハイステップの法則」という言葉を使いますが、まず動かなければ何も始まりません。失敗してもいいから、とにかく小さい一歩を踏み出してみる。その繰り返しが未来につながると思っていますし、「踏み出せた」という自分自身への肯定感が、次のやる気を引き出してくれるんです。

当社では、「隣にいる人、目の前の人の“心の温度が+1℃上がる”ような存在でありたい」という想いを大切にしています。まずは自分から一歩動いて、誰かの心を少しでも温かくできる人が増えていけば、世の中はもっと良くなっていくんじゃないかなと思っています。

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