合同会社 Danshiko Lab CEO 久保 氏
少子高齢化や内需の限界が叫ばれる中、海外展開は日本にとって避けられない選択肢の一つではあるが、まだ多くの人にとってやや非現実的なものであるようにも思えます。
言語や文化、環境の違いは、今なお多くの人にとって大きな壁となっています。
「日本人が、海外でもっと自由に生きられる選択肢のある世界感をつくりたい」──そう語るのが、合同会社 Danshiko Labの代表・久保氏。
今回は、事業の全貌と組織の哲学、そしてその先に描く未来の姿について伺いました。
目次
グローバルに挑むための「経道」を支える3つの軸
――現在の事業内容と、重視している理念を教えてください。
弊社では現在、コンサルティング、自社事業の開発、事業投資という3本柱で事業を展開しています。データ分析やマーケティング領域の支援を行う一方で、自社事業として SaaS の開発のみならず飲食店の開業準備、EU圏向けのプロダクト輸出、そして国内の素晴らしいモノ・コトを海外に輸出するための事業投資など、活動は多岐に渡っています。
特に、日本のものづくりの価値を、適切な文脈とブランディングで海外市場に届ける支援には力を入れています。単なる輸出ではなく、現地ニーズとの接点を創出するために、英国におけるネットワークとオランダ(アムステルダム)に拠点を構えていることを強みとして企業や流通との連携も視野に入れた取り組みを進めています。
我々が先駆者として雇用を生み出し、欧州で暮らしたい日本の挑戦者のために「海外で暮らす」という選択肢を、もっと現実的なものにしたいと考えています。
また、企業理念として大切にしているのは、「海外で住む・働く日本人の持続可能なコミュニティを創る」というビジョンです。現地法人を構え、私たち自身がその実例となることで、まだまだ非現実的な部分が大きい「海外で生きる」ことのハードルを下げたいと思っています。
起業のきっかけは「自分の手で道を拓く」こと
――経営者になられたきっかけや思いをお聞かせください。
私自身、日本で企業勤めをしながら海外で事業を展開する難しさを痛感しています。また、自分が本当にやりたいことや社会及び環境を実現するには、組織に属するだけでは限界がある。
特に、国をまたいだプロジェクトでは意思決定のスピードや柔軟性が求められますが、大きな組織の中ではそれが難しいと感じていました。
そこで、思いを共有できる仲間と共に法人を設立し、男子校(のようなも含)出身の仲間たちと立ち上げました。それぞれが専門性を持ち寄り、全員が「共同代表」という形で運営しているのが特徴です。
専門領域に責任と裁量を持ち、自律的に事業を推進できる組織を目指しています。肩書き以上に「信頼」と「共通の目的意識」が組織の軸となっています。
組織は「仲間」から生まれる、信頼と分担の文化
――社員との関係性や、組織運営で意識していることはありますか?
当社にはいわゆる従業員はおらず、4人の共同代表で事業を進めています。それぞれの領域で意思決定権を持ち、自分の得意分野で事業をリードしています。プロジェクト単位で必要なスキルを持つ外部メンバーと連携することも多く、フラットで柔軟な組織形態です。
業務上のやりとりでは、オランダと日本の時差を踏まえて、午後の時間帯を意図的に重ねるよう工夫しています。Slack や Google Workspaceなどのツールを活用し、対面と遜色ない密なコミュニケーションを図っています。
重視しているのは「自律」と「全員同意」です。重要な意思決定は全員で合意を取りながら、日々の実務は各人がリーダーシップを発揮する。仲の良さと信頼関係に支えられた、しなやかな組織運営が特徴です。組織というより、志を共有する「チーム」に近い感覚で運営しています。
多拠点、多角化──現場で「選択肢」を形にしていく
――今後の事業展開や、挑戦していきたいことを教えてください。
今後は、日本から EU 圏へのサービス展開の強化、SaaS などの IT サービスの国際展開、日本国内では中小企業様を対象とした事業創出のための伴走支援サービス提供を進めていく予定です。さらに、オランダでの飲食店立ち上げも検討しており、日常の中で海外生活を支えるような拠点を整えていきたいと考えています。
また、グローバル人材の支援や、海外キャリアを目指す個人への具体的なサポートにも注力していきたいと思っています。海外進出が「特別なこと」でなくなる社会へ、私たちが先導役になれればと思います。
個人としても、事業としても、進化を止めない
――経営以外で大切にしていることやリフレッシュ方法を教えてください。
常に心がけているのは、「現状に満足したら終わり」という信条です。これは学生時代にお世話になった先輩からの言葉で、今でも私の軸になっています。常に成長と変化を受け入れる姿勢を大切にしています。
プライベートでは映画鑑賞が趣味で、感動や幸福を生み出す手段として、エンタメが持つ力を信じていますし、いつかまたその分野で何らかのかたちで貢献できればと考えています。