鉄道の未来を“拡張思考力”で支える――TRAILBLAZERが挑む次世代インフラと顧客体験の創造
株式会社TRAILBLAZER 代表取締役 宮崎 祐丞氏
株式会社TRAILBLAZERは、JR西日本グループのデジタル戦略を推進する企業です。顧客体験の向上から鉄道オペレーションの高度化まで幅広い領域を担っています。本記事では、代表の宮崎祐丞氏に、事業への想いや組織づくり、今後の展望などについて伺いました。
JR西日本グループの“拡張思考力”として価値を生み出す
――現在の事業内容について教えてください。
当社は大きく2つの領域を担っています。1つは、JR西日本グループにおけるBtoCサービスの企画・開発支援です。顧客戦略の立案から施策運用、アプリなどのプロダクト開発まで伴走しています。
その代表例が「WESTERポイント」です。鉄道利用だけでなく、ショッピングセンターやホテル、旅行、決済など、JR西日本グループ全体のサービスを横断し、お客様との接点を広げています。
もう1つが、鉄道オペレーション領域です。AIやIoTを活用し、人口減少社会でも鉄道インフラを持続可能にするため、車両や線路設備、電気設備の保守・メンテナンスなどの高度化を目指しています。
――JR西日本グループとは、どのような関係ですか。
当社は、一般的な外部ベンダーではなく、JR西日本グループと一体となって事業を推進する“ワンチーム型”の組織です。企画立案から実行・運用まで、所属会社の垣根を越えて同じ目線で取り組んでいます。
私は社内で、当社のことを「JR西日本グループの“拡張思考力”」だと表現しています。鉄道事業が持つ高い専門性に対し、デジタル領域ならではの発想力やスピード感を掛け合わせ、事業変革を支える役割を担っている点が特徴です。
偶然のキャリアが導いた、鉄道×デジタルの挑戦
――どのような経緯で現在の道に進まれたのでしょうか。
もともとは、鉄道土木の技術者として線路メンテナンス業務に15年ほど携わっていました。ドクターイエローで取得したデータをもとに、補修計画を立てるような現場です。
その後、AIやIoT、ビッグデータ活用の流れを受け、鉄道メンテナンスの省力化や高度化を推進する部署へ異動しました。当初はジョブローテーションの一環でしたが、取り組むなかで、データ活用によって鉄道運営そのものを変えられる可能性を感じるようになりました。
さらに、改札や決済データなどを扱うなかで、人の移動や消費行動まで分析対象が広がり、インフラ視点だけでなく、顧客体験やマーケティング領域にも関心を持つようになったことが、現在につながっています。
――そこから御社の設立へとつながっていったのですね。
当初はJR西日本の社内で、データサイエンティストなど専門人材を集めながらプロジェクトを推進していました。ただ、デジタル施策やデータ活用の重要性が高まるにつれ、既存組織だけでは対応しきれない課題が見えてきたんです。
一方で、鉄道事業は安全運行を支える基幹業務でもあるため、社内人材だけで急拡大するにも限界がありました。そこで、外部の専門人材も柔軟に取り込みながら、新しい価値創出に特化した組織として当社が設立されました。
私は設立当初から事業側の立場で関わっていましたが、「こういう組織が必要だ」と提案した以上、自ら経営を担う責任があると考え、現在は代表として携わっています。
フルリモートだからこそ集まる人材がある
――リモート率100%という働き方も印象的でした。
当社は設立当初からフルリモート前提でした。デジタル領域の人材を集めるには、その方が合理的だったんです。
現在、社員は140名ほどで、半数以上が首都圏在住です。北は札幌、南は石垣島までメンバーがいます。もし出社前提だったら、これだけの人材は集まっていなかったでしょう。
場所に縛られず、能力のある人が活躍できる環境を整えることは、当社にとって重要な採用戦略でもあります。
――リモート環境において、コミュニケーション面で工夫されていることはありますか。
フルリモート環境だからこそ、意識的にコミュニケーションの接点を増やしています。部単位での定例ミーティングや月1回の全社会を設け、情報共有だけでなく、組織としての温度感も揃える方針です。
Slack上には「times」という個人チャンネル文化があり、仕事以外の話題も自由に発信してもらっています。趣味や日常の投稿をきっかけに会話が広がる場面も多く、オンライン中心でも自然と関係性が築かれていると感じています。
一方で、リアルで顔を合わせる機会も重視しており、年1回の創立記念イベントでは全国の社員が集まります。
――採用で重視されているポイントを教えてください。
スキルや経験も重要ですが、それ以上にカルチャーフィットを重視しています。当社はまだ成長過程にある組織ですので、完成された環境よりも、変化の多い状況を楽しめる方のほうがフィットしやすいでしょう。
面接では、「どのような修羅場を経験してきたか」をよく伺います。結果そのものより、難しい局面で何を考え、どう行動したのかを重視しているためです。
当社が取り組む領域には、まだ正解のないテーマも多くあります。だからこそ、不確実性を前向きに捉え、新しい挑戦を楽しめる方とご一緒できればと思っています。
人口減少社会に向けたソリューションを社会へ広げたい
――今後、特に力を入れていきたいことはありますか。
まず注力していきたいのは、これまで本格展開できていなかった鉄道メンテナンスやオペレーション領域です。車両・線路・設備保守といった鉄道の基幹領域に対し、AIやIoT、データ活用を組み合わせながら、生産性向上と持続可能性の両立を実現していきたいと考えています。人口減少による労働力不足は避けられないテーマだからこそ、鉄道業界全体としても変革が求められている領域です。
加えて、当社で蓄積してきた知見やソリューションをJR西日本グループ内だけに留めず、より広く社会へ還元していきたいとも考えています。プロダクトとして展開する形もあれば、JRグループ各社やパートナー企業と連携しながら価値提供していく可能性もあるでしょう。
重要なのは、単なる開発会社や支援会社ではなく、「TRAILBLAZERがいることで事業変革が前進する」という状態をつくることです。鉄道という社会インフラを起点に、人口減少社会に対する新しいスタンダードを生み出していきたいです。
――最後に、読者へメッセージをお願いします。
鉄道会社というと、堅いイメージを持たれるかもしれません。ただ、大きな社会インフラを支えているからこそ、新しい挑戦ができる余地も大きいと感じています。
当社では、既存のやり方にとらわれず、「GO WILD WEST」の精神で挑戦を続けています。変化を楽しみながら、新しい価値を一緒につくっていける仲間と、これからも出会いたいです。