グローバルと福祉の壁を越え、日本企業の「次なる10年」を創る
ハイブリッド・パートナーズ株式会社 代表取締役 畠中一郎氏
日本経済の「失われた30年」という言葉が定着して久しい現代。少子高齢化が進み、国内マーケットが縮小の一途を辿る中、多くの中堅・中小企業が「これまで通りのやり方で将来も安泰なのか」という岐路に立たされています。そうした中、企業の本当の意味での強みと弱みを炙り出し、世界へ向けた新たな一歩を伴走支援しているのが、ハイブリッド・パートナーズ株式会社の代表取締役、畠中一郎氏です。
世界の最前線を見てきたからこそ分かる日本企業の現在地と、これから取り組むべき次世代のプラットフォーム戦略について、畠中氏に深くお話を伺いました。
目次
国内マーケットに留まるリスクを打破。海外市場を「試金石」として企業の真の強みを炙り出す
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
私たちは長年、米国系の大大手コンサルティングファームで経営コンサルティングに携わってきた経験をベースに、約17、18年前に独立して以来、日本企業を海外に向けて発信・進出させるための全般的なフォローを行っています。
今の日本国内の状況を見ると、事業がそこそこ上手くいっている企業ほど、今までのやり方を続けていけば将来も安泰だと考えがちです。しかし、日本経済の地盤沈下が進む中で、「日本だけで上手くいっている状態」は本当に本物なのでしょうか。私たちは、海外でも通用して初めて、そのビジネスモデルは本物であると考えています。
――業界内での強みはどのような点にありますか。
他社との最大の差別化ポイントは、口先だけの提案に終わらず、徹底的に「実装」の部分をお手伝いする点です。例えば、一般的なコンサルティングファームは、M&Aにおいて株式譲渡契約を結ぶところまではやりますが、その後の実際の会社統合には踏み込みたがりません。割に合わないからです。私たちはそこに腕まくりをして現場に入り、日々のオペレーションを通じて泥臭く統合をやり遂げます。
海外市場への進出を、その企業の本当の強みや弱みを明らかにするための「試金石」として捉えています。全方位に網羅的な対策をするのではなく、海外進出を通じて露わになった弱点をピンポイントで強化し、底上げする。それが私たちのコンサルティングの真骨頂です。
「なんちゃって海外進出」の罠を排し、時代とともに移ろう世界のニーズを捉える
――海外進出を成功させる上で、日本の経営者が陥りがちな誤解などはありますか?
私たちは、最もハードルが高い一方で、非常にやりがいがある「欧米市場」への進出支援を軸にしています。しかし、日本企業の多くは、なぜか東南アジアを「自分たちの裏庭」のように無防備に捉えているパターンが非常に多く「お試し」のような感覚で進出してしまう。私はこれを「なんちゃって海外進出」と呼んでいます。
しかし、欧米のグローバル企業から見れば、東南アジアは世界で最もホットでテンションの高い、激しい競争が繰り広げられているマーケットです。そんな戦場へ、日本でやってるのと同じ感覚で、おっとり刀で進出していけば、当然のごとく手痛い火傷を負って撤退することになります。
――業種や業界という枠組みにおいても、世界から求められる「日本の強み」に変化は起きているのでしょうか。
今、世界が圧倒的に注目しているのは、日本の「原作力」です。技術的なレンダリングやアニメーション制作のレベルが世界中で均一化しても、日本人が生み出す独特な原作のクオリティだけは、海外の誰も真似ができないのです。
もう単に「作品というモノを海外に売っていれば、海外展開が上手くいっている」という時代は、ずいぶん昔に終わっています。こうした世界の激しい変化に常に目を向け、自社の強みをどうアプローチしていくかを、既存の枠組みにとらわれずに見極める必要があります。
直面する「介護離職」は企業の重大な経営問題
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
日本の「在宅医療・介護問題」、とりわけ働く世代を直撃している「ビジネスケアラー(働きながら介護を担う人々)」へのアプローチです。
日本の高齢化は完全に本格化しました。医療技術の発達で人間は長生きできるようになりましたが、それは同時に、街中に認知症を患った老人が溢れていく未来と直結しています。
若い人たちは「俺には関係ない」と思っているかもしれませんが、これは確実に足元に忍び寄っている危機です。現在、実家の親の介護問題が原因で最終的に仕事を辞めざるを得ない「介護離職」に追い込まれているビジネスパーソンが、年間なんと10万人も存在します。これは、極めて深刻な経営問題です。
――この巨大な社会問題に対して、具体的にどのような手法で新しい事業を立ち上げようとされているのでしょうか。
この問題は、従来の「国や自治体が設定した介護保険制度の枠組み(保険内)」の中でいくら議論しても、明快な解決策は絶対に見出せません。だからこそ私たちは、これまでのビジネス経験をベースに、既存のプレイヤーが手を出せない保険外の領域で考え、現在その準備を進めています。
この領域は、まだ誰も真剣に取り組んでおらず、前例がありません。恐ろしいほどDX化が遅れている業界なので私たちが持つノウハウやDXの視点を一つ持ち込むだけでも、劇的な変化と、働く人々を救う画期的なソリューションを実現できると確信しています。
15年間の海外生活で痛感した、真の交渉力を育てる教育
――「パートナー制」とはどのようなものでしょうか?
私どもの会社には、いわゆるジュニアスタッフ(部下やアシスタント)はいません。私を含めた「3人のパートナー」のみで構成されています。
それぞれが完全に独立したオーナーシップ(経営者意識)を持ち、プロフェッショナルとして対等な立場でプロジェクトごとに強固なパートナーシップを組むという組織形態です。
――日本の人材育成に対して感じている危機感や、現在取り組まれている活動はありますか?
私はずっと海外でコンサルティングビジネスの最前線に身を置いていました。日本へ帰国する際、「相当グローバル化が進んでいるだろう」と非常に大きな期待を抱いていたのですが、現実に戻ってみると昔よりも状況が悪化しているのではないかという強い危機感を抱きました。
多くの経営陣から話を聞くと、皆さん一様に「英語は話せても、世界で戦えるグローバル人材は全くいない」とおっしゃいます。日本に溢れているのは単なる「英語屋さん」に過ぎません。
このギャップを埋めるため、私は15年ほど前から、クライアント企業に対して私独自のカリキュラムに従った「グローバル人材育成研修」を導入してきました。中堅・中小企業にこそ、こうした特殊技能を持つ人材が普通に存在する世界を作りたい。これもまた、私がコンサルタントとして社会に還元していきたい強い想いです。
プライベートは「チェロの演奏」と、AIを駆使した「アプリ開発」の2つの趣味で思考を研ぎ澄ます
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
私の長年の趣味は音楽で、休日には「チェロ」を弾いています。
また、最近新しく加わった趣味として、仲間のAIのエンジニアとともに「新しいアプリケーションを企画・構築すること」があります。