150年以上受け継がれる信頼を未来へ――株式会社桶庄が大切にする「明日の咲顔」
株式会社桶庄 代表取締役 佐藤寛之氏
住まいに関する困りごとからリフォーム・リノベーションまで、幅広く住環境の改善を支えてきた株式会社桶庄。創業から150年以上にわたり地域に根差しながら、多くの顧客との信頼関係を築いてきました。現在はリフォーム事業に加え、ガス機器関連事業も展開しています。本記事では、長く選ばれ続ける理由や事業への想い、組織づくり、そして未来への考え方について佐藤寛之氏に伺いました。
創業から一貫して住環境の向上を支える
――現在の事業内容について教えてください。
当社は創業以来、一貫して住まいの環境向上や改善のお手伝いを続けてきました。もともとは桶を扱う仕事から始まっています。創業は150年以上前にさかのぼり、当時はプラスチック製品がない時代でしたから、生活に欠かせない道具として桶が使われていました。
そこから時代の変化に合わせて事業内容も変化してきました。水回りを扱う中でガス機器を取り扱うようになり、お風呂やキッチンのリフォームへと領域を広げ、現在では住宅の内装・外装まで総合的に手掛けています。
現在はリフォーム・リノベーション事業と東邦ガスくらしショップ事業を中心に展開しています。
――貴社の強みはどこにあるのでしょうか。
一番の特徴は、リピートのお客様が多いことです。売上の7割以上が、過去にご利用いただいたお客様からの再依頼です。もちろん理由は一つではありませんが、長い歴史があることは大きな強みだと感じています。歴史は簡単に真似できません。
住まいの工事は自宅の中に人を招き入れる仕事です。お客様にとって大きな決断です。だからこそ、「安心して任せられる」「信頼できる」と思っていただけることが何より大切です。
実際にはトイレの交換や小さな修繕などのご依頼も多くあります。当社はそうした小さな仕事こそ大切にしています。その場の利益だけを見るのではなく、ご縁をいただく入り口だと考えているからです。
小さな工事を通じて信頼関係が生まれ、「この会社なら任せられる」と思っていただくことで、その先のリフォームや住まいの相談にもつながっていきます。歴史の積み重ねと、お客様との信頼関係がリピートにつながっているのだと思います。
家業への葛藤と向き合った20代
――経営者になられた経緯について教えてください。
私は代々続く家系の長男として生まれました。ある意味では、生まれる前から会社を継ぐことが決まっていたような環境だったと思います。
ただ、子どもの頃から家業を継ぎたいと思っていたわけではありません。天文学者になりたいと思ったこともありましたし、将来についてはさまざまな夢を描いていました。
実際に私は家を飛び出し、大学も中退しています。当時は「自分は何をしたいのか」を真剣に考えていました。親に言われるまま家業へ入ることが、本当に自分の人生なのか分からなかったんです。
会社を継ぐとなれば、周囲からは「社長の息子」と見られます。普通の社員とは違う目で見られるでしょうし、どれだけ仕事ができるのか試されることにもなります。それが私にとっては大きなコンプレックスでした。
だからこそ、何もない状態で会社へ戻ることには抵抗がありました。社長の息子だからと言われるのではなく、自分自身の力で認められたいという気持ちが強かったんです。難しい資格の取得を考えたり、本を読んだりしながら、自分なりに学ぶ時間を重ねていました。
そうした年月を経て、30歳頃に家業へ入ることになります。振り返れば遠回りだったかもしれません。しかし、自分で悩み、自分で答えを探した時間があったからこそ、今の考え方や価値観が形づくられたのだと思います。
現在は経営者という立場にいますが、自分の子どもに同じ道を一方的に押し付けたいとは考えていません。経営者という仕事は決して良いことばかりではないからです。本人が納得したうえで、自分の意思で人生を選ぶことが何より大切ではないでしょうか。
理念と現実を一致させる組織づくり
――組織運営で大切にしていることを教えてください。
私は会社の質を高めたいと考えています。
ただし、それは売上や利益だけを指しているわけではありません。私にとって質の高い会社とは、企業理念と実際の会社の姿が一致している会社です。
「こういう会社でありたい」と掲げている姿と現実が近ければ近いほど、質の高い会社だと思っています。他社がどうしているかよりも、自分たちがどうありたいのかを大切にしています。
現在の課題として強く感じているのは採用と人財育成です。AIや技術が発達すると、多くの企業が似たサービスを提供できる時代になるかもしれません。そのとき差別化できるのは、結局そこで働く人だと思うんです。
私は社長であると同時に採用にも深く関わっており、会社説明会には自ら登壇しています。この10年ほどで入社した社員の採用に、ほぼ直接携わってきました。
人数をそろえるために採用基準を下げる考えはありません。優秀な人であれば何人でも採用したいですが、基準に満たないのであれば無理に人数を増やす必要はない。その考え方は今も変わっていません。
次世代へより良い状態で引き継ぐことが使命
――今後の展望について教えてください。
私は新規事業を次々と立ち上げたり、会社を急拡大させたりすることが自分の役割だとは考えていません。むしろ、私の役割は今ある会社をより質の高い状態にして次世代へ引き継ぐことだと思っています。会社が本当に大きく成長するのは、私が引退した後かもしれません。だからこそ今は、既存事業の質を高めることに集中したいんです。
売上の数字そのものに強いこだわりはありません。それよりも理念と現実が一致した組織をつくることの方が重要です。その結果として財務的な成果が生まれれば、それが理想だと思っています。
理念と実際の会社の姿が一致し、財務的にも健全な状態を整える。その土台をつくることが今の私の役割です。その上で、次の世代がさらに良い会社をつくっていけばいいのではないかと思っています。
「明日の咲顔」のために働く
――休日はどのように過ごされていますか。
休日は車で遠出をしたり、京都へ出かけたりしています。長く続く老舗を訪ねながら、「なぜ愛され続けているのか」を考える時間が好きなんです。
一つのことを磨き続ける姿勢には強く惹かれます。老舗を訪れるたびに、長く続く会社にはそれぞれ理由があるのだと感じますし、自社の経営を見つめ直すきっかけにもなっています。
――最後に、大切にしている価値観を教えてください。
私が何より大切にしているのは企業理念です。
当社の理念は「すべては、私たちの明日の咲顔のために!」です。ここでいう「明日」は、単に翌日のことではなく、将来に向けた咲顔を意味しています。
リフォームしたお客様が何年後かに「やって良かった」と思ってくださることも、社員が定年の日に「この会社で働けて良かった」と振り返れることも、私にとっては明日の咲顔です。
私は社会を大きく変えたいわけではありません。ただ、お客様や社員、そのご家族の未来につながる仕事を地道に積み重ねていきたいと思っています。
これからも目の前の一つひとつのご縁を大切にしながら、住まいを通じて「明日の咲顔」を支え続けていきたいですね。