“運転教育”の常識を変える――“人の教育”で交通事故防止に挑むドライブクリニックaの実践
株式会社ドライブクリニックa 代表取締役 平石章氏
交通事故を未然に防ぐためには、単に運転技術を教えるだけでは不十分――。そんな考えのもと、企業向け安全運転研修やペーパードライバー講習を展開しているのが株式会社ドライブクリニックaです。出張型の実車研修やドラレコ診断、コンサルティングなどを通じて、“実際の現場”に即した運転教育を提供しています。自動車学校グループでの経験を経て独立した平石章氏に、事業の特徴や運転教育への考え方、今後の展望について伺いました。
目次
“実車研修は実際の現場で”リアルな運転教育を
――現在の事業内容について教えてください。
当社は全国の企業様を中心に、出張やオンラインを組み合わせながら実車研修、ドラレコ診断、ペーパードライバー講習、コンサルティングなどを、企業の運転性質などに合わせて、ご提供しています。
以前は自動車学校グループに所属し、法人向けの運転研修を担当していました。ただ、自動車学校は“免許を取得させる教育機関”なので、どうしても操作技術や最低限の交通ルールを教えることが中心になります。一方で、実際に事故を起こしている方々は、必ずしも運転操作に問題があるわけではありません。むしろ運転経験が豊富な方の事故が多いんです。
そこで私は、「事故防止」という観点では、自動車学校の教育だけでは行き届かない部分があると感じるようになりました。
――御社の強みはどのような点にありますか。
教育の軸としては交通心理学の観点から「人の教育を行う」ことです。同じ車間距離不足でも人によってその原因は異なります。どんな指導も実践しなければ意味がないので、その人の性質を見極めた上で教育を行っています。
また、わかりやすい特徴の一つとしては、実車研修をお客様の実際の就業環境で行っていることです。一般的な自動車学校では、自動車学校へ行き、教習車を使い、自動車学校周辺で研修を行うケースがほとんどです。しかし実際には、企業様ごとに使用する車両も違えば、走行環境も異なります。
当社では、効果を高めるためお客様が普段使用している車両を使い、実際に走行する営業エリアや勤務先周辺で研修を行っています。ペーパードライバー講習でも、ご自宅周辺や利用したい道路、駐車場など、実際の生活環境に合わせて実施しています。
例えば営業車が軽自動車やコンパクトカーなのに、自動車学校ではセダンタイプの教習車を運転することになります。それでは実際の業務とのズレが生まれてしまいます。だからこそ、現場に合わせた“リアルな運転教育”が必要だと考えています。
“事故を起こさない教育”への違和感から独立へ
――この業界に入られたきっかけを教えてください。
もともと車業界を志望していたわけではありません。20代の頃に会社経営をしていた時期があり、その経験を次の仕事に活かしたいと考えていました。
その時、自動車学校グループの経営企画室の求人を見つけて応募したのがきっかけです。面接時に、「今後は自動車学校と、免許取得後の教育機関を分けていきたい」という話を伺い、法人向け運転研修を行う会社へ入社することになりました。
実際に働く中で、自動車学校の考え方や教育内容を身近で学べたことは非常に大きかったですね。その経験があったからこそ、「自動車学校では行き届かない部分」を明確に理解できました。
――独立された背景にはどのような思いがあったのでしょうか。
自動車学校グループに所属していた当時から、もっと企業の性質に沿って研修内容やフォローをやった方がいいと感じていました。その一つが先程申し上げた「実車研修はお客様の現場で、お客様の車を使って」というものです。ただ、自動車学校としてのルールがあり、それができない部分も多かったんです。
だからこそ、今の経験を最大限活かすには独立するのが一番だと思いました。独立したことで、自動車学校という枠に縛られず、本当に必要だと思う教育を実践できるようになりました。
“技術”より“人”を見る採用方針
――今後、人材採用についてはどのように考えていますか。
現在はまだ1人で運営していますが、今後は人材採用も必要になってくると思っています。
ただ、採用時に自動車学校での経験を強く重視するわけではありません。もちろん運転技術や教え方は後から身につけることができますが、それ以上に大切なのは“人を見る力”だと思っています。
私は交通心理学についても学んでいて、運転にはその人の性格や考え方がすごく表れると感じています。「ハンドルを握ると人が変わる」と昔から言われますが、本当にその通りなんです。
だからこそ、表面的な技術だけではなく、相手の内面をしっかり見て向き合える人と一緒に働きたいですね。
“交通事故ゼロ”を目指すための継続支援
――今後の目標や挑戦について教えてください。
まずは、「こういう会社があるんだ」と知っていただくことが最優先です。今は“運転教育=自動車学校”という認識が非常に強いので、選択肢の一つとして当社の存在を知っていただきたいと思っています。
その上で、私は「全国の交通事故ゼロ」を掲げるというより、自分が関わる企業様の交通事故をゼロにしたいと考えています。それは決して不可能なことではないと思っています。
また、事故が起きてから研修をする“事後対応”だけではなく、日常的に安全運転への意識を高める“風土づくり”が重要だと感じています。
そのため、研修を実施して終わりではなく、研修後も定期的にフォローを行っています。例えば短い電話で「最近どうですか」と声をかけるだけでも、意識は大きく変わります。放置しないことが、事故防止につながると考えています。
“お客様にとって本当に必要か”を最優先に
――経営において譲れない考えを教えてください。
「お金になるかどうか」を基準にしたくないという思いがあります。
もちろん会社経営には利益も必要ですが、お客様にとって本当に必要なのか、効果があるのかを最優先に考えたいんです。例えば研修時間を長くすれば売上にはなりますが、実際には短時間でも十分成果が出るケースがあります。
だからこそ、「意味がないことは意味がない」と正直に伝える姿勢は今後も変えたくありません。お客様にとって一番良い選択を一緒に考えながら、誠実に向き合っていきたいと思っています。
休日はサッカーでリフレッシュ
――休日のリフレッシュ方法を教えてください。
小さい頃からずっとサッカーを続けていて、今も社会人サッカーをしています。日曜日に試合が入ることが多く、多い時には月に2〜3回ほど試合があります。
体を動かすことで頭もすっきりしますし、良いリフレッシュになっています。長く続けている趣味ですね。