技能実習生と企業をつなぐ誠実な支援――信頼を土台に歩む組合運営とは
関東経営協同組合 代表理事 野中 晃治氏
関東経営共同組合は、技能実習制度を活用しながら、中小企業の人材不足解消を支援している組合です。外国人技能実習生の受け入れにおいて、法令に基づいた管理・支援を行い、企業と実習生双方に寄り添った運営を続けています。本記事では、野中氏に現在の事業内容や組織運営への考え方、今後の展望について伺いました。
目次
技能実習制度を支える管理団体として
――現在の事業内容について教えてください。
当組合は、中小企業事業協同組合として、組合員企業の福利厚生を中心に事業を行っています。現在は特に人手不足への対応として、技能実習制度を利用した外国人技能実習生の受け入れ支援が事業の中心になっています。
管理団体として、受け入れ企業に対して技能実習生の受け入れ支援や管理業務を行っています。法律に基づき、企業と実習生双方を適切に支援していくことが役割です。
――他社にはない強みについてお聞かせください。
この業界は、他社との違いを打ち出すことが難しい部分があります。というのも、管理団体が行うべき業務の多くは法律で定められており、「やらなければならないこと」を適切に遂行することが基本だからです。
その中で強みを挙げるとすれば、関係機関との連携力です。技能実習制度に詳しくない受け入れ企業も多く、外国人対応を含めてトラブルが発生することもあります。そうした際に、入管OBなど、関係各所とのつながりを活かしながら、法的な知識や対応力をもってサポートできる点は、他の管理団体より強みがあると思っています。
「日本に来て良かった」と思ってもらうために
――組合の理念やビジョンについて教えてください。
技能実習生は「人」であって、決してモノではありません。そこが最も重要な部分だと思っています。
受け入れ企業、実習生、そして私たち管理団体、その三者すべてが「良かった」と思える形が理想です。企業は「受け入れて良かった」、実習生は「日本に来て良かった」と思えること。そして、実習生が日本で働き、家族のためにお金を貯め、帰国後に自国へ貢献していけるようになることが大切だと考えています。
特に、「日本という国に来て本当に良かった」と言って帰ってもらえることが一番です。それが結果として企業にも、私たち組合にも良い形で返ってくるのだと思います。
制度の立ち上げに関わった経験が現在につながる
――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
もともとは、中小企業向けの福利厚生や補償事業を行う団体に勤めていました。当時は、中小企業の人手不足解消と、東南アジアの若者たちに日本の技術を学ぶ機会を提供することを目的に、研修制度が立ち上げられていました。それが現在の技能実習制度の前身です。
その後、技能実習制度へと変わる中で、制度立ち上げに関わっていた方から「一緒にやらないか」と声を掛けていただきました。私は行政書士資格を取得していたこともあり、その流れでこの業界に入ることになりました。
最初から自分で組織を立ち上げたというより、所属していた組織の流れの中で、最終的に自分が理事長として運営を担う立場になったという形です。
――経営判断の軸になっている考え方はありますか。
大きな組織ではないからこそ、一人ひとりが「自分たちで組織を作っていく」という意識を持つことが重要だと思っています。
ただ給料をもらう場所ではなく、自分たち自身が組織の一員として、より良い方向へ作り上げていく。その自覚を持ってもらうことが大切です。
相手を理解しようとする姿勢を大切に
――組織運営やコミュニケーションで大事にしていることは何でしょうか。
トップという立場は非常に孤独です。その自覚を持っていないと、本当の意味で職員に向き合うことはできないと思っています。
時には厳しいことを言わなければならない場面もありますが、感情に任せて怒るのではなく、どう指導するべきかを常に考えるようにしています。また、問題が起きた際には、結果だけではなく、そこに至る経過を重視しています。
コミュニケーションでは、できるだけ時間を取り、ゆっくり話すことを意識しています。どうすれば組織が良くなり、結果として職員の待遇向上につながるのか、日頃から共有しています。
――どのような人と一緒に働きたいですか。
自分の頭で考えて行動できる人です。小さな組織だからこそ、「組織を良くしていく」という意識を持ち、今何が必要なのかを考えて動ける人と一緒に働きたいですね。
そうした意識を持っている職員には、普段から積極的にいろいろな話をするようにしています。
法令順守を徹底し、信頼を積み重ねる
――今後の展望について教えてください。
制度改正が進み、技能実習制度も大きく変わっていきます。その中で何より重要なのは、コンプライアンスを守ることです。この業界は、法令違反があれば一度で退場を命じられるような厳しい世界でもあります。
そのため、新しいことに手を広げるよりも、まずは現在の技能実習、今後の「育成就労」や特定技能制度について、法律に基づいた適切な管理と支援を徹底していくことが重要だと考えています。
土台をしっかり作ることができれば、自然と信頼も積み上がっていくはずです。
また、組合として職員が将来設計を描けるようにするためには、取り扱う人数を増やしていく必要もあります。営業面にも力を入れながら、組織として安定した基盤を築いていきたいと考えています。
誠実であることを忘れない
――仕事をする上で譲れない価値観を教えてください。
一番は「誠実であること」です。
実習生への指導では、日本語の壁などもあり、つい相手を子どものように扱ってしまう場面が出ることがあります。しかし、実習生たちはそれぞれ大きな覚悟を持って日本へ来ています。
例えばミャンマーのように、厳しい社会情勢の中から来ている人たちもいます。日本に憧れを持ち、自分や家族の生活を良くしたいという思いで、一人で異国に来ている。その背景を忘れてはいけません。
もちろん指導や注意は必要ですが、相手への敬意を持つことが大切です。受け入れ企業に対しても同じで、トラブルが起きた時には双方が困っています。その時に、法律論だけでなく、「相手の立場を理解しようとする姿勢」を持つことが必要だと思っています。
釣りと音楽で地域とのつながりを楽しむ
――休日のリフレッシュ方法を教えてください。
一番の趣味は海釣りです。あとはバンド活動もしています。ライブをしたり、地域の小学生を集めてバンド教室を開いたりもしています。
子どもたちに楽器を教え、地域の発表会で保護者の前で演奏する機会を作ることもあります。私はギターを担当していて、選曲をしたり、保護者の方とコミュニケーションを取ったりしています。
ただ、釣りも音楽も意外と頭を使うので、完全にリフレッシュになっているかは分かりません(笑)。それでも、仕事以外でもやりがいを感じながら取り組める時間になっています。